82. リードアロー王国制圧

 王様を生け捕りにしたことで武装解除したリードアロー国軍。

 あたしたちだけじゃ見張りもなにも出来ないから、そのまんまなんだけどね。

 それよりも面倒だったのは王城に乗り込んでからのこと。

 貴族や王族たちが往生際の悪いことに襲いかかってきた。

 もっとも、自分たちの兵士に捕らえられているんだから元も子もない。

 これで、リードアローの王都は完全にあたしたちの支配下になったわけ。

 そのあと、各方面の軍隊に武装解除させるように指示を送らせ、マナストリア国軍が正式にリードアローを制圧したのはあたしたちがリードアロー国王を生け捕ってから1カ月以上経ったあとだった。

 結構長かったね。

 いまは王配殿下がマナストリア軍の将校たちから報告を受けているところだ。


「ご苦労様、諸君。何か変わったことはあるかい?」


「はっ! 特になにもございません、王配殿下!」


「それはよかった。それじゃあ私とアウラ名誉伯爵は、リードアロー国王を初め主立った戦争賛成派を連れて華都に向かわせてもらう。リードアローの警備は任せたよ」


「お任せください」


 こうしてあたしと王配殿下はリードアローの監視をマナストリア国軍に任せ、一路マナストリアの首都、華都へと帰還した。

 そこではあたしたちの勝利の報せを聞いていた市民たちが待ち構えていたよ。

 悪い気はしないんだけど、いまは罪人の護送中なんだよね。

 またあとにしてもらいたいな。

 集まっていた群衆の上を飛び越え、王城の城門前広場に着陸すると、女王陛下とエリスがそれぞれのマナトレーシングフレームに乗って待ち構えていた。

 王配殿下が事前に連絡してくれていたのかな?

 話が早くて助かるんだけど。


『よくぞ戻ってきた、ふたりとも。此度の戦乱を招き起こした首謀者どもはその檻の中にいる者どもか?』


 女王陛下がマナトレーシングフレームの外部スピーカーを使って問いかけてくる。

 あくまでも威圧する方針らしいね。

 それじゃあ、あたしもそれに乗ってあげないと。


「はい、女王陛下。この檻に閉じ込められている者どもがリードアロー国王を初めとする戦争首謀者たちにございます」


『そうか。護送ご苦労だった。その者たちを地上へと降ろしてもらいたい。兵士たちに頼み牢屋へと運ばせる』


「かしこまりました。この牢には出入り口がございませんので、開け閉めには鍛冶魔法で牢を変形させる必要があります。兵が到着し次第、あたしが檻を開きましょう」


『わかった。よろしく頼む』


 女王陛下の言葉が終わると、控えていた兵士たちが大勢集まってきて牢を取り囲む。

 これ、間違って全方位を開けてしまっても逃げられないやつだね。

 鍛冶魔法で作った鎖で両脚をつなぎ合わせているし、鉄球も両脚につないであるから逃げられはしないと思うけどさ。


 ともかく、護送の準備が整ったらしいので、檻の一角を開放する。

 そこから兵士たちが檻の中へと入り込み、リードアロー国王や大臣などの貴族たちを次々連れ出していった。

 そして、広場にあたしと王配殿下、女王陛下、エリスの4人とそれぞれのマナトレーシングフレームしかいなくなった頃、女王陛下から通信が入った。


「お疲れ様、アウラ。聞けばリードアロー国王のマナトレーシングフレームを一騎討ちで倒したそうじゃない。それも完膚なきまでに」


「いやあ、あれは相手が弱すぎたせいで」


「そうなの? でも、マナトレーシングフレームだったんでしょう?」


「それが、ヘファイストスに調べてもらった結果、マナトレーシングフレームじゃなかったんですよ」


「え?」


「マナトレーシングフレームに偽装した重量型エンシェントフレームだったらしいです。おかげで動きが鈍すぎ、軽く倒せてしまいました」


「……リードアロー国王って目利きも出来ないのねぇ」


 なんともしまらない最終決戦だったのだが、これでマナストリアとリードアローの戦争は終結に向かうだろう。

 リードアローを攻めているほかの国々もいいところで戦争をやめてくれるだろうし、平和な世の中になってもらいたいね。

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