第24話 女王謁見②(次話は土曜日の14時13分に投稿します)

 「二ムリが呪いをかけたってそりゃどういうことだ?」


全く予想だにしなかった展開になった。


それが本当なら、二ムリは自分がかけた呪いを自分で解こうとしていることになる。


意味が分からん。


「どういうことだ、そりゃ。 二ムリ」


俺は目をそらして俯いている二ムリの肩を揺さぶりながら問いかけるが、彼女はどこか苦しそうな表情を浮かべながら口をつぐんでいる。


「ギンリさん説明してくれないかや?」


アンは動揺する俺を諭すようにポンッと軽く背中を叩くと、ギンリに向き直る。


「それはじゃな……その……くっ!」


ギンリは突然奥歯を強く噛みしめ、グッと何かをこらえているような様子で、こちらを見る。


何かを言いたそうにしているが、言葉にできないといった感じか?



 「そのことについては、わらわが語ろう」


――突然部屋にあった巨大ベッドが軋み、レースのカーテンが大きく揺れる。


恐らく声もそこから聞こえたようだ。


「い、いや。あなた様はどうか休まれてください。説明に関してはこのギンリが致しますので」


ギンリは慌てふためいた様子でベッドの前に跪く。


「よい。 そなたはもう十分と役割を果たしてくれた。 それ以上はもう、限界であろう」


なんという美声だろう、背筋がぞわってするほどの透き通った響きのある声だ。


柔らかい印象を受ける声質だが、どこか芯があり信念を感じる。


……じゃなくて、こりゃ一体どういう状況だ?


「あの、あなたが女王様ですか?」


レネは単刀直入にベッドに呼びかける。


「貴様‼ 無礼であろう!! 女王様の許可なくお前が口を開く出ない!」


ギンリは跪いたまま、顔だけこっちを向けているが怒り心頭のようだ。


「怒るでないギンリ。 わらわがこの者たちと話をしたいのだ。 そなたはもう下がりなさい」


ギンリは何度か食い下がるが、女王の意志は変わらず、諦めたように部屋の扉に手を掛ける。


「貴様ら、決して女王様に無礼をはたらく出ないぞ!」


そう言って俺たちを睨みつけながらギンリは部屋を後にした。



 「ギンリが失礼な言動をしてしまったこと、謝罪する」


カーテンの向こうの影が、俺たちの方を向く。


「あ、いや全然気にしてないので」


何だろうドキドキする……


声に含まれる威光ゆえに自然と身が引き締まる。


「正装でない姿を見せるのは非礼と思うが、わらわはそなた達の姿を見て話をしたい」


その言葉の直後、ゆっくりとカーテンが開き、少しづつ影に色が付き始める。


「すっげー、きれいだなぁ」

「美しんだや」

「きれい…………」


女王の姿を見た俺たちアースウィンはまるで息を吐くかのように同じことを言っていた。


光が反射して黄金に輝く美しいブロンドヘアーに二重瞼の大きな目、スゥっと透き通った鼻筋に分厚すぎず、薄すぎない血色のいい唇。


まるでタンザナイトを埋め込んだような深い青色の光を放つ瞳は、見る者すべてを魅了するようだ。


耳は上ではなく横にツンと尖っている。


……と、顔についていろいろ思うところはもちろんあるのだが、それよりも――


デカい。とにかく大きい。このエルフの女王様。


身長は恐らく3メートル近くあるだろう。


そしてそれに比例するかのようにおっぱいもお尻も……とんでもなく大きい。


「なんということだ!」


俺はそういって膝から崩れ落ちる。


レギを超えるおっぱいなんて今後現れないだろうと思い込んでいた。


俺は調子に乗ってたんだ!!


毎日、毎日訓練の度に強烈に揺れるレギのおっぱい。


最初はそれに目を奪われ隙を作ってしまっていた。


男が揺れるおっぱいに目を奪われるのは、猫が猫じゃらしを目で追うのと一緒で本能なのだ。


その本能に苦しめられた日々もあった。


だがしかし俺は血のにじむ訓練の果てにそれを乗り越えた。


そしてレギぱい(レギのおっぱのことを俺とアンの間ではそう呼んでいる)の放つ特殊な精神攻撃魔法に耐性を付けた俺は、今後おっぱいで動揺することなどないだろうと高を括っていたのだ。


……そうだ、ここは異世界。 俺の常識なんて一切通用しない。


油断も隙も見せちゃあいけない。


これがゲームなら俺は確実にここでゲームオーバーだろう。


だがこれは現実‼ どんなに打ちのめされようとセーブポイントからやり直しなんてできない‼


もう二度と大きいおっぱいに動揺しないように、今ココからやり直すんだ!!!!!


「俺は……まだ負けてない!」




 「そなた……大丈夫か?」


女王様は割と本気で心配してくれていた。


「あぁ、気にしなくて大丈夫だや。コレは」


アンは本気で葛藤する俺を軽くあしらう。


何て奴だ、人が人生の岐路に立って大きな決断をしたというのに。


「そうか……では話を初めるぞ」


女王はかわいそうな人を見る目で俺を一瞥する。




 「では、話をするのだがその前に……【ドミール】」


女王は二ムリを見つめながらそう唱える。


これは催眠系の魔法で、対象者を眠らせるものだ。


ほどなくしてぐったりと崩れ落ちる二ムリを俺は支え、近くのソファの上に運ぶ。


「二ムリには……いや、あなたの娘さんには聞かせたくない話ってことですかね?」


俺はぐっすりと眠る二ムリの寝顔を見ながら、女王に向けて言った。


「そなた、気づいておったのか!?」


女王はひどく驚いているようだった。


「えぇ!?」

「そうなのアレン!?」


うちのメンバーも気づいてはいなかったようだ。


レネは教育中だからまだしも、アンには気づいてほしかったものだ。


「あなた方二人に流れる魔力はとてもよく似ているってだけの根拠だったんですけどね」


女王は静かに目を閉じ、顔を伏せる。


「そなたは、魔力の量だけでなく質まで正確に測ることができるというわけか…… その通り、わらわはそのルド・ホワール・ニームリアの母ルド・ホワール・サザリアである」


動揺めぐる部屋の中で、ほどなくして呪いについての話が始まる。



 「まず、この呪いについてであるが、これは二ムリのではない。 これは魔王軍幹部にして十一戒の魔導士が1人、”罪悪の修道女”ベロニカによってかけられた呪いなのだ」






《あとがき》


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次回は12月 29日 木曜日の20時46分に投稿します。










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