第10話
オーキューの接待なんて期待してなかったんだけど~。
まさか檻に入れられるとは思わなかったわ。
高貴なるアタクチが下僕以外に抱っこされるわけもなく。当たり前でしょ、何触ったかわかんない汚い手でアタクチの美しい毛並みを汚すなんて。
サイショーの後ろについて部屋に案内された。そこまでは良かった。
サイショーが「神獣様、しばらくお待ちくださいませ」と出ていくと、ゴエーキシがやってきてアタクチを檻に入れたのだ。抵抗しても良かったんだけど、油断させようかと思って仕方なく檻の中にいる。でも、そろそろいいかしら? 飽きたわ。
というかアタクチを神獣扱いしてるなら檻に入れるのは良くないんじゃない? もしかしてペット扱いなのかしら? アタクチの下僕にしてくださいと平伏するならまだしも、アタクチをペットにしようなんて度し難いわね。
さっきから部屋の窓ガラスをガンガンとボスガラスが叩いてうるさい。あんた、そんなことしてたら見つかるわよ。
「チュッ! ジョッゼフィーヌ様!!」
「変なスタッカートをつけないでちょうだい」
最近見ていなかったネズミ達がどこからか現れた。
「すぐに鍵を見つけてくるっチュ~」
「あら、その必要はないわ。こんなダサすぎる檻なんてすぐ出るわ」
ネコは液体ってあいつら知らなかったのかしら。
アタクチのしなやかな体は檻の隙間を難なく抜ける。やだ、なんか汚れが付いちゃったわ。
ネズミ達は拍手をして、アタクチの毛をブラッシングしてくれる。なかなかうまいじゃない。
そのうちの一匹が窓の鍵を開けてくれたようで、ボスカラスは部屋の中に文句を垂れながら入ってきた。
「はァ、檻に入れるカァら焦ったぜェ」
「こんなの余裕よ。見張りもいないし、窓のある部屋だし。さ、第一オージのとこに行くわよ。ボスカラス、あんたアタクチを乗せて飛びなさい。廊下から行くとバレるから空から行くわよ」
「えぇェ、いやお前重いカァら無理だァ」
「はぁ、高貴なるレディに重いなんて言うとか。小さい男ね」
「うるっせェ! オレの背中よりお前大きいだろうガァ!」
「これ使うっチュウ」
「これにジョッゼフィーヌ様が乗るっチュウ!」
「紐を持って飛ぶんだチュ」
ネズミ達がどこからかカゴを運んでくる。カゴの両端には紐が結ばれていた。
「あらいいわね。ありがとう。さぁボスカラス、さっさと行くわよ」
「ハァ、オレは便利な乗り物じゃないんだけどなァ」
「アタクチ、一回空を飛びたかったのよね!」
カゴにさっさと乗り込んだアタクチを見てボスカラスはため息を深々と吐き、観念したように紐を掴んで飛び上がった。
アタクチ、今空を飛んでるわ!! 見て! 人がゴミの様だわ!!! なんちて。そこまで高さでてないからゴミには見えないけど、一回口に出してみたかったのよ。
「第一オージの部屋はあそこだァ」
「ん? あの手前の部屋のバルコニーに誰かいるわ」
「あぁ、ありゃあ浮気相手だァ。別室で軟禁中なんだァ」
「ふぅん。なら、あそこから行きましょ。アタクチの下僕から浮気したんだから、相手はさぞかし素晴らしい人間なんでしょうね!」
浮気相手の部屋に近付いたところで、アタクチはカゴから勢いよくジャンプする。
「ぎゃあっ!」
ふぅ、こいつの頭に着地は成功よ。先手必勝! 奇襲攻撃は戦争の基本ってアランが言ってたわ!
ん? アランって誰かしら? んん?
まぁ、今はいいわ。
それにしてもこの娘、髪の毛が全然手入れされてないわね。アタクチの下僕の頭に落ちようものなら、髪がサラッサラすぎてアタクチ滑っちゃうわよ。
こいつの髪は梳かしたのか??くらいだから髪の毛に引っかかって着地できたわ。
「なっ何!? 何か降ってきたぁ?」
浮気相手が頭のアタクチをどかそうと暴れるので、優雅に床に着地する。
あんた、アタクチに触ろうなんて数万年早いのよ! 生まれ変わって出直してきなさい!
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