第2話 うるせえ
気づいたら家の前まで来ていた。
俺は家に入ると真っ先に自分の部屋へと向かう。
途中、雇っているメイドに会い、声をかけられる。
「あ、坊っちゃま、お帰りなさいませ、今日はお父上様がお早いお帰りですよ。」
「ッ!………」
父と言う発言に思わず顔をこわばらせて一瞬立ち止まってしまう………が、すぐに歩を進ませる。
行き先は親父の元ではなく自室に。
自分の部屋に着いて真っ先にベッドにダイブする。
「はあ〜。自室は少し落ち着くな」
俺は英雄王の息子のため学園や店、外、どこにいても話しかけられたり聴きたくもない話が耳に入ってくる。それがたまらなく嫌だった。
それは家でも例外ではなく、メイドたちが
でも自室にいればそんな声が聞こえることはない。
だから自室は落ち着く………
「おかえりー!レン!ただいまぐらい言えよな!」
俺がベッドに休んでいると、ノックもしないで勝手に入ってきては馬鹿みたいに大きな声を出す。
だから嫌なんだよ。
「うるさいな、俺は疲れてんだよ。てか、いつも言ってるだろ?ノックしろって」
「あはははは、わりぃーわりぃー。てかお前学園行っただけで疲れたのか?俺の息子なのに情けねえなあー、ったく」
こいつは 英雄王 インドラ・ベルト
17年前、世界の帝王にして最強の存在、『十二帝王』の一人、『破壊王ヴリトラ』を倒し、新しく世界の帝王に、『十二帝王』になった『英雄王インドラ・ベルト』。
王国の誇りでもあり、人類の希望とも言われる存在。
で、俺の親父でもある。
「うっせ、これでも大変なんだよ。勉強とか鍛練とかで忙しいんだよ」
「じゃあ勉強は無理だが鍛練は父ちゃんがつけてやろうか?父ちゃんは超強いからな!強くなること間違いなしだぜ?」
「それはいつも断ってんだろ、親父、だいたい教えるの下手なくせに」
親父は教えるのが決して上手いとは言えない…………はっきりいって下手だ。
そもそも親父は、ずば抜けた才能と感覚で強くなっている。
たしかに俺も才能があるとは自覚しているが、親父と比べたらその差は歴然としている。
だが親父は俺を期待している……………そのせいで
「こう言ったら昔は喜んでくれたのにな…………でっかくなってからなんか変わったか?……………まだ
「ッ!?」
今、なんて言った………
「たしかにあいつが死んだことは……………俺も悲しいが、だがそれをずっと引きずっていたらあいつに笑われるぞ?いつまでもそのままじゃ大人になれないぞ?」
ドン!!
気づいたら俺は親父を押し飛ばして馬乗りになって胸ぐらを掴みながら叫んでいた。
「何があいつが死んだことが悲しいだ!!ふざけんな!!あいつを殺したのもあいつがあそこまで追い詰められたのも!!全部お前の!お前たちのせいじゃねえか!?だからあいつは…………クト兄は………」
自分が感じていた怒りの感情を親父にぶつけていた。
目には止まることのない雫が溢れていた。
親父は…………息子にここまで言われてなを何も表情に出さなかった。
「たしかにあいつを…………クトを追い詰めたのはたしかに俺のせいだ…………だがあいつは…………
「何が愛してただ……………クト兄を殺したくせに」
「ああ、俺はあいつを殺した。だがあれはあいつが魔人と手を組んでいたからだ」
「そんなこt『そんなことだからだ、レン!お前は魔人という存在を分かっていない……………あいつら魔人は悪という概念の塊だ。あいつらのせいでどれだけの人が犠牲になったか…………』
俺の言葉を遮って親父が強くそして悲しそうに言った。
…………俺は舌打ちしながら親父から離れて部屋を出た。
「はあ〜、ったく……………親失格だな」
インドラは床にしばらく倒れたまま起き上がろうとはしなかった。
「なにやってんだよ………俺は………やっぱりクト兄がいないと………俺はだめだな………」
自室から出た後、俺は家を出て近くの遊び場のベンチに座っていた。
ここはあいつと…………クト兄と昔よく遊んだ場所だった。
2人で遊んだことが1番多かったがルドたち幼馴染みで遊んだことも多かった。
「クト兄は1番年上だったからリーダー的存在だったけな」
あの時は本当に…………楽しかったな…………。
だがいつからだろうか…………みんなが変わってしまったのは………。
昔はあんなに遊んでいたが…………時が経つにつれて変わってしまった。
親父の前ではああ言ったがそれは違う……………クト兄を追い詰めたのは俺たちだってそうだ…………いや…………俺たちのせいで………………。
ルドはおじさんのような風の力を
ロマがおばさんのような炎の力を
アスがヴァルさんみたいな水の力を
俺には親父や母さんのような雷の力を
そしてクト兄には…………………………
――――――――――――――――――
――――――――――――――――――
…………………………………何もなかった。
それが全ての始まりだった。
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