林さん…ですよね。
大輔のおかげでいい買い物ができた!もう夕方の6時。
サッカーボールを買って、その後はゴツゴツした棒みたいなヤツを買った。背中に押し当てると運動とかマッサージになるらしくて、テレビで流行ってるらしい(大輔情報)。値段は1500円…したけど、大輔が最近の若者は大体持ってるよな~って言っていたから背伸びして買ってきた。きっと1か月後には場所も分からなくなって存在自体も忘れてるんだろうけど。南無阿弥陀仏。
その後俺たちはゲームセンターに行ってドバドバお金をつぎ込んだ。俺はゲームをすることがないから、下手くそでUFOキャッチャーもポケモンのゲームも太鼓の達人もできなかった。けど、最近ハマっているゲームのキャラクターのキーホルダーが取れて嬉しかったからたくさん挑戦してしまった。すっごい小さいヤツで、100円ショップにでも売ってるんじゃないかっていうレベルだ。そのおかげで、両替した10000円札がなくなった。盗まれたのではない。お店に感謝されないといけないくらいゲームセンターに得をさせてしまった。結局取れたものはちっちゃいゲームのキーホルダーと、哀れんだ大輔からのお裾分けのうまい棒5本だけだった。大輔は俺の2倍の金額払ってうまい棒とチョコと大きなリュックサックと、マリオの人形と可愛い少女のフィギュアを取っていた。すげぇ。
それで3時間くらい満喫した俺たちは、マックに行って遅めの昼食を取った。近くのアイスクリーム屋さんに入って、俺はチョコミントとイチゴの2種類、大輔はチョコ、コーヒー、バニラ、マンゴーの4種類を頼んだ。大輔はその後20分くらいトイレに誘拐されていたみたいだった。ゲームセンターで取ったキーホルダーを鞄につけてみたけど…つけてみたら超ダサかった。恥ずかしくなって結局外した。そこで、買わなきゃよかったという後悔が俺を襲った。今後悔してもどうにもならないのでスマホゲームで弱い敵の女の子をボコボコにしてやった。女の子は泣いてた。俺ってひどい奴だーーー。なんか惨めになってきたぜぃ。
けど、楽しかった。
夕方 ~帰宅中~
「大輔、大丈夫かよ。」
俺はお腹を痛そうに抱え込む大輔を見た。さっきから呻き声が聞こえる。
「だ、大丈夫…じゃねぇ。空斗、歩くのはえーよ…。」
俺は苦笑しながらコーラを飲んだ。近くにあった自販機で買った。今日はお財布が泣きたいくらいスッカスカになっちゃっただろうから、これからバイトを頑張らなくては。
俺が、コンビニあるけどトイレ寄ってくか?と聞いたときだった。
「大輔くん…だ。」
ポツリと小さく声がした。後ろの方を見ると、ポニーテールの大人っぽい女性が立っていた。誰、と聞きかけたところで…気づいた。彼女は林愛由さんだ。茶色の買い物袋を片手に、寒そうなスカートをはいた林さんが立っていた。買い物袋からは長ネギ(多分前に花奈が買っていたネギと同じ種類)と、カサコソという乾いた音が漏れていた。買い物袋を持っていない方の手で切なそうに口をおおった。
「愛由…。」
裏返った声で大輔が林さんの名前を呼んだ。
「……」
「……」
二人とも話そうとしない。ただお互いの顔を見つめているだけだ。
「大輔くん。」
林さんが泣き出しそうな声で大輔の名前を呼んだ。
「な、なんだよ。」
気まずそうな顔をして焦っているのは大輔だ。バカな大輔が場違いな行動(スマホいじり始めるとか)をしなかったことだけはほっとした。
「ねぇ、今だから言うけど。大輔くん、なんで私と別れようとしたの?」
単刀直入だ。林さんと大輔の間にはピリピリと緊張した空気が漂っている。俺は関係ないし、先帰っていいかな。うん、だめだよな。
「理由なんてねぇよ。」
嘘だろ、おいバカ。真央が好きだったから振ったんだろ?大輔はそう言いながら頭をかいた。
「ないわけないわ!大輔くん、今頭をかいたわよね?!大輔くんが頭をかくのは嘘をついたときだけだもの!早く理由を教えて!」
大輔はギョッと目を見開き、頭をかくのをやめた。
「んまぁ…いろいろあんだよ。」
「言ってくれなきゃ通さないわ。」
林さんが手を広げて俺たちの帰り道をふさいだ。
「通せよっ!別れた女に用はないっての!」
だんだん大輔がイライラしてきた。大輔が林さんの手を押して無理矢理にでも帰ろうとする。やばい、これは林さんに大ダメージだ。
「っ!ひどいわ!理由を言ってよっ!」
「愛由以外に好きな人ができたんだよっ!」
林さんは、通せんぼしていた手をおろした。え?とか細い声で呟いて、ついにはしゃがみこんで泣き出してしまった。本当は良い奴である大輔が、立ち止まって林さんの頭を撫でた。罪悪感があったのかもしれない。林さん、元々大輔みたいな奴と付き合わなければよかったのに。でも、頭ポンポンって一番女子がきゅんってするらしいからなぁ。ほら、今も頭撫でたりするから林さんが吹っ切れないんだよ。
「グスッ、で?大輔くん、誰が好きなのよっ?グズッ。」
「…真央ちゃん。」
林さんは乱れた髪の毛も直さずに再び泣き出してしまった。
すると…。
「あゆりん!?どうしたの?大丈夫!?」
聞きなれた声。長髪と短髪。手を繋いでふざけていた女子2人。それは…。
「は、花奈!?真央!?」
花奈が優しい声で林さんに駆け寄る。真央も花奈についていき、あゆりん!?と叫ぶ。あゆりんっていうのは、林さんのあだ名のようだ。花奈が疑うように辺りを見渡した。
「そ、空くんと大輔先輩!?もしかして…2人があゆりんのこといじめたの!?」
林さんは花奈の慌ただしい声に、俯いていた顔をあげた。
「あぁ、花奈ちゃんに真央ちゃん…。ま、真央ちゃんだぁ…。」
林さんはまたスカートに顔を押し付けて泣き出した。想いを捨てきれない元カレ好きな人が目の前にいるのだ。それはつらい。大輔は気まずさと大事になってしまった後悔で顔を真っ赤にしている。好きな人に会えて嬉しかったのかもしれないけど。真央は林さんをギュッと抱き締めた。
「あゆりん、どうしたの?空斗と先輩にいじめられた?ひどいことされた?何があったの?」
林さんは首を振って小さい声で花奈と真央に今まであったことを話し出した(大輔が好きな人が真央であることは言わなかった)。あぁ、1日の終わりがまさかの尋問だぁ…。
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