第2話

 「……っつ……いてて」まだハッキリしない意識の中、激しい頭痛によって幸生はふと目が覚めた。


 焦点が合わないボヤけた視界をなんとかしようと、目を無造作に擦りながら上体を起こし周囲を見渡した。


 6畳一間の部屋、窓際にはパイプ製の安いベットが置かれ、窓にはブラウンのカーテンがかかっている。床には無造作に脱ぎ捨てられたスーツが落ちている。部屋の中央には木製の足の低いテーブルがあり、卓上にはチキンの食べ残しが転がっている。


 幸生は自分の記憶を辿る。

 (たしか仕事から帰って、飯食ってて……それで……)


 幸生は慌てて自分の体を触り、思いっきり頬をつねる。

 「痛い……生きてるよな……」


 (昨日の胸の痛みはなんだったんだろう……気胸か?)


 ふと壁に掛けてあった時計を見ると、針は9時10分を指していた。


 「やばっ! 遅刻っ!」


 案の定、携帯の着信履歴は上司と後輩からのもので埋まっていた。急いで課長に電話すると、「いい年して寝坊とは何事かっ!」とどやされた。馬鹿正直に言うんじゃなかったと後悔しながらも、幸生はバタバタと支度を済ませ、自宅を飛び出た。


 

 ◇


 

 幸生は会社へ向かう電車に乗るため、駅のホームの階段をのぼっていた。


 課長にまたネチネチと嫌味を言われるなと、会社についてからのことを考えながらボーッと階段を登っていると、幸生の前に短めのスカートを履いたOL風の女性が目にはいった。


 (あれ……これ、もうちょっとで……見えそう……もうちょっと!)


 無意識に幸生は視線を奪われ、そう念じていると、スカートの後ろの裾が不自然に少しめくれて真っ白なパンツがチラッとのぞいた。


 驚いた幸生は咄嗟に目を逸らした。

 その瞬間、突然幸生の頭に鋭い痛みが走った。

 

 「う゛っ!!」

 

 思わず声にならない悲鳴をあげると、目の前の女性は驚いて振り返ったが、すぐにまた前を向いて階段を登りはじめた


 (なんだよこれ? 働きすぎかな……今度休みに病院でもいって診てもらうか)

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