第7話 オトギリソウ

 薊はスポーツショップに来ていた。バットを選別している。朔空を殺す事に決意してから二週間が経っていた。この二週間で薊は殺人計画を立てていた。どこで殺すか、どう殺すかを常に考え、寝不足になり目の下にはクマができていた。実行日は一週間後に迫っていた。計画内容は、帰り道に襲うという誰でも思いつきそうな方法だ。とりあえず、朔空に何かしらの罰を与えたかった。

 その間、相澤さんはいつも通り、楽しそうに笑っている。もし、朔空、相澤さんの彼氏を殺してしまったら、彼女は悲しむのだろうか。彼女の笑顔を奪ってしまうかもしれないと、葛藤している。しかし、朔空がいる事によって彼女が汚れていってしまう。傷ついてしまう。それを防ぐために奴を殺しとかないといけない。相澤さんのためだ。そう正当化している薊は、実行当日になり、放課後、朔空が一人になるタイミングを見計らっていた。朔空は部活終わりでチームメイトと帰宅をしている。バレないよう電柱の影に身を潜めながら。肌寒さでくしゃみが出そうになるが堪えている薊だったが、そろそろ、目的の場所に近づいて来ている。薊は胸の静まりを収めながら、朔空が一人になり、細い裏路地に入るのを待っている。朔空は閑静な住宅街に住んでいる。そして、家の近くの細路地を抜けて帰っていく。小学生の時からの帰り道を変えていなくて助かったと、下見をしている時に薊はそう思った。振り返っていると、朔空は目的の裏路地に入っていった。バットを両手で握り締め、スイカ割りをする様に上から頭めがけて振り下ろした。感触は意外と柔らかくびっくりした。朔空は頭から真っ赤の水溜まりを作り、動く気配がしない。念の為、二度、三度とバットを振った。月夜に照らされた赤く染められたバットが、薊の手に握られている。完全に動かなくなったのを確認し、薊は深く深呼吸をした。周りに人の気配はない。証拠隠滅の為に朔空を抱え、薊は家に向かった。朔空を、黒いゴミ袋の中に入れ、庭の隅に置いた。お母さんは今日帰ってくるが、夜も遅く、庭なんて確認しないはずだ。薊は夜飯を軽く済ませようとしたが食欲がなく、お母さん用の晩飯にムニエルを作り、大人しく寝る事にした。


 朝、太陽が上るよりも前に目が覚めた。人を殺したが、冷静な自分に何処か安心をしていたが、手には頭を殴った感触が残っている。この感触は消えないなと思い、相澤さんの声を聞き、太陽が上るのを待った。あれから眠る事ができず、朝の電車に揺られていた。いつもの改札で相澤さんを待とうとしたが、もし彼女が朔空の死を知っていた時、悲しい顔を見る事になると思い、先に学校に向かう事にした。一人先に教室にいると、他クラスに人達が騒いでいるのが見えた。話題は聞かなくてもわかった。朔空についてだった。昨日から家に帰っておらず、両親が心配になり、警察と学校に連絡をしたらしい。サッカー部にも話が入り、そこから樹形図のように話が広がっていった。未だ誰も朔空の行方は掴めていないらしいが、時間の問題だ。いつ、細路地を調べられるかがわからない。その現場には血痕が残っている。人が滅多に通らない道だから、気付かれていないだけで、いつ気付かれてもおかしくない。すると、相澤さんが登校してきた。彼女も連絡がないことに不安、心配をしていた。すると、パトカーがサイレンを鳴らしながら、学校に入ってきた。薊はすぐに気付かれたと感じ、教室から走り出し、パトカーのいない、裏門から逃げるように帰宅した。家についてすぐ、朔空の遺体を土の中に隠した。簡易的に埋めた為、時間もかからずに出来た。そして次なる目的の為に祖母の家に向かった。

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