追放されたマッパーはダンジョンツアーガイドとして活躍する。地味な【万歩計】スキルと映像記憶で無双していたら自称聖女に惚れられました「えっ? 私も女の子なんだけど」
第6話 ダンジョンコンダクターのお仕事:ツアー編
第6話 ダンジョンコンダクターのお仕事:ツアー編
諸々の手続きを済ませた私は、ダンジョンコンダクターとしてデモンストレーションを行うことにした。
向かった先は、レッサードラゴンが住むとされる洞穴ダンジョンだった。
「右手に見えますのが、当ダンジョンの名物。古代人が残した女神の壁画でございま~す」
「おおー!」
第一階層の最深部にある壁画を案内すると、若い冒険者たちが一斉に拍手をした。
その中で一番元気よく手を叩いていたのがリセ先輩だった。
「ダンジョンの中ってこんな感じなんですね。いつもカウンターに座ってるだけだから初めて知りました」
リセ先輩の目が輝いている。
本人が述べているようにダンジョン探索は初めてなんだろう。
テンションの高さがよく伝わる。
先輩はそこで懐からメモ帳を取り出すと、何やらチェックをしはじめた。
「ここまでは見事な案内っぷりでした。監督役として厳しい目で評価しなくてはなりませんが、非の打ち所がないので花丸をつけざるをえません」
「あはは。ありがとうございます」
私は苦笑を浮かべて先輩にお礼を言う。
ギルド主催のダンジョン体験ツアーに集まったのは、初心者講習を終えたばかりの新人冒険者だった。
ツアーの主旨は、本格的な依頼を受ける前に比較的安全なダンジョンで体験クエストをしてもらうことだ。
ギルド長に企画を提出したのは私だ。
今回のツアーは、ダンジョンコンダクターとしての私の仕事ぶりを試すデモンストレーションの意味合いもある。
ダンジョンコンダクターの仕事は大きく分けてふたつある。
ひとつがカウンター業務。もうひとつが現地添乗員だ。
マッパーやスカウトとしてパーティーに同行し、ダンジョン内のサポートやキャンプの手伝いをするのが主な仕事になる。
諸々の事情を聞いたリセ先輩はギルド長に直談判して、監督役としてツアーに同行した。理由は単純な好奇心からだろう。
「ここからマッピング講習に入ります。地図の読み方と書き方は教えた通りです。この用紙に第一階層の地図を書いてきてください。1時間以内にこの壁画広場に集合。終わった人から休憩に入ってください」
「は~い」
新人くんたちは素直だった。
配られた羊皮紙と筆記用具を手にして思い思いに散らばる。
第一階層に出るのはザコモンスターばかりだ。
ダンジョンのボスでもあるレッサードラゴンは第3階層に住んでいる。
よほどのことがない限り危険はないだろう。
「よいしょっと」
広場にて休憩用の簡易テーブルセットを広げる。
ポットに紅茶を入れてきたので、作業が終わった冒険者に振る舞おう。
そうして作業を進めると、隣で手伝ってくれていたリセ先輩が質問をしてきた。
「このダンジョンの地図はすでにイノさんが完成させてますよね? どうしてわざわざ新人さんたちに書かせるんですか?」
「何事も経験だから。完成品を渡して『はい頑張って』だと地図の書き方も読み方も身につかないでしょ? 自分で書いた地図は愛着が湧くものだから。目で覚えるより、”手”で覚えた方がマップも頭に入りやすい」
「それわかります。人の名前も一度手で書いた方が覚えやすいんですよね」
「このダンジョンの安全は確保されてるけど、トラップは普通に存在する。今回のツアーは新人講習の延長みたいなものだから、ある程度痛い目にも遭ってもらうつもり。もちろん命の危険がない程度にね」
対処が困難なトラップや、下の階層に続く坂道などは事前にキープアウトの目印を張ってある。
素直な参加者たちばかりだったので、自ら危険を冒さないだろう。
「一度身の危険を感じれば、その経験は次に活かせるでしょ? この壁の配置は”身に覚えが”ある。槍のトラップがありそうだから迂回しよう……みたいな感じでね。そうやってより実用的な自分だけのマップが仕上がっていく」
私はそこでテーブルに地図を広げる。私が描いたダンジョンマップだ。
「マッピングの素晴らしさを広めるのも私の夢だから。冒険者の能力向上はギルド長であるカーミラさんも望むもの。二人の意見が一致して、今回の体験ツアーが決定したの。私が本当に仕事ができるか試す意味もあるんだろうけど」
「試すまでもなく、イノさんはしっかりやってると思いますけど」
「ありがとう。先輩にそう言ってもらえると自信が出てくる」
「ああ! イノさんがワタシに尊敬のまなざしを! いいんですよ。もっと褒めてあげます。よーしよしよし!」
「ちょっ、頭を撫でないでくださいってば」
私を子犬のように可愛がってきた。
尊敬まではいかないけど感謝はしている。
今後お礼をかねて美味しいお菓子でもプレゼントしよう。
やがてテーブル準備が終わり、私とリセ先輩は紅茶を飲んでほっと一息つく。
冒険者が戻ってくるまでの、わずかながらの休憩タイムだ。
先輩は紅茶を一口飲んだあと、感慨深げに壁画を見つめる。
「ダンジョンコンダクターかぁ。ダンジョン攻略をツアーにするっていう発想が驚きです。どうやってこの仕事を思いついたんですか?」
「それは……」
「コンダクターさん、大変です!」
リセ先輩の質問に答えようとしたその時、ツアー参加者の1人である見習い戦士くんが慌てたように私に声をかけてきた。
「一緒の班で回っていた参加者が一人、行方不明に!」
「えっ!? どうしてそんなことに。この周辺のフロアは迷うところなんてないですよ」
「それが探索中にお花を摘みに行くと言い出しまして。女性の方なので、うっかり目を離してしまって……」
「それは仕方ないですね」
相手は女性だ。彼も気を遣ったのだろう。
はぐれたポイントを見習い戦士くんから聞き出すと、私は使い慣れた短剣と楽々冒険者セットを持って先輩に声をかけた。
「すぐに合流するからみんなはここで待ってて。いざという時は緊急時のマニュアルに従って。地図と一緒に荷物の中にしまってあるから」
「イノさんは地図いらないんですか?」
「大丈夫。ここに入ってるから」
私は自分の頭を指さすと、リセ先輩に手を振って別れた。
私はすでにこのダンジョンを潜った経験がある。
内部の構造や危険度も熟知している。
壁画の間からほど近く、人目につかないような最適な場所は……。
「この辺りね」
2分10秒ほどで、当たりをつけた壁のくぼみに到着した。
暗がりでほどよく人目につかず、用を足すにはちょうどいい場所だ。
女性同士だ。うっかり見てしまっても笑って許してもらおう。
私は相手の注意を促すスキル【
「セリスティア・ホワイトブルームさ~ん」
そうやって名前を呼ぶと、あることに気がついた。
「……ん? セリス?」
どこかで聞いたことがある名前だ。
そうだ。この名前は……。
「あーーーれーーーー! おーたーすーけーーーー!」
案の定、見知った顔の巨乳のプリーストが通路の向こうから現れた。
後ろにレッサードラゴンを引き連れて。
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ひぎぃ。
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チュートリアル役のNPCおじさんは、バグった聖剣とゲーム知識で無双する。サービス終了したVRMMOで、バーチャルアイドルと勇者を仲間にして世直しの旅に出ます。
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