第8話 悪夢と本心




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あれ?………………俺、何してるんだっけ……………確かナイに俺の目を魔眼にしてもらってから……………どうなったんだっけ?……………てかここどこだよ。




ナイに目を魔眼にされてから、レンの意識は現実にはなく、どこか遠くにあるかのように思えた。



ここはどこなのか、何をするべきなのか、わからない。



わかるのはただ何かが騒がしいことだけだった。

 



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―――あの失敗作がこんなに強いわけがない!―――



―――ああ、違いない!だってあいつは何もできない出来損ないだからな!―――



―――そうよ!あのロマが負けるなんておかしいわよ!?きっと何か卑怯なことをしたに違いないわ!だってあいつは無能力なんだから!―――



―――そうだ!あいつは、ただの無能だ!そんな奴が英雄の末裔のあのロマを圧倒できるなんて何かしたに違いない!―――



―――この国から出て行け!―――



―――英雄王の息子のくせになんて恥知らずな!―――



―――あんな奴さっさと追放しろ!―――



―――王国の恥だ!!―――




辺り一面には王国が誇る巨大な闘技場。



その中心にいる人物に国民が罵倒し、失望し、悪態などを叫び散らかしていた。




ああ、そうかこれは……………過去か……………。



レンの目の前には忘れたくても忘れられない最悪の過去が映っていた。


それは



―――クト兄!?お、俺は………ど、どうしたら―――



―――レン…………お前はお前の道を行け……………こっちに来ちゃダメだ―――



そう言ってクト兄は俺の頬を思いっきり殴り飛ばした。


なぜあの時、クト兄が俺を殴ったかは分からない、いくら考えても、自分の答えを出しても、それがあっているかはもう知ることはできない。だが、その頬に感じた衝撃を、痛みを、クト兄の今にも壊れてしまいそうな悲しみに満ちたあの顔を、今もなを忘れることはない。


その時の俺に残ったものは酷い孤独感と喪失感だけだった。


…………………いや、違うな…………………。


クト兄のことを知りもせず……………いや知ろうともせず、自分勝手に罵倒し続ける人間どもが許せなかったんだ。



どうしてクト兄はあんなに頑張ってたんだ?


どうしてクト兄はあんなにも追い込まれてたんだ?


どうしてクト兄はいつも悲しそうな顔をしていたんだ?


どうしてクト兄は無能呼ばわりされないといけないんだ?


どうしてクト兄は認められなかったんだ?


どうしてクト兄は魔人と手を組んでいたんだ?


どうしてクト兄はあそこまでボロボロになってしまったんだ?


どうしてクト兄は…………………俺の前からいなくなってしまったんだ?



ああ、そうだ、全て………………全て自分勝手なこののせいだ!!


こいつらのせいでクト兄が……………………………。


こいつらが居なければクト兄はこんなことにはならなかったんだ……………………。



ああ、本当にムカつく……………全てを壊したい、無くしたい。


人間どもを殺したい…………………。


ああ、そうだ………………俺は………………殺したいんだ………………全てを…………………人間を………………殺し尽くしたいんだ!












「ッ!?…………………………夢か」


長い…………………長い夢を見ていた気がする。


「……………なんでだ?……………なんで俺は……………」


夢から目覚めたはずなのに、人間どもを殺したいと言う思いが消えないでいた。


あれは俺の本心………………なのだろうか…………。


先ほどの夢についてレンが深く考えようとした時。



「やあ、ずいぶん眠っていたね。もう夜だよ?」


「あ、本当だ、もうこんなに暗く……………って、うおっ!?」


目を覚ますと目の前に、というか少しでも動けば触れるほどの距離にナイの顔があった。


レンは驚いて声を上げ、逃げるようにナイから離れようとする……………が、体中から激痛が走り動くことが出来ないでいた。


「あだっ!?」


筋肉痛?………………いや、そんな優しい痛みじゃない!?


それはまるで体の体内から何者かが好き勝手乱暴に暴れているかのような激しい痛みだった。


「急に動かない方がいいよ?動いたら余計体に痛みが走るからね」


「な、え!?お、俺の体…………ど、どうなってんだ!?」


あまりの突然の痛みに、何がどうなっているかわからない様子のレンにナイが語りかける。


「君の目を魔眼にしたんだ、そんなことが何の犠牲もなく出来るわけないだろ?だから今の君の体はその反動で激しい痛みが襲っているんだよ…………でも安心していいよ、数日でもしたら痛みは無くなるだろうしね」


「な、え!?ほ、本当に俺の目は魔眼になったのか!?」


「ああ、なったよ…………確認するかい?」


ナイはそう言ってポケットから小さな鏡を出しレンに渡した。


(ま、まじかよ!?お、俺が魔眼保持者になるだなんて…………一体どんな能力なんだらうなー!!)


