第47話 いつもの場所
「水瀬さん、お待たせ」
クラスメイト達の誘いを上手いことかわして、岡田に押し付けて、前回の場所へと足を運ぶと、水瀬さんがお弁当を開けずに俺を待ってくれていた。
わざわざ先に食べずに待ってくれてる辺り、その何気ない優しさが実に嬉しく思える。
「いえ、私も座ったばかりなので」
「そっか。じゃあ、食べようか」
本日も彩りの良い、美味しそうなお弁当の水瀬さんに対して、俺は前日に買っておいた惣菜パンや菓子パンがメインであった。
明日はおにぎりにでもしようかと思いながらお茶に手をかけると、水瀬さんが俺のお昼を見て首を傾げる。
「蒼井くんは、今日もパンですか?」
「食べやすいからね。水瀬さんのお弁当は相変わらず美味しそうだね」
「今日はいつもより早めに起きれたので、少し頑張ってみました」
確かに、冷凍でない春巻きとかあるし、流石は水瀬さんだ。
まあ、冷凍食品も手軽で良いけど、水瀬さんの手作りお弁当というのは、言葉だけでも美味しいのが確定していて素晴らしいものだと思う。
「春巻きとか凄く美味しそうだし、本当に水瀬さんは料理上手だね」
「そ、そんな事はないですけど……えっと、お一つ食べますか?」
「良いの?」
「はい、自信作なので蒼井くんにも食べて貰えたら嬉しいです」
……この子は天使なのだろうかと、思えるような眩しい笑顔。
美味しそうな春巻きとその笑顔に抗える訳もなく、俺は一つ貰うと食べてから思わず言葉にしていた。
「美味しい……」
これまで食べたどんな春巻きよりも美味しいそれは、俺の水瀬さんへの好感度の補正を抜きにしても最高に美味しく出来ていた。
「凄く美味しいよ、水瀬さん」
「それなら良かったです……」
明らかにホッとする水瀬さんだけど、進めておいて少し緊張してるのが水瀬さんらしくて凄く可愛い。
「お世辞抜きで凄く美味しかったよ。本当にありがとう」
「いえ。私も男の子には、食べて貰ったことがなかったので、喜んで貰えて嬉しいです」
そうはにかむけど、是非とも俺以外には作らないで貰えると嬉しいと思いつつも、流石に今の段階で言う訳にもいかないのでぐっと堪える。
しかし、これの後に食べる惣菜パンや菓子パンは悪くないのだけど、どうしても水瀬さんの手作りには劣ってしまうので、何とも言えない気持ちにもなった。
まあ、恐らく水瀬さんが買ってきてくれたというのなら、補正で負けず劣らず食べられたけど、その辺は俺も現金なようでして。
何にしても、ゆっくりと食べる水瀬さんの様子を見ながらのお昼は最高に贅沢な時間なので、是非とも今後も水瀬さんとお昼を共にしようと誓ったのは言うまでもないだろう。
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