第37話 ちょっと軽食

暫くすると、手際よく全ての作業を終えたマスターが注文したものを持ってくる。


俺はコーヒーとホットドッグ、水瀬さんは紅茶とパンケーキだが、水瀬さんのパンケーキはふわふわに仕上がっていて美味しそうだ。


「じゃあ、少し遅いけどおやつを兼ねたお昼……軽食にしようか」

「そうですね」


きちんと手を合わせて頂きますを二人でしてから、早速俺はコーヒーを、水瀬さんは紅茶に手を伸ばす。


まずは飲み物に行くとは、思わず二人で微笑みあってしまうけど、コーヒーを一口飲んで少し驚く。


マスターの様子から、かなり良い店であることは分かっていたけど……正直、これまで飲んできた中でも上位の美味しさのコーヒーだった。


「美味しい……」


水瀬さんの紅茶も当たりのようで、水瀬さんは嬉しそうに微笑む。


そんな様子にホッコリしつつ、ホットドッグに手を伸ばすけど、こちらも悪くない。


サンドイッチと迷ったけど、今度来たらサンドイッチを頼もうと思っていたので、次来た時もこちらを選んでしまいそうになるよう迷うくらいには美味しかった。


やっぱり定番メニューのある店は強いね。


オムライスとか、メイン系も気になるし、また来ようかな。


「美味しいね」

「ですね、私もパンケーキはたまに作るんですが、ここまでふわふわには出来ないので凄いです」

「水瀬さんの手料理か……今度食べさせて欲しいかも」

「え……?あ、えっと……」


思わず出た言葉だったが、水瀬さんはそれにかなり動揺してしまう。


少し踏み込み過ぎただろうか?


「えっと、でも、私まだまだなので……蒼井くんに出せるレベルかどうかは……」


やんわりした断り……ではないな。


普通ならそちらが濃厚だが、この子場合はむしろ本心からそう思ってるのだろう。


俺に手料理を作るのが嫌なのではなく、自分の未熟さがあって俺に出しても大丈夫か不安といった所かな?


「そっか、じゃあ水瀬さんが出して良いと思えるようになったら振舞って欲しいかな。個人的には上手くなるのに協力したいけどね」

「きょ、協力……?」

「味見役とかね。でも、俺としては水瀬さんが作ったものなら全て最高のご馳走に思えるとは思うな」


そう言うと恥ずかしそうに黙ってしまう水瀬さん。


なんていうか、赤面顔を出させたい俺のSっ気がなくも無いけど、イジメたい訳ではないのは分かって欲しいところ。


可愛すぎる水瀬さんを見てると、どうしても歯止めが効かなくなる時があるのだが、まあ、それでも水瀬さんが心底嫌なことは絶対しないと誓ってるしその辺の線引きは出来てるつもりなので、俺は水瀬さんの反応を楽しみつつコーヒーとホットドッグを平らげるのだった。







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