第22話 パンツをめぐる論証 希少性のパンツ 8/8
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家に帰ってぼくは、早速姉川さんに電話をした。
通話を選択すると、姉川さんはすぐに電話に出た。
この人、待ち構えてたんじゃないよな。
「やっほー。霧ヶ峰ちゃんの家に行ってきてくれたみたいだね。よくやってくれたね、白雪君!」
「相変わらずのテンションですね」
「それでそれで、どうだった? 『突撃、隣の女子高生!』はどんな結果になったんだい?」
「事件の概要を把握できました」
「……ん?」
姉川さんの反応はひどく悪かった。
いつもなら間髪入れずに、食い気味に話をかぶせてくるのに。
「あの、姉川さん。聞いていますか?」
「ああ、うん。それで、そのほかは?」
「それだけですけど?」
「……は?」
姉川さんはおかしな声を上げた。
いつもハイテンションな人であるはずなのだが。
ここまで冷めた声を聞くのは初めてかもしれない。
「ちょっと待って。私のアドバイス、無駄だった?」
「いや、無駄ではなかったと思いますよ。やはり、早めに話を聞いておいたほうが――」
「そういうことじゃねーんだよ!」
「え!?」
姉川さんは突然怒り出した。
一体どうしたというのだろうか。
「あの、姉川さん?」
「はいはい。失礼。ちょっとだけ興奮しちゃったよ。でも、本当に何もなかったの? 次の約束とか」
「明日、霧ヶ峰さんと一緒に出掛けることになりました」
「そ・れ・だ・よ!」
「どうしたんですか?」
「いやいや、何でもないよ。それで、どこに出掛ける予定なんだい? 定番だと映画とかかな?」
「学校に」
「……はぁ?」
「事件の調査のために、休日の学校に出向くことになりました。つきましては、超能力研究所のほうから学校に、調査を認めるように圧力をかけておいていただきたいんです」
「マジで? それは別に構わないけど。君って、そういう『裏から手を回す』系のことをやっちゃう子だったっけ?」
「手段を選んでいる余裕はない状況なので」
「ん~。そうかな? 本当にそうなのかな?」
姉川さんはなぜか愉快そうな声で話した。
その意図が、ぼくには全く理解できなかった。
「いいかい、白雪君。白雪忠君。君にはまだ『これ以上霧ヶ峰にかかわらない』という選択肢があるんじゃないのかな? いいや、答えなくていいよ。私にはすべて分かっている。白雪君の気持ちは、まるっとお見通しだよ」
「何の話ですか?」
「面白い話だよ。さて、学校側への圧力については、こちらのほうで手配しておこう。名目としては『霧ヶ峰が超能力者であることを理由に不当な疑いをかけられた。これを超能力研究所としては看過できない。真相を明らかにする必要があるので、霧ヶ峰自身に捜査をさせろ』といったところかな」
「それじゃあ、それでお願いします」
「承ったよ。それと、霧ヶ峰にも話を通しておく。すでに君に誘われたことで、霧ヶ峰も行く気満々になっているだろうけど、一応『超能力研究所から霧ヶ峰に対し、事件の調査するよう指示が出ている』ということにしておかないと、学校側の認識と齟齬が出来てしまうからね」
「はい、お願いします」
「お願いされちゃうよ。それと、白雪君。明日は頑張りなさい」
「はい」
「色々な意味でね!」
そういって、姉川さんは電話を切った。
さて、準備は万端。
後は明日しだいだ。
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