第13話 綺麗好き
水瀬さんの些細な反応を楽しんでから、二人で教室を軽く掃除したりするけど、水瀬さんの手際の良さと丁寧な仕事ぶりには凄く驚かされた。
「水瀬さん、綺麗好きだったりする?」
「意識したことはないですけど、確かにお掃除は好きですね」
聞けば、一通り家庭的なスキルはマスターさせられてるらしい。
料理も掃除も、洗濯も、裁縫も何でもござれだそうなので、本当に家庭的な女の子のようだ。
「蒼井くんも手際良いですよね」
「そう?」
「はい。それに、男子で真面目にお掃除する人初めて見たかもしれません」
それはそれは……大変な学生時代だったようで。
いや、今も学生時代だけど、確かに小中の掃除の時間を真面目にやる男子は……居ないことはないだろうけど、面倒がる人が多いのは事実だろう。
女子も面倒がってやらない人も居るし、男子だけではないだろうけど、俺としては掃除自体は嫌いじゃないのでなるべく真面目にやるようにはしていた。
「お喋りして時間潰す人が多かったので、注意するのも大変でした。でも、手抜きをするくらいならやって貰わない方が……私だけでやる方が早く終わるし、綺麗になるので、凄く迷いました」
注意する時間で1人で片付ける方が早いとは分かっていても、掃除の時間は班で掃除をするもの。
自分一人でやるのは違うと思いつつも、そうした方が早いという矛盾に水瀬さんは何とも困ったような表情を浮かべていた。
「そっか。まあ、でも水瀬さんが正しいと思うよ」
「そ、そうですか?」
「うん。学校生活は集団行動だからね。個々に役割を持って動くことの基礎くらいはそこでも学べるから、そうあるべきなんだろうけど……まあ、その意味を知らない人が多いからね」
社会勉強という意味では、確かに職業によっては学校で学んだことが活かされないことも多いけど、大半の人が進むであろう普通の仕事では、臨機応変な行動が求められるし、そういった柔軟な思考……『考える力』の土台には学校という舞台はうってつけなのだろうけど、そう理想通りいかないのが現実なので仕方ない。
でも……
「水瀬さんがやってる事は正しいし、誰かに非難されるような事じゃないと思うよ。少なくとも俺は水瀬さんの考え方は正しいと思うから」
「……蒼井くんは、本当に不思議な人ですね」
くすりと微笑む水瀬さん。
彼女からしたら、ど真面目なこんなセリフに肯定意見の出る男子が珍しいのかもしれない。
まあ、好感度のために言ってる言葉なのは否定しないけど、本心でもあるので別に疚しい気持ちはなかった。
少なくとも、水瀬さんの安堵したような笑みを見れたのは、悪くないしね。
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