81. 直接対決

 リードアロー側で近づいてくるのは黒いマナトレーシングフレーム1機のみ。

 それに対応してマナストリア側から出ていくのもあたしとヘファイストスだけだ。

 さてと、いっちょ暴れますか!


「ヘファイストス、準備はいい?」


『無論だ。いつでもいける』


 あたしとヘファイストス、それからリードアローの王様の乗る黒いマナトレーシングフレームは戦場のど真ん中よりリードアロー王国寄りの位置で立ち止まった。

 本当なら中央で立ち止まるんだろうけど、あっちの機体がかなり手前で立ち止まってしまって出てこなかったんだよね。

 間合いの問題もあるし、あたしたちが詰めたんだよ。

 まったく、かっこ悪い。


『出てきたな、アウラ! 今日こそはあの日の恨み、晴らしてくれる!』


「あの日の恨みってねぇ。どちらかと言えば恨んでいるのはあたしの方ですけど。いきなり軍を差し向けられたりエンシェントフレームで攻撃されたり。あの時って街にも被害が出ていたはずだけど大丈夫だったの?」


『うるさい! 街を破壊して逃げたお前に言われる筋合いなどないわ!』


 街を破壊して逃げたって。

 街を破壊したのはリードアロー王国のエンシェントフレームでしょうが。

 あたしは何もせず、防御姿勢を取っていただけで、あっちが勝手に攻撃を外して街に被害を拡散させたはず。

 なのに、この王様の頭の中ではあたしが悪者になってるわけ?

 それとも、誰かが都合のいいように報告内容をすり替えた?

 この際どうでもいいけど、この王様って本当に意味がわからない。


『行くぞアウラ! まずは余からだ! 余のマナトレーシングフレーム、パトロクロスの恐ろしさ、存分に味わえ!』


 どうやら先にあっちから攻めて来るみたい。

 あっちの黒いマナトレーシングフレーム、パトロクロスはヘファイストスよりもさらに巨大な体躯をしている。

 だけど、いまいち動きが鈍重で、いまだって移動速度が普通のエンシェントフレームよりも遅いんだよね。

 これがマナトレーシングフレームなのかしら?


『アウラ。反撃するぞ』


「そうしましょうか。あっちはノロマなようだし、いくらでも反撃できそうね」


『ああ。しかし、あの機体。移動は脚部のバーニアで行いそうなものだが、なぜ走ってきているのだ?』


「さあ? 罠かもしれないし気を付けて反撃に移るわよ」


『承知した』


 あたしは両手持ちの棒を取り出すとその両端を持ってパトロクロスに向かって突っ込んでいく。

 パトロクロスもそれにあわせて攻撃してくるけど、やっぱり動きが遅い。

 あたしはパトロクロスが剣を一振りしている間に相手の脇をすり抜け、棒の先端から光の刃をだしてパトロクロスの両腕と首を切り飛ばした。

 パトロクロスの両腕と頭は切り落とされて転がり、残った胴体の方は切断面が凍りついている。

 この武器がヘファイストスの用意した新兵器、フリージングエッジだ。

 恐ろしく切れ味のいい魔法の刃を生み出しつつ、その切断面は凍りつかせて爆発させないという優れもの。

 エンシェントフレーム同士の戦いにおいて、相手を爆発させないということは生け捕りにする前提条件だからね。

 普通の武器じゃなかなかこうはいかないのよ。


 さて、頭と腕がなくなったパトロクロスだけど、そのまま転がって倒れ込んでしまった。

 ジタバタともがいて何かをしようとしているみたい。

 でも、両腕がないから何もできないようね。


 あたしはバタバタうるさい両脚も切り落として胴体部分だけを残しリードアロー国王の生け捕りに成功。

 リードアロー国軍もあっさりと降伏した。

 戦争に乗り気だったのって一部の貴族だけだったんじゃない、これ?

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