BEAST〜獣〜

鷹山トシキ

第1話

 2022年11月、俺は夜の公園で飢えを凌いでいた。つい、先月まではアパートで料理を作ったりしてた。200円のスーパーの肉が高いと思ったりしていた。ロシアのせいで年金は目減りし、精神障害者の俺は厳しい生活を強いられていた。

 タイムマシンの開発者の話を聞いたことがあるが未来には行けるが、過去に行くことは出来ないらしい。

 俺が住んでるのは来島ってところだ。

 来島は、愛媛県今治市の来島海峡の西側、波止浜湾の入り口、四国から沖合い240mに位置する有人島である。芸予諸島の一部(来島群島)をなし、面積0.04km2。島の中央に標高47mの小山があり、かつては来島城もあった。島の南東に来島漁港と集落がある。来島海峡は潮流が速く、潮向も複雑なことからきた「狂う潮」が訛り、「くるしま」となったといわれている。住所表記上は、近傍の小島(おしま)も含まれる。

 能島、因島と並び、村上水軍の根拠地として知られる。来島村上水軍は、関ヶ原の戦いで西軍につき、豊後の森に転封されるまで、6代、約160年の間、この島に本城を置いた。近傍の小島(おしま)に枝城を築き、来島海峡を行き交う船舶に睨みを利かせていた。時代は下り、波止浜に塩田が築かれると、来島は塩買船や回船の集まる港町として繁栄した。来島、波止浜、波方なみかたには多くの船主が居て海運業が栄えた。菊間の瓦製造と結びついた瓦船、泥船、また北九州や宇部の石炭を阪神地方へと運ぶ石炭船が頻繁に行き来するようになった。海事都市をめざす今治市のルーツともいえる地である。


 今日では漁業を中心とした島となっている。言い伝えによると、神の島として犬猫の四足のものを忌み、祭りの獅子さえ出さなかったとされる。


 なお、来島城は現存せず、過去何回か調査が行われている。


 そのとき、楕円形の乗り物が公園の近くに落ちてきた。乗り物から熊の頭をした奴が降りてきた。

「過去に戻りたいと思ったことはないか?」

 去年の12月に別れた亜美の顔を思い出した。5年前にホルモン工場で知り合った。

 2021年12月に戻って、亜美とやり直したい。

「戻れるのか?」

「戻れるが、未来に戻ることは2度と出来なくなる」

 きっと、これから先面白いことなんてない。40歳の俺は簡単にやり直すなんて出来ないのだ。

「金払えば乗せてくれるか?」

 残金は1万円。まさか、熊のぬいぐるみを被った詐欺ってことはないよな?

「僕の世界ではあまり金は必要ない」

 金が必要なない?どれだけVIPなんだ!?

「人を10人殺せ」

 熊男は首桶を渡した。

「首をこの中に入れるとコインに変わる。首は入れた瞬間に消える」

 人を殺すなんて考えただけでおぞましい。俺は顔はコワモテだが、『あなたの番です』とか『金田一少年の事件簿』とか大の苦手だ。時代劇の斬り合いシーンとかも鳥肌が立つ。だが、このままだとマジで飢え死にする。

 役所の若い男は「両親はいないんですか?」と聞いてきたが、親父は小さい頃交通事故で亡くなり、おふくろも20歳のときに怪物に食われて死んでしまった。

 生活保護はダメだった。俺は2歳のときに、月からやってきたのだ。まだ、そのときは親父もおふくろも元気だった。親父は月の人間で、おふくろは地球人、若い頃は宇宙飛行士をしていた。

 俺は顔も格好も人間だが、たまに人間が食べたくなる。胃袋だけは父親譲りらしい。

 タイムマシンに乗れば、親父やおふくろにも会えるかも知れない。

「分かった。10人殺せばいいんだな?」

 熊男は腕時計みたいなのを渡した。てか、普通のデジタル時計じゃねーか!

「時計なら持ってるよ」あっ、でも電池切れを起こしたときのこと考えてもらっとくか?

「見た目は時計だが、横の赤いボタンを押すと俺を呼ぶことが出来る」

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BEAST〜獣〜 鷹山トシキ @1982

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