大輔…?

「ありがとうございました~!」

俺はあと1時間ちょっとでバイトが終わるので元気になって笑顔であいさつした。もう午後の5時だというのにいつまでたっても終わらない列にうんざりはしているけど。美味しい百合愛さんの唐揚げ弁当でお腹は満たされたし、今日はあとちょっとだし、給料入るし。もうサイコー!…っていう心境で俺はこの仕事をしています、はい。

「空斗くん!マンゴー期間限定が売り切れ!」

百合愛さんがクレープを器用に包みながら言った。えぇ!今日の朝あんなに届いてたのに!スゲェ、この店めっちゃ人気やん。

「えっと、マンゴー期間限定5つ。」

並んでいた女子高生5人がわちゃわちゃ話してからそう言った。

「申し訳ございません。売り切れてしまいまして…。」

「えぇ!マジ~?」

「残念~~~!」

「明日も来たら、ありますか~?」

5人が一気に話を始める。

「明日来ていただくとあると思いますよ。出来るだけ早めに来ていただいたら。」

「え~無理じゃない?」

「うちら部活あるもん~!」

「部活めんどくさーい。」

「私達ガッコーあるしね。この時間には帰れないわ。」

「サボれば良くね(笑)?」

若い子たちの会話は早い。だんだん違う方向へとずれていく。あのぉ、すみませ~ん。すると百合愛さんが呆れたようにやってきた。

「空斗くん、対応全然できないじゃん。花奈ちゃんの時もだけど。」

並んで待ってるお客様がいらっしゃるの、とイライラした様子でレジに入った百合愛さん。

「マンゴー期間限定が売り切れてしまい、本当に申し訳ございません。ですが、こちらのみかんクレープもおすすめ商品ですよ。みかんクレープは最近流行りの韓国クレープを日本風にしたものなんです。美味しいですよ。」

百合愛さんはメニュー表を手に説明し始めた。

「え~!韓国クレープの日本風!?」

「なんか面白そー!」

「あたしそれにする!」

「うちもそれで~~!」

「みかん好きやし!」

女子高生たちがお財布を取り出す。百合愛さんも微笑んでからクレープを作るために台所へ戻って行った。百合愛さんの隣にいる男の先輩が慣れた手つきでクレープを包み、百合愛さんが作ったクレープと一緒にこちらへ運んできた。

「「「「「ありがとうございまーす!」」」」」

5人が嬉しそうなので良かった。百合愛さん、ありがとーっ!

「次のお客様~。」

俺がそう言うと。そこにいたのは。同じクラスの友達、寺町大輔(てらまちだいすけ)だった。…そして、その隣にいた人を見て俺は硬直した。だ、大輔…!?大輔の隣には髪が長くてきれいな花柄ワンピースに身を包んだ女性が。…誰?

「…大輔?」

俺が声をかけるとその女性と楽しそうにじゃれあっていた大輔がギョッとした。そういえば俺がクレープ屋で働いていたことは恥ずかしかったから言っていなかったんだっけ。

「…そ、空斗?」

裏返った声が俺の名前を呼んだ。女性はふわりと笑って、空斗って大輔くんの友達だよねっと思い出したようにつぶやいた。そして、ペコッと頭を下げてから俺に言った。

「こんにちは!大輔くんの彼女の、林愛由(はやしあゆ)といいます。よろしくね。」

林愛由…めっちゃ可愛い彼女じゃん!こんにゃろー、なんで俺に言わなかったんだよ!知ってたら全力で冷やかしてやりたかったのにぃ!

「俺は風間空斗です。あの、彼女って…どういうことですか?」

林さんはフフッと笑った。恋人がいない俺を挑発するようなわざとらしいぶりっ子笑いだった。イラッとする。

「えっと、そうね。2年前に私が大輔くんに告白して、それからずっと恋人よね。」

「お、おぅ。」

語尾が小さくなった大輔の返事と林さんの返答を聞いて俺はびっくりした。こいつら、もう2年付き合ってんのかよ…!?大輔何で言わねぇんだよ!こいつめぇぇ!俺を置いて、いつの間にこんなリア充になっちまったぁ!

                      <第7話目おしまい>  



































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