第3話 始まりと出会い


――――――――――――――


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俺たちはの子供だった…………。


………いや、それは今も変わらないか………。




俺は親父と母さんのような雷の力を


ルドは英雄マルトのような風の力を


ロマは英雄ミトラのような炎の力を


アスは英雄ヴァルナのような水の力を






それは親の才能が子に受け継いだ結果であった。






だが、ただ一人…………あってもおかしくない才能を………………………………………………………………否、受け継がれるはずの才能をクト・ベルトは持って生まれなかった。





そう、クト・ベルト持っていなかった。








クト兄はこの中で1番年上だったので自然とリーダー的存在になっていた。まあ、リーダーと言っても命令や指揮とかそういうのはやっていなかったがみんなの兄的存在だった。その立ち位置に不満を持つものは誰もいなかった………………最初は……………。





俺たちが成長するにつれて……………クト兄に不満を持つ者が現れた。


それは俺たちみんなが才能を開花させた中で唯一クト兄だけ何もなかったからだ…………。


みんな英雄である親の才能が目覚めているのにクト兄は親父の雷神の力は愚かさえ発現しなかった。



『なんでクト兄が俺たちと一緒にいるんだ?』



……………………………………………



……………………………………………



その言葉を誰が言い始めたのかは知らない、それはただのジョークだったのかもしれない…………だがクト兄はそれから俺たちと遊ばなくなった………。


クト兄は俺と同じ英雄王の息子のためみんなが期待していた。


だがクト兄はその期待に応えることはできなかった。


次第にルドたちはクト兄のことを見なくなった………

クト兄がいても無視ばかり…………。




許せなかった。





俺はクト兄のことが好きだ………それは今も変わらない。だが今それをいうのは卑怯だろう…………もうクト兄はいないのだから。




俺はクト兄と違って親父の才能を受け継いだ………そのため、よくクト兄と比べられることが多かった。



その度にクト兄はいつも落ち込んでいた。




それが嫌だった。



クト兄は落ち込んだ後は必ず一人で黙々と鍛錬していた。



手から血が出るまで………いや、手から血が出ても鍛練をやめることはなかった。


それはみんなの期待に応えるためだけではなく昔のようにみんなといられるようになるため……………。


だがいくら頑張ってもその結果が出ることはなかったのだ、努力をどれだけしてもみんながクト兄を認めることはなかった…………国民も、友人も、幼馴染みも

………………親も。


対して俺たちは結果を出すことができた………だがそのせいで………国民がクト兄に対する不満が大きくなってしまった………故にクト兄は………孤独になってしまった。



だからクト兄は…………………。







「どうやら落ち込んでるみたいだけど、どうしたんだい?」


「ッ!!??」


俺は瞬時に後ろにジャンプして元いた場所から距離を離す。


(な、なんだこいつ?!目の前にいたのに話しかけられるまで気づかなかった?!)


そう、レンは目の前の男が声をかけるまでその存在すら全く気づいてなかったのだ。しかもレンの実力は父の英雄王の力も備わっていて世界でも強者の部類に入る。そのレンがこれほど近くにいたのに声を掛けられるまで気づかなかったのは相手が只者ではないという証拠だった。


そしてレンは目の前の相手を観察する。


目の前には全体に黒を基調とした服装の男がいた。


……………………男?


目の前の相手は黒いフードを深く被っていて顔をよく確認することができない、だから男か女かと言われれば判断がつかないのだが、相手の声からして男の声だと思われた。


そして唯一わかるのは光り輝く綺麗だけだった。



「お前……………何者だ?」


俺は多少の敵意を出して相手を観察しながら目的を探る。


すると男は両手を上げて…………。


「あ〜、待った待ったちょっと待って………僕はただのしがない旅人だよ?別に君を何かしようとは全く考えてないよ。ただ困ってそうだから君の話を聞いてあげたかっただけだよ………本当だよ?」


……………敵意を感じない…………それに嘘をついているように見えない……………なんだこいつ?


「…………余計なお世話だ」


俺はそう言ってそいつから逃げるようにこの場から離れる……………が………。


「君は…………この世界が好きかい?」


「…………んあっ?」


男のその質問に俺は立ち止まって反応してしまう。


(こいつ…………いきなりなに言って…………)


「僕はこの世界が退屈だ。君はそう思わない?」


「お前…………いきなりなに言って………」


「僕が君に聞いているんだよ?それなのに君が僕に質問するのはおかしくないか?さあ、答えてよ」


たしかに質問を質問で返すのはおかしい…………だが俺は答える気は全くないなぜならあまりこいつに関わりたくもないしめんどくさいからだ、なのにおかしい、なんで俺は…………この得体も知れない男の言葉にこんなにも興味を持ってしまうのか。


それはレン自身さえもわからなかった。


ただわかるのはこの男の話に何故か興味を持ってしまっていることだ。


だから俺は……………。


「俺は……………この世界のことなんか好きでも嫌いでもないさ」


男の質問に答えた。だが男は…………。


「……………違うね」


「…………はっ?」


俺の言葉を否定してきた。


「君はこの世界が本当は嫌いなんじゃないか?」


「な、なにをいきなり…………別に嫌いじゃねえよ」


「なら…………君はこの世界がと思うかい?」


「はっ?…………どういう意味だ?」


「そのまんまさ…………君はどう思っているんだい?」


「そんなの知る訳ねえだろ?この世界が正しいかどうかなんて」


「いや…………君はこの世界が正しいとは思っていないね」


「ッ!?………だからなんでお前がそんなこと……」


全てを見通しているよなこいつにムカついて苛立ちを隠さずに声に出すと。


「君の大切な人はなんでいなくなったんだ?」


「ッ!?」


なぜかわからない、わからないはずなのになぜ自分はこんなにも動揺してしまっているのか。


「君の大切な人がいなくなったのは全てだろう?」



俺はその言葉が







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