第10話 磨きのスゴさ
記憶によりますと、妻のクロスビーが何か得体のしれない動物にエンジンルームの配線をズタズタに嚙み切られて、スズキのキャリアカーがわざわざ取りに来てくれて運ばれていったのが、去年の5月の27日のことでありました。
1年点検を受けて、洗車してカバーをかけて車庫に入れたのが、2月の26日で、それ以来車庫に入ったままになっていましたので、その間に何者かにやられてしまったわけです。
それから時間だけが静かに経過していって、あきらめ始めていた10月の13日に、突然クロスビーが修理を終えて戻ってきたのでした。この青天の霹靂的な出来事は、とても嬉しかったのですが、またメカ的には完ぺきに直っていて、前のように元気に走ってくれるようになっていたのですが、問題点がありました。
それは塗装面やガラスに、何やら得体のしれない汚れがついていて、手に負えない状態になっていたことでした。
ぱっと見はきれいに見えて艶もあって、汚れなんかわからないのですが、手で触るとザラザラしています。一番困ったのがフロントガラスで、ワイパーの動きを邪魔するというか、ワイパーの動きがぎこちないというか、前が見にくいというか、そういう状態ですので困ってしまって、またスズキに持っていくのも面倒だったので、自分で何とかしようと思いました。また、どうせ洗ったら落ちるだろうと高をくくっていたのでした。
さっそく、次の休日に、ちょっと強力な「プロスタッフ」の水垢落としシャンプーを買ってきて、念入りに洗車しました。
そうしたら、あっという間にザラザラが消えて、つるつるの手触りに戻ったので、
「ああよかった。」
ワシは安心して、洗車を終えてふき取りをして・・・・。
でも乾いたら、また元のザラザラになる。これは困った。とにかくフロントガラスだけでも何とかして使える状態にしておこうと、禁断の有機溶剤で拭き取ったりしたのですがまったくきれいにならない。ザラザラが落ちない。
そうだ。人力がだめなら洗車機にかけてみようと、いつものガソリンスタンドに持っていったら、名人が曰く。
「これは、洗車機じゃあ落ちないと思うよ。」
それから名人は、タバコの側のセロファンを指に巻いて、何やらされていたみたいですが、
「たぶんこれは塗装のミストじゃねえ。自分で落とそうとしてもダメじゃし、下手を
すると塗装もガラスも台無しになるので、私らあも手を出せんのんよ。悪いことは
言わんので、今すぐ修理した店にクレームを入れんさい。」
名人は近所のガソリンスタンドの店長さんなのですが、パンクや故障で困ったときに泣きついたら、いつも的を得た対応やアドバイスをしてくれるので、とても助かっているのです。お金も取らずにいつも親切に教えてくれるので、ワシはこの人をとても信頼しているのです。
ワシはさっそく電話を入れました。
それから来てもらうのも悪いので、店舗までクロスビーを持っていこうとしましたが、セールスさんがこちらに用事があるので、またまた取りに来てくれることになりました。
せっかく5か月ぶりに戻ってきたクロスビーは、たった1週間居ただけで、また行ってしまいまして、代わりに青いワゴンRが置いてありました。
その後セールスさんから電話があって、
① クロスビーは専門の業者に磨きに出し、責任をもってきれいにします。
② 原因は工場内に止めてあったクロスビーに、工場内で吹付を行っていた他
車のアンダーコートが飛んで付着したことが原因でした。
③ ついでに電装製の燃料ポンプのリコールが入ったので交換してからお返し
しますので、部品が入るまでしばらく待ってください。
という趣旨の連絡が丁寧に入りました。ワシは
「もちろんOKです。よろしくお願いします。急ぎませんので。」
と言って電話を切りました。
それから、しばらくの間お世話になる代車のワゴンRをざっと洗車して、掃除機かけて内装を掃除しました。
2週間後、連絡が入ったので、また来てもらうのも気が引けたので、ワシは、すっかり馴染んで気に入った代車のワゴンRに乗って、はるばる60km離れた店舗にクロスビーを取りに行きました。そしたら・・・。
そこに「新車」がありました。正確には「新車のようにピカピカになったクロスビー」がありました。触ってみたら、ルーフもボンネットもガラスもツルツルで付着物や汚れが皆無の状態のまさに新車のようにピカピカしていました。それから、5年も経って少々色あせてきた未塗装の黒のバンパー下部やサイドモールやフェンダーモールもなぜか真っ黒に戻っていて、ワシはたいそう驚きました。
ワシははっきり言って、キープライドさんやカービューティプロさん等のコーティング屋さんの実力を見くびっていました。というか高いお金を払ってそんなことしなくても自分でやれば同じようなものだと思っていました。
でも今回のことで、はっきり言って「レベル」が違う。プロの仕事は「レベルが全然違う」「ワシごときでは足元にも及ばない」ことを痛感しました。
ワシはピカピカになったクロスビーに乗って、家に帰りました。青黒のツートンのクロスビーがとても美しくて、とてもいい気分でした。
今回の件で、ワシはプロの仕事はすごいものだと改めて感心しました。
また快くタダで磨きに出してくれた販売店の方々には頭が下がる思いでした。
それから、たぶん磨きは高価なので赤字になったと思うのですが、「うちのミスです。」と即座に対応してくれたことに感謝しています。
というわけで、「磨きの凄さ」は十分に分かったのですが、あとで値段を聞いてびっくらこいたので、ワシは自分で自分のクルマを磨きに出すことは一生ないと思います。
追伸
それで思い出したのですが、うちのフォレスターは購入時に無理やりコーティングすることになっていて、たしか5万円ぐらい払って泣きそうになったのですが、11年目を迎える今でも、ピカピカツルツルなのはそのおかげなのでしょうかねえ。いつもスタンドで洗車機で洗ってもらっていて、自分でワックスかけたことなんか一度もないんですけどねえ。ホントだよ。
新・クルマについてのエトセトラ 詩川貴彦 @zougekaigan
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