1章 冒険者になりたい!3
パパは1週間に1回挑戦権をくれたから、アイラは何度も挑戦した。
ただアイラはパパに触れないまま1年が経とうとしていた。
正直パパの実力を舐めてたのは本当だけど、それでも触るくらいならすぐ出来ると思ってた。
ただ1年経っても触ることができない。
オベロンは「頭を使わなきゃダメだ」って言うから一生懸命考えてはいるんだけど、それだけじゃどうしようもないと感じる。
普通の運動勝負なら絶対に負けないのに、パパの使う法式魔法がアイラには厄介なことこの上ないのだ。
アイラや魔法で戦う魔法士が使う詠唱魔法はマナに語りかけて自分の魔力と大気のマナを混ぜ合わせることで魔法をイメージから実際の攻撃に練り上げ具現化する。
だから魔法の発生まで少しだけ時間差がある。
でも法式魔法は魔法式っていうマナに対する指示を書いた特殊な文字列に魔力を流すだけだから、マナに語りかけイメージを共有するというステップがなくてすぐ魔法が具現化される。
ただその発生の速さに伴うデメリットとして一切の融通が効かず、決まった通りの現象しか起きない。「だからこんな魔法は普通は戦闘で使わない」とオベロンは言っていた。
ただ、学者さんとかが研究でしか使わない法式魔法をパパは戦いの中で使いこなしていた。
「あぁーもうっ! もう一回!」
最初の頃はあの障壁だけで上手くやり過ごされたけど、アイラも学んで考えて、今のパパは障壁以外の魔法も使うくらいには戦えた。
土を持ち上げて柱にする。植物を操作する。色んな魔法を使うようになってるから少しずつ本気になってると思ってもいい。
娘のわがままに対して本気になって迎え撃つのは父親としてどうかと思うけど、パパを倒すくらいじゃなきゃゼラさんみたいにはなれない。
だから諦めなかった……んだけど
「もーーーーーっ! それズルすぎ!」
正直ズルいと言いたくなる。
法式魔法は融通が効かないとオベロンは言っていたけれど、そんなものを感じさせないくらいパパは法式魔法の達人だった。
普通の法式魔法は事前に魔法式を組んでおいてそれを使うらしいのだけど、パパは魔法式をその場で組み上げる。
そしてその組み上げた魔法式を地面に書くスピードがとんでもなく速い。指を使って地面に魔法式をとんでもない速さで書き。状況にあった魔法を使ってくる。
あの伝説的冒険者クルー『アリスホーム』のオベロンが「あいつより法式魔法を使いこなしてるやつを見たことがない」って言うくらい。
「冒険でズルいなんて言えないよ。魔獣は言葉が通じないんだから」
「分かってるけどさー……」
もっと手加減してよ。と言いかけたところをグッと飲み込んだ。
今の段階でもパパに手加減されてるのはアイラでもわかっていた。
そんな感じでアイラはパパの法式魔法に言葉通り手も足も出ず、1年間を費やした。
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