第38話 本屋さん

喫茶店で軽く軽食を済ませてから、残りの時間で近くのお店を見て回っていると、自然と近くにある本屋さんに足を運んでいた。


そこまで大きなお店ではないけど、入りやすい立地なのでそこそこ人が居るけど、混み合ってるような混雑ではない適度な人の入り具合なので問題はなかった。


「お、新刊出てる」


思わず手に取るのは、マイナーながらも王道な展開の少女漫画。


俺の気に入ってる作品の一つであった。


「蒼井くんもそういうの読むんですね」

「まあね、あんまりジャンルに拘ってないから、手広くは読んでるかな」


メジャー、マイナー問わずに、気になった作品は読んでしまう傾向にある。


小説でも、純文学から大衆文学、長編短編、推理小説、ミステリー、青春、恋愛、SF、ホラー、あとは携帯小説とかネット小説系もジャンル問わず読むかな。


漫画も、少年漫画、少女漫画、青年漫画にレディース向け、バトルにシリアス、日常、ほのぼと何でも好きなのを読むので本当に好み次第になるかも。


「凄いですね、私は漫画はあまり読まないので……」


そう言いつつも興味はあるのか近くの本をチラチラ見てる水瀬さん。


分かりやすくて可愛いものだ。


「良かったら貸そうか?この作品だったは実物の本を全巻持ってるし」

「えっと……では、休みの日にお借り出来れば……」


学校に漫画を持っていくのは校則違反なので、休みの日に貸し借りするというのは水瀬さんらしい。


というか、さらりと次の約束をしたようなものなのだが……本人としては無自覚なんだろうなぁ……うん、天然とは恐ろしいものだ。


「じゃあ、次の時に何冊か持ってくるよ」

「ありがとうございます」

「水瀬さんは何かオススメある?」

「そうですね……私はこのシリーズが面白いと思います」


そう言ってオススメされたのは、まだ読んだことの無い作品だった。


「いいね、じゃあこれ買おうかな」

「あ、私持ってますのでお貸ししますよ」

「本当に?ありがとう、水瀬さん」


本の貸し借りという名目で、また学外でも水瀬さんと会える口実が出来て、俺としては本を買う以上の収穫のあった本屋さんだったけど、気持ちとして新刊の少女漫画と気になってた雑誌を購入して売上に貢献しておく。


電子書籍で買うこともあるのだけど、やはりまだまだ実物で読む方が楽しい場合もあるので、また水瀬さんと来たいものだ。


なお、水瀬さんも本を買っていたけど、こっそりとまるで隠すように別の本と一緒に少女漫画を買っていたのを俺は見逃さなかった。


俺も読んだことのあるその作品は、電子でしか俺は持ってないので、水瀬さんに貸せないのが少し残念だけど、真面目な水瀬さんはこれまでその手の漫画なんかを、気になっても読めてなかったのだろうと思うと、高校デビューに近い感じがして何とも微笑ましかった。


家の方針で禁止されてる訳ではなく、おそらく本人が強がってか、あるいは買えずに居たのだろうけど、俺と話を合わせるという言い訳……もとい、大義名分も出来たのだろうし、そういう意味で貢献出来たのなら嬉しいかもしれない。










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