第6話 月見草

長袖一枚では寒い時期に薊は黒色のパーカー羽織、本を買いに休日のショッピングセンターに行った。するとそこに朔空がいた。それも相澤さん以外の女と。朔空に姉がいないのは知っている。では、隣にいる女は誰だ。手も繋いでいる。後ろ姿を見たが確実に相澤さんではない。彼女の髪型は綺麗なロングヘアー。朔空の隣にいるのはボブの女。薊はその様子を記憶する様に後ろから眺め、二人の前に回り込み、建物に隠れ証拠写真を撮った。後日朔空に突き詰める為に。


休日が終わり、学校が始まる日、薊は太陽が沈みかけている校舎裏で朔空に、決闘を申し込んだかのように向かい合っている。

「なんだよ、放課後急に呼びやがってよ。部活に遅れるだろ」

気だるそうにあくびをしながら喋っている。

「昨日相澤さん以外の女と歩いてただろ。あれは誰なんだよ」

朔空は黙ってこちらに顔を向けてきた。俺は話を続ける。

「仲良く手を繋いで、顔もだらしなかったよ。学園の王子様の顔がとろけてたよ」

「誰だっていいだろ。お前には関係ない人だよ。誰と遊んでいようが関係ないだろ」

やっと喋ったと思ったらクズ発言。

「相澤さんと付き合ってるんじゃないのかよ。お前一人っ子だろ。絶対浮気だろ」

「何言ってんの? 付き合ってないわ。あの告白はサッカー部の罰ゲームだよ。だからただの遊び相手。ちなみに言うと昨日一緒に遊んだ子も遊びだよ。他校のマネージャーで試合終わりに告白されたから遊んでるの。すみれとはそろそろ別れようと思ってたんだよ。話が面白くないし、何考えるかわからなし、頭良いのか知らないけどたまに癪に触るんだよ」

俺は途中から何を言っているのか理解ができなくなった。相澤さんが遊び相手?他の女とも遊んでる?この男は狂っている。相澤さんに対してそんな気持ちで付き合っていたのか。薊は朔空に対して睨みつけることしかできなかった事を後悔している。もし、俺が付き合っていたら、ここで俺に出来ることはあるのかと何もできない自分に歯を食いしばった。また、最後の捨て台詞に「後は笑顔が好きじゃなかったな」と笑いながら去っていった。最後の言葉が頭から離れず、やけに帰り道の寒さが身に染みた。

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