第6話 決意

覇皇はおうに?……………俺が?」


「そう、君がなるんだ」


俺はこの時…………これが夢物語でも嘘でもなく自分ならやれると………そう思っている自分がいた。


だから俺は……………。


「でもどうやって…………覇皇なんかになるんだ?」


聞かずにはいられなかった。


「言ったろ?まずは『帝王』になる必要があるって」


「『帝王』………………か」


「そう『帝王』にね、まあ、『帝王』もまた『神』に選ばれた者だけがなれるんだけどね」


「え…………それじゃあ俺が『帝王』になるのは無理なんじゃ……………」


俺がそう言ったとき、ナイはすぐに否定してきた。


「そんなことはないよ?神に選ばれなくても『帝王』になる方法は存在するよ」


「なっ?!そうなのか?!どんな方法だよ?!」


俺は驚いてナイに食い気味に聞いた。


(そんな方法があるなんて……………知らねえぞ?!)


「はははは、簡単だよ………無理矢理『神』に認めさせるんだよ」


「………………はっ?」


何言ってんだこいつ?


「はははは、変な顔してるよ?大丈夫かい?」


「いや、お前が突然変なこと言ったからじゃねえか?!」


「はははは…………でもこれは本当だよ?」


「はっ?」


「聞くけど………君のお父さんはどうやって『帝王』に…………『英雄王』になれたんだい?」


「ッ!?……当時『帝王』だった『破壊王ヴリトラ』を倒したから……………」


「そう…………『神』はね、気に入った相手が誰かに倒されたらその行き先が倒した方へと移るんだよ、だから『破壊王』を倒した君のお父さんは『英雄王』になり『帝王』の仲間入りになった…………てなわけだよ」


確かに考えてみたらそうなる………………のだが、


「それってつまり俺に『帝王』を倒せって言ってる?」


「?当たり前だろ?」


………………………………え?



「いやいやいやいやいや、それは無理だろ?!」


「どうしてだい?」


「『帝王』って世界を支配できるほど強いんだぞ?!そんなもんに勝てるわけねえだろ?!」


「……………さっきまでの威勢はどうしたんだい?」


「いやだって『帝王』だぞ?!」


「確かに今の君の実力では絶対に勝てないだろうね」


ほらやっぱり……………。


「そう………ね」


………………………ん?


「?どう言うことだ?」


「そのままの意味さ………………今は未熟なれど力をつければ君は『帝王』たちにも及びうる存在になるかもしれない」


「そ、そんなこと言われたって……………そもそも『帝王』に勝てるやつなんかいるわけ……………」


「いるよ」


「………えっ?」


「17年前、ただの人間だった君の父、インドラ・ベルトは当時『帝王』だった『破壊王』を倒してその地位を奪っている……………そしてちょうどぐらいに「ハデス」と名乗る者が『帝王』だった『閻王』を倒し『冥王』と言う地位を手にしている……………ほらね?『帝王』は確かに最強だけど絶対に勝てないわけじゃないんだよ?」


「ッ?!」


「そして今、この世界には12人の『帝王』が世界を支配している……………その中に入るんだ!」



………………俺が………………。




「俺が……………親父みたいな『帝王』に…………」


続け様にナイは言う。



「確かに今の段階では君の目的は『帝王』だけど…………本来の目的はそこじゃないだろ?」


するとナイは不気味な笑みを漏らした……………レンは気づいてなかった…………レンもまたナイと同じように不気味な笑みをしていたことに。



「「覇皇だ!」」


俺とナイの言葉が重なった。



「はははは、面白くなってきたね」


「カッカッカッカ!そうだな!」


俺とナイはもう何回かわからなくなるほど笑い合った。







  


「ところで」と言って笑い疲れたナイが口を開いた。



「これからはどうするつもりなんだい?」


「これから?」


笑い疲れたレンはナイのこの質問に?が頭に浮かんでしまっていた。


「そう、これからだよ……………まさかこのままずっと王国にいるつもりかい?」


「…………え?あ、あ〜いや……………どうしよっか?」



(正直言ってこれからどうするとか全く考えてねえし…………なんなら王国に出ようとも考えてなかったな)


するとナイが、


「まあ別にこのまま王国にずっといても君は『帝王』になれるかもしれないしそれもいいかもだけどね」


「えっ?!そうなの?!」


「いやだって君『英雄王』の子どもだし、その力受け継いでるし、なんなら強いし」


「た、たしかに……………あれ?俺ってもしかしてこのままいけば『帝王』になれる?」


「まあ可能性があるって話だよ…………それでも、メリットを考えたら王国から出た方がいいと思うけどね」


「メリット?」


「うん、君はこれから『覇王』になることを…………世界を変えることを目的にするんだろ?なら君は世界を変える上で今の世界がどうなっているのかを知っておいた方がいいんじゃないかい?幸い君が知っている世界は王国の世界だけだからね」


「な、なるほど……………たしかに世界を見て回るのも……………いいかもしれないな」


「そして今の君はこの王国では負けず知らずなんだろ?なら世界に出てみたらどうだい?この世界には今の君を上回る強者がたくさんいるからね。そいつらと戦い、経験していくことも『覇王』を目指す上で重要なことだよ」


(たしかに……………俺は王国このくにを出たこともなければ外の世界のことを全く知らない…………

ならいっそ王国を出てみるのもいいかもしれない…………いや、そうすべきなのかもしれない)


だから俺はナイに言った。


「そうだな…………うん、そうだ…………たしかに俺は世界を変えるって言ったのに全然この世界のことを知らなかった…………だから俺は外の世界に行くよ…………この世界を知った上でこの世界をどう変えていくかを考えるよ」


これが俺の答えだった。


(故郷である王国を出る…………おそらくルドたちや親父たちは反対するだろうな……………それでも俺は変えない…………自分の道ぐらい自分で決めたいからな)


するとナイは、


「はははは!その方がいいよ!この世界を知ることは必ず君のためになるだろうからね」


俺の答えにナイは機嫌よく肯定してくれた。



でも………………………。





俺は外の世界を知るために旅に出る……………だけど俺は……………。


「ナイ……………俺と来ないか?……………俺と一緒に…………この世界を変える旅に付き合ってくれないか?」


それはレンのナイに対する願いであった。


ナイと一緒に世界に出たい、一緒に行けたら楽しくなる、そう思いを込めたレンの言葉……………。


そしてその願いに対してナイは…………………………



………………………………………………………………



………………………………………………………………






「あ、ごめん。それは無理だわ」






「………………………え?」





ナイの意外な答えにレンは驚きを隠せず間抜けな顔を晒してしまうのだった。








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