第3話 心の声を聞いてくれた君

それからというもの、谷戸がいないときに私に嫌がらせをしてくるようになった。私は自分の意見をしっかり言える人じゃないからそのままにしていた。 ある日、下駄箱でいつものように隠された靴を探してると、「おい、瀬川。なにか探しているのか?」と怪訝そうな顔で谷戸に聞かれた。私はなんでもないよ、と小さく呟く。谷戸は、「だから瀬川は…。瀬川は優しいやつなのにな…。」と小さく言った。私はびっくりして目を見開く。「お前は優しい奴だろ。俺の妹のときだって、迷子にあんなに優しくしていた。そんな奴がズル休みしてまで他人と関わろうとしない。」谷戸は真っ直ぐな目で言う。「それなのに、アイツらと来たら、憧れてるやつに近づくやつらを全員、嫌がらせして…。」とため息をつく。こんなに真っ直ぐで嫌がらせをみたときに一緒に悲しんでくれる谷戸をみていると、私はうれしくて、でも嫌がらせは悲しくて泣いてしまった。「いつも、私は人に優しくしてると思う。なのになんでこんな目に合うんだろうって。」私の頬に涙が流れる。「お願い、助けて。」心が勝手に口を動かした。「おう。」と少し曇った表情をしながら、でもすごく決意に動かされているような表情で教室に谷戸は向かった。私はそれを追いかけるように、でも心は追いつきたくない、いじめてくる奴らが怖いという思いもあった。しかし、谷戸の後ろ姿をみていると、いかなきゃと思った。

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