第15話 大物の気配
「おーっす。早いなー」
「岡田もね」
水瀬さんとの楽しいやり取りをしてから、チラホラと人が来始めると、水瀬さんが読書に行ってしまったので、俺も自分の机であれこれ考えつつ読書をしていると、意外なことにそこそこ早い時間帯に岡田が登校してきた。
朝に強そうなタイプには見えないので、少し驚いていると、岡田は席に鞄を置いてから俺の元に来て前の空いてる席に座ってダレはじめる。
「うぁー、寝みー」
「その割にはお早い登校で」
「今朝早く来れば面白いものが見れるかもしれないって、俺の勘が告げてたから来たんだが……早起きなんてするもんじゃねーなー」
なるほど、その勘の通りに更に早く起きてれば俺と水瀬さんの様子を目撃してたかもしれないな。
初日の様子といい、すんなりと人の輪に入り込めるフットワークといい、実はこいつは大物なんじゃないかと思わさられるような様子のクラスメイトに感心しつつも、俺はパタリと本を閉じて言った。
「部活の朝練とか絶対無理なタイプだろ?」
「あんなの人間の所業じゃねぇよ。朝から体動かすとかマゾすぎて俺には無理だわ」
「その割には運動部っぽい顔をしてるよね」
「まあ、実際運動部だったしな。高校でも野球部入ることになりそうなんだよなぁ……」
乗り気でない様子だけど、野球部に入るのが強制的に確定してるような物言いの岡田。
「ポジションはどこなん?」
「ピッチャー」
「そりゃまた凄いこって」
「レギュラーにはなりたくないもんだが……それも無理なんだろうなぁ……」
真面目に野球してる人からしたら、かなりアレな発言だけど、岡田という名前と野球とピッチャーというワードで俺はその根拠が何となく思い当たったので内心で少し驚く。
(確か……中学最強の野球の名門校で投げてた投手だったかな)
情報としては知ってても、試合自体一度しか見たことがないのですぐにピンとは来なかったけど、恐らく目の前の岡田は中学最強の野球部で投げてた本物の天才さんなのだろうと予想出来た。
中学生離れした、プロ並みの豪速球と巧みな変化球でかなりの有名人のはずだけど、そんな天才がウチの高校に来てたとは驚きだ。
この学校の野球部はそこまで強豪とは言えないし、本当にやる気があるのならもっと上の所から引く手数多だろうに……まあ、深くは聞くまい。
「でも、バッティングセンターで遊ぶのは好きだろ?」
「おうよ。昨日もホームランに当ててやったぜ」
人脈という点では、人の輪に入りやすい岡田は友人として悪くないし、人にはそれぞれ事情があるのだろうから、本人が話さないなら聞くこともないと俺は気付いたことを悟らせないように平然と駄弁る。
案外、俺が気づいたことに岡田も気づいてるかもしれないが……まあ、別に隠し通す必要もないし、俺は俺でやる事があるので、岡田とは普通に友人として付き合えればいいだろう。
俺の興味は別にあるしね。
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