80. 王都決戦

 王都に近づいたところで待っていると、ようやく防衛軍が出てきた。

 相変わらず、行き当たりばったりの大小チグハグな構成だ。

 しかし、その奥から出てきた部隊は様相が異なる。

 ある程度おそろいのエンシェントフレームで、装備も統一されており、確実に『揃えた』とわかる逸品だ。

 あれは一体……?


「おや、近衛騎士団まで出てきているじゃないか」


「あれが近衛騎士団ですか」


「そうだよ。近衛騎士団自ら出てくるということは、本当に鯛が釣れたかもしれない」


 リードアローの王様って本当に短慮扱いされているなあ。

 確かに、この程度のことで近衛騎士団自ら出てくるんだもの、仕方がないか、

 さて、本日の主役、リードアローの王様はっと。

 あ、いた。

 真っ黒い塗装のエンシェントフレームが1機こちらに近づいてくる。

 こいつが王様のマナトレーシングフレームだよね。


『のこのこやって来おったな! マナストリアの王配に憎きアウラめ! 大人しく首を差し出すならば痛めつけず、すぐさま首を落としてやろう。反抗するならば、徹底的に拷問にかけてから始末するまでよ!』


 外部スピーカーから威勢のいい声が聞こえてきたけど、これがリードアローの王様なのかしら?

 いまの一言だけで頭が悪く感じるのは気のせい?


「どうしようか、アウラ名誉伯爵。あの男を倒すのは容易そうだけど、生かして捕まえるのはなかなか骨が折れそうだ」


 秘匿回線で王配殿下の声が聞こえてきた。

 確かにあいつを倒すだけなら簡単そうだけど、生きたまま捕まえるのは骨が折れそうな気がしないでもない。

 さて、どうしたものか。


『あれの搭乗者を殺さないように破壊すればいいのか?』


「そうだけど、ヘファイストス出来るの?」


『無論だ。作り置きしていた装備の中にいいものがある』


 ヘファイストスってば備えがいいんだから。

 一体なにを想定してそんな武装を用意していたのやら。


「いまの会話。ヘファイストスに任せても大丈夫なのかな、アウラ名誉伯爵」


「自信があるみたいなので大丈夫のようです、王配殿下。あたしが先陣を切ります」


「わかった。私は後ろの部隊が攻撃を仕掛け始めたら動くとしよう」


 こちらの準備も終わった。

 まず、あたしがあの王様の相手をして戦闘不能を目指す。

 勝利条件は、搭乗者を殺さずに捕まえること。

 ほかの敵部隊が攻撃をし始めたら、王配殿下と各部に潜んでいる電撃作戦部隊の攻撃開始だ。

 策は単純だけど、うまくはまるんだろうか。

 信じているからね、ヘファイストス!

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