レンは痛む体にできる限り無理をさせないようにゆっくりと体を動かしてナイから渡された鏡で自分の目を確認する。


………………………………だが。



「…………………ん?…………………変わってなくね?」


鏡に映った自分の目を確認するがそこには至って変わらない自分の普通の目が映っていた。


「え?どういうことだ?確か魔眼になると色が変わったりなんかが出るんじゃなかったか?」


そう、普通『魔眼』というのは普通の人とは違い輝くように綺麗な色で特殊なが出るはずだが、レンには模様もなければ輝いてさえもなく、普段と変わらないいつもの目だった。


思わずレンが「まさか失敗か?」と思っていたとき。


「たしかに魔眼は普通の目とは輝きが違うけど、魔眼は力を使う時や魔力を流す時だけ姿が変わるんだよ」


「え?そうなの?」


「そうだよ。まあ、魔力を必要としないで常に輝き続ける目も存在するけどね」


「それは魔眼とは違うものなのか?」


「うん、そうだね、魔眼とは違う目だね」



(なるほど…………そんな目もあるのか…………ん?待てよ)



ナイの説明に最初は納得したレンだが、あることに気づき疑問を持ち始めていた。


「ん?どうしたんだい?」


「いや…………………魔眼は魔力を流してる時だけ色が変わるってことは……………ナイは常に目に魔力を流してるのか?」


そう、ナイの目はレンと会った時から常に綺麗な黒紫色に輝いて、目の中心には見たことのないような印?のような模様が浮かんでいるのだ。


「いいや、違うよ…………………僕は『魔眼』保持者じゃないからね」


「え?魔眼じゃねえの!?………………ナイの目ってなんなんだ!?」

 




「ああ、僕の目は…………………今はまだ内緒かな」


「え〜!?そこで内緒かよ!?」


「まあ、君ならいずれわかるよ…………………多分ね」


「いや、多分かよ!?」




「それより、確かめたらどうだい?君の『魔眼』をね」


「あ、そ、そうだな……………よし!」


俺はそう言って魔力を目へと集めるため集中する………。


すると目が、ほんのりと熱いと言うほどの熱ではないにしろ、心地よい暖かさが目を優しく覆っているかのように感じとれた。


「あ、あったかい………………」


「まあ、初めて使うとそんな感じだろうね…………慣れると感じにくくなるから『能力』が使いやすくなるはずだよ」


自分でも目に何かが起こっていると言うことがよくわかるほど何かを強く感じ取ることができた。



………………これが………………『魔眼』………………。



「うん、とても綺麗に輝いているね」


「ッ!?」


俺はすぐにナイから渡されていた鏡で自分を映し、目の変化を確認する。


「おおー!?すげー!?……………ん?あれ?…………なんで両目が違う色なんだ!?ナイ!?これってどうなってんだ!?」


そう、レンの両目は『魔眼』へと至った…………のだが、なぜか同じ色のはずの両目がそれぞれ違う輝きを放っていたのだ。


右目が漆黒を表すかのような黒に、左目が光り輝く白に、左右真逆に、綺麗な輝きを放っていた。


だがそれは明らかにおかしい、『魔眼』とは普通、。だからはずなのだ。


だからレンはそこに疑問を感じたのだ。


「『魔眼』とは片目だけでは力を使えない…………たしかに『魔眼』とはそう言うものだ、強力な力には


「じゃ、じゃあ俺は!?俺は『魔眼』の力が使えないのかよ!?」


てっきり魔眼保持者になったから、新しい能力が使えると期待していたレンは裏切られた感覚に襲われていた。


「………………いや、まあ別にナイは全く悪くはないんだけどさ!?俺ちょっとだけ新しい能力が使えると思って少しだけはしゃいでいたからさ!?なのになんかその力が使えないからさ!?もうなんなんだよ!?」


別にナイは悪くはない、魔眼にしてくれる際にどのような物になるかは、ナイ自身もわからないと言っていたからだ、それにナイは俺の目を一応、魔眼にしてくれたからレンが文句を言うのは明らかに間違っている……………のだが、そのことはわかっているのだが、レンはどうしても裏切られた感に襲われてナイに聞かずにはいられなかった。


「まあまあ、一旦落ち着こうよ」


「こんな状況で落ち着けるわけねえだろが!?」


「まあ、確かに君の魔眼には驚いたし、両目の色が違うけど………………能力は使えるよ」


「え?………………………………マジで!?」



レンはもう今日何度目になるかわからないほど叫び声を上げるのだった。













 


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