第25話 呪われの過去

「べ……ベロニカ……」


キョトンとする俺とアンを差し置いてレネ1歩分後ろへ下がる。


「彼女は数十年前、この森に唯一住んでいた人間の修道女であった。エルフだからといって差別することなく優しく接してくれる彼女のことをみな好いており、わらわも彼女ととても親しくしておった」


話をしてくれている女王の目は少しずつ寂しさを帯び始めていた。


「――しかし、ベロニカは彼女自身のあり方について深く悩み、苦しんでおった………… わらわはそれに気付いてやれなかった」


「自身のあり方ってどいうことだや?」


アンの質問にほんの少し間をおいて、女王は返答する。


「彼女は女に恋をしてしまったのだ―― その相手はわらわ……」


――そうか、修道女であるベロニカにとってそれはとても重く苦しかっただろう。


エルフを人間と全くおなじ男性と女性に分けて良いものかってのはあるが、見た目的には人間とほとんど変わらない。


同性でしかも相手は女王だ―― 重すぎる。


「わらわはそんなことにも気づかず、のうのうと生き、そして……結婚した。ベロニカは祝福してくれたが、数週間後何も言わずこの森を去った」


女王は奥歯を食いしばっているのか、頬が固く膨らむ。


「その間何があったのは分からぬ。だが、森に帰って来た彼女はまるで別人……派手な服に身を包み、品のない様相で深い闇に覆われていた。 そして、ベロニカはこの森に住むエルフの大量虐殺をおこなったのだ」


―そういうことだったのか。


実はこの町に来る途中で、廃墟を幾つか目にしたのだがその事件の名残なのだろう。


「善人だった者こそ、闇に堕ちた時恐ろしい力を手にする。という噂は本当であった。 生まれながらにしてほかの種族よりも魔法を得意とする我らエルフが彼女の力の前では、一切歯が立たなかった。 ベロニカは数百を超える我々の仲間を殺した後、わらわに呪いをかけた。――1つは病を体に深く堕とす呪い、そしてもう1つは自身のした行いの責任を他者に負わせる呪い」


呪いってのは相手対して深い憎しみを持っていないとかけることは出来ない。


ベロニカは女王のことをそれほど強く憎んでしまっていたということだ。


「病の方はわらわ自身にかけられたのだが、もう1つはわらわの娘――ニムリにかけられた。 民がニムリを忌み嫌うのはこの呪いのせいなのだ」


そう言うと女王はベッドを降り硬い床に膝を着く。


「わらわの力が落ちたことで豊穣の力が弱まりこの森の作物は育ちにくくなってしまった…… 全て……わらわが招いた事。 一国の主として有るまじき振る舞いであった。 どうか娘を……ニムリを……この国を救ってはくれないか」


女王は土下座した。


この世界に土下座という文化があるのかは知らないが、一国の長がここまでするのだ。


これはこの国を乗っ取られる口実に使われてもおかしくない程の重い行為だ。


それほどまで追い詰められている……


「わかりました。こっちも聞きたいことがあるんスけど、この国がこんな様子じゃ落ち着いて情報収集できないですしね」


俺はできるだけ暗くならないように明るくそう返した。


アンのお父さんのについて聞きたいことがあるのだが、それはこの一件を解決してからとしよう。


「この国を救ってくれたのであればその際は、わらわは何でもしよう!」


ん?


今何でもって言った……?


やる気が出てきた。




《あとがき》

今回はちょっと短くてすいません!!

あと今週はこの1回の投稿となりますorz


この作品が気になった方はぜひ、評価、フォロー、コメントしてくださるとすっごく嬉しいです!



次回は1月 4日 水曜日の20時46分に投稿します。




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