第27話 待ち合わせの先客
翌日、気合いが入りそうになる私服をなんとか落ち着かせて、約束の時間よりもかなり早く待ち合わせ場所に向かうと、そこには既に水瀬さんが待っていた。
(まだ一時間以上も待ち合わせには時間あるのに……いつから居るんだろ?)
ソワソワと時計を見てから、自身を落ち着かせるように深呼吸をする水瀬さん。
可愛い私服姿にトキメキつつも、今近づくと驚かせそうなので、静かに時を伺いながら近くに行くと、水瀬さんがポツリと呟く。
「大丈夫……まだ時間まであるし、大丈夫……」
自分に言い聞かせるように、なんとか落ち着こうとしてるのは良く分かった。
「二時間前から来てるし、服も大丈夫なはず……大丈夫だよね?変じゃないかな……あ、き、気合い入りすぎって、引かれたら……あわわ……」
すぅ、はぁ、と深呼吸をする水瀬さん。
二時間前から来てるのか……それは悪いことしたな。
それにしても、気合い入りすぎって引かれることを懸念するくらいには楽しみにしてくれていたのだと分かると嬉しすぎてついつい笑みを浮かべてしまう。
(もう少し見てたいけど……流石にこれ以上待たせるのも悪いか)
少し迷ってしまうけど、私的なことよりも水瀬さんの楽しみの時間を増やす方が懸命と判断して、分かりやすく水瀬さんに近づいていき、声をかけた。
「水瀬さん、お待たせ」
「い、いえ……私も今来た所なので」
何とか取り繕ってそんな事を言う水瀬さん。
先程、声に出ていた部分は聞かれてるとは思ってないだろうし、待ち合わせまでまだ一時間以上も時間があるのだが、水瀬さんを待たせてしまったのは事実なので俺は後で何かしらお詫びをしようと思いつつ、水瀬さんに言った。
「そっか。なら良かった。実は俺、今日水瀬さんとカラオケ行けるのがすごく楽しみだったんだよね。まだ時間あるし、その前に何ヶ所か別の所も寄っていいかな?」
「はい、大丈夫です……」
同じ気持ちだと分かってパァと顔を明るくしてから、慌てて何とか取り繕って頷く水瀬さん。
あまりにも分かりやすいその可愛い様子に一気にテンションが上がってくるけど、まだまだ今日は始まったばかりなので何とかセーブしようと俺も自身を落ち着かせる。
何にしても、水瀬さんと今後待ち合わせする際は、二時間以上前から待ち合わせ場所に来るくらいはした方がいいのかもしれないと脳内メモに記しつつも、水瀬さんと並んで歩き出す。
にしても……私服姿の水瀬さんも凄く可愛い。
これだけでも、本当に今日は来てよかったと心底思えるのだから、我ながら単純なのかもしれない。
まあ、可愛いものは可愛いし、尊いものは尊いので仕方ないよね。
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