第2話 彼女との出会い
改まるつもりはないけど、自己紹介をば。
家庭環境はそこまで良くもないけど、割と落ち着いてきた今日この頃、入学式の日に俺は彼女と出会った。
そりゃ、クラスメイトだし、入学式に出会うのは当たり前と言えるけど、俺が最初に目にしたのは彼女が外国人に道を教えている所だった。
英語がそこそこ得意なのか、流暢に説明する彼女が同じ制服を着ており、同じ学校の生徒なのだろうと関心しながら見ていると、その後に彼女は迷子を見つけてお母さんの元まで送り届けていた。
こんな朝早くに迷子とはこれ如何に?
なんて思ったけど、どうやら徒歩で行ける圏内にある保育園に送る最中に、お母さんが立ち話をしはじめて、少し目を離したスキに猫を追って迷子になったそうだ。
何故知ってるのかって?
いや、流石にスルーするのも何だったし、子供を探してそうな親御さんを見かけたからついでに案内したのだけど、嬉しそうに抱き合う親子を見ると良いことをした気になって少し嬉しくなる。
「ありがとうございました。えっと……同じ学校の方ですよね?」
親子の再会を我がことのように喜んでから尋ねてくる彼女。
「ええ、まあ。今日入学しますね」
「あ、じゃあ、私と同じですね」
「そうなんですか。じゃあ、自己紹介を。俺は蒼井春斗です」
「水瀬雪菜です。よろしくお願いしますね、蒼井くん」
これが水瀬さんとのファーストコンタクトだった。
流れで一緒に学校まで行くことになったのだけど、話してて思ったのは彼女が凄く真面目だという事だった。
「あの人たち、同じ制服ですよね?上級生でしょうか?学校前にコンビニで雑誌を立ち読みなんて、ダメだと思います」
コンビニの雑誌コーナーで漫画雑誌を立ち読みする生徒たちを見て、眉をひそめてから注意に向かったり。
「不純異性交友です!」
と、路地裏で朝からイチャつく同じ学校の生徒に赤くなりつつも注意喚起したりと、実にアクティブに動き回る彼女は、これまであまり見たことのないタイプの女の子でこの時点で俺はかなり興味を持っていた。
まあ、無論上級生や不良相手に注意に向かうなんて危ないけど、その辺は今日は俺が居たしお互いの折り合いをつけつつ納得出来る妥協点をさり気なく持たせることで円満に解決したけど、この子は毎回こんな風に人と衝突してるのだろうかと少し不安にもなった。
「水瀬さんは真面目だよね」
そう言うと彼女は少しムッとしてから言った。
「正しいことをしてるだけです。真面目なんかじゃないです」
その様子を見て、数秒考える。
どうも短い時間の中で見えた性格は、正しいことを貫こうという意思が見えて、同時に自己をあまり顧みない危うさもあって、総合的には放っておけないという結論になる。
「そっか、確かにそうかもね」
「そうです。ただ、正しいことをすると皆嫌がるので、たまにブレそうにもなります……」
おそらく、幼少からこの性格なので周りと馴染めなかったのだろう。
どこか寂しそうなその様子を見て、俺は珍しいことに自分から行動したくなっていた。
「じゃあ、ブレないように俺が支えてあげるよ」
「え……?」
思わず立ち止まって唖然とする水瀬さん。
変なことを言っただろうか?
「いや、こうして会えたのも縁だし、友達になって欲しいなってさ」
「あ、ああ、そういう……うぅ……勘違いして恥ずかしいです……」
ふむ、もしかして告白でもされたと勘違いしたのだろうか?
それにしても偉く可愛い反応だけど……演技とかでないのは長年の経験で分かるので、本当に対人への体勢が低いのかもしれない。
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