第28話 ちょっとした寄り道
「あ、水瀬さん。この小物も可愛いよ」
「わぁ……可愛い……!」
せっかくなので、女の子向けのお店を中心に回ってるけど、雑貨店で可愛い猫の小物を見て嬉しそうな表情を浮かべる水瀬さんを見ると間違ったチョイスでなかったと少し安心する。
「でも、蒼井くんがこういったお店詳しいのは知りませんでした」
可愛いものをひとしきり堪能してから、ふと疑問になったようでそんな事を尋ねてくる水瀬さん。
「友達から聞いてね」
「そ、そのお友達は……女の子ですか……?」
少し不安そうな表情を浮かべる水瀬さんに、俺は何と答えるか少し考えてから、優しい笑顔で答えた。
「うん、ただのクラスメイトだよ。こうして実際に女の子とお店に来たのは水瀬さんが初めてかもしれないね」
「そ、そうなんですか……」
どこか嬉しそうに笑みを浮かべる水瀬さん。
実際、クラスメイトの女子とは仲良くはなっても、こういったお店に来ることはほとんど無いし、心から楽しんでいるのも含めて水瀬さんとが初めてと言えた。
女の子と二人きりでお出かけ……というのも実際よくよく考えなくても初めてだし、そういう意味では水瀬さんに俺は色んな初めてを捧げてるのかもしれない。
まあ、そんな意味深な事は言葉にしないけどね。
「でも、水瀬さんが一緒で本当に良かったよ。興味はあっても男だと入りにくいし、それにどうせ来るなら水瀬さんと来たかったしね」
「そ、それってどういう……?」
「そのままの意味だよ。水瀬さんと二人きりでこうして出掛けられて幸ってこと」
「はぅ……」
俺の言葉に顔を赤くして俯いてしまう水瀬さん。
少しストレート過ぎたかな?
「お、水瀬さん。このキーホルダー可愛いよ」
「ほ、本当ですね」
何とか落ち着いた頃に、ふと目に止まったそれを水瀬さんに示すと、水瀬さんも興味を持ったようでまだ少し赤い顔をしながらも反応してくれる。
そうして、何件かお店を水瀬さんと巡るけど、学校以外での色んな表情を見ることが出来て、俺としては現時点だけでもかなり満足だった。
早起きは三文の徳と言うけど、早く待ち合わせ場所に来るだけでこうして水瀬さんと色々見て回れるのだから、待ち合わせの日の早起きは実に有意義と言えた。
それにしても、水瀬さんは本当に可愛いものが好きなんだろうなぁ。
見て回っていても、綺麗なものにも反応するけど、可愛いものを見た時の反応がより嬉しそうに思えた。
俺としても可愛いものは好きなので、感性という点でも俺と水瀬さんは相性が良いのかもしれない。
それを知れたのも今日のお出かけを誘った事によるものだし、緊張はしたけど勇気をだしてみて正解だったね。
うん、良かった良かった。
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