花奈のすべてに恋してる。<オセロ編>

「この家ってなんもないね、マジ暇。トランプだって負けるし!空くんとやっても楽しくないからやめよっ」

大きくあくびしながら花奈が言う。7時になって、俺と花奈はトランプで真剣勝負をしていた。勝手に人の家に上がってきて、その態度は何だぁぁぁぁぁぁ!俺はもうやめると言われたので立ち上がった。暇っていうのも確かだし、散歩でもしてこよっかな?そう思っていると。負けた花奈が箱からオセロを取り出してきた。いや、やるんかい。

「私、先手でいい?」

花奈が慣れた手つきで白い石を手に取った。

「いーよ」

俺は眠くなってきて目を閉じる。今日はレポートを進めたかったから早起きしたからな。…花奈が俺の方に近づいてきたのが匂いで分かった。…って変態じゃないからな!?俺は軽くかかった花奈の吐息にビクッと目を開ける。スッキリしたきれいな顔が目の前にあった。勝手に緊張する。

「はい、空くんの番」

俺はふぅと息を吐いてから考えた。俺が勝つには、まずどこを潰しておくべきか…。

「じゃ、ここで」

「えーいいとこ見てるね」

花奈が頭を抱えて考える。

「おっけ、ここにする」

俺は静かに笑った花奈を観察しながら作戦を考え始めた。何としても勝ってやる。手加減はしない。


7時半。

「…負けました」

俺は花奈に頭を下げた。1個差で負けてしまった…。悔しすぎる…。前より花奈が上手になってる!焦りがこみあげてきた。くぅっ!悔しいぃぃぃぃぃぃぃぃ!いつも勝ってたのにぃ!

「ふっふ、意外と余裕だったー--!」

花奈が憎たらしいほどの美顔でドヤ顔する。余裕って…、大して変わりねぇだろ!こんのぉ。俺が文句を言おうとすると母さんの声が聞こえた。

「花奈ちゃん~!空斗~!ご飯できたよ~!」

お腹すいた!そう言おうと思った時だった。ぎゅるるる…。俺のお腹が鳴った。花奈は幸いこの音を聞いていなかったようだ。良かった、聞かれていたら一生からかわれる。恥ずかしい。ってか、起きてから2時間くらいたったもんな、しゃーない。

「ん、今行く」

俺はボソリとそう言ってからオセロを片付け始めた。

「はーい♪」

花奈が高い声を響かせて走って行く。機嫌がいい。ちぇ、あいつ俺に勝ったからって…!

「空くんママ、なんか手伝いある?」

「ふふ、花奈ちゃんはいつも手伝ってくれるわね、ありがとう。空斗なんか全然来てくれないわ」

おいおい!俺は花奈が片付けなかったオセロを丁寧にしまっているだけなんですが…!?

「あはは、空くんだもん。許してあげよ?」

あいつめ…。

「空斗、ご飯。席について~」

俺はため息をついてから返事をした。でも実は花奈の迷惑なとこも、めんどくさいとこも、ホントはちょっと嬉しかったりする。今は俺が花奈を独占しているっていうのもくすぐったいような柔らかいホワホワの綿菓子みたいな気持ちになる。気持ち悪いかもしれないけど…俺は花奈のおっちょこちょいなとこも、天然なとこもすべてが好きだから。…って恥ずッ!!!

                       <おしまい>





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