第24話 破壊
町ではヘリが出動を始めていた。
そのヘリはミサイルを搭載したもので、突然変異をしたシマリスを倒すために町長が指示を出していた。すべての町民が避難したら一斉にシマリスに向けてミサイルを放つようにと。
警察官たちも銃を構えながら町民を誘導させつつシマリスのもとへ向かっていた。
そのころ、リンリーはポニーを追っていた。
「待って、ポニー!」
すると警察官のひとりに腕をつかまれて止められた。
「危ないからさがって」
「放して! ポニーが!」
ポニーはシマリスの足もとまで走って行った。警察官の手を払いのけて行こうとしても、リンリーの力ではそれすらもできずにただ手をのばすだけで精いっぱいだった。
「リンリー!」
ローサが駆け寄ってきた。それを見たリンリーは警察官の腕を咬んでその場を逃走した。
「あっ! クソッ」
「あの子、私の娘なんです。リンリーが! 早くリンリーを捕まえてください」
「わかりましたから、お子さんはわれわれが確保しますから、奥さんはここから急いで避難してください」
警察官は早口のようにまくし立てた。ローサはそれを聞かずに先へ行こうとした。
「リンリー!」
「ローサ!」とラボルが声をかけながらロビと一緒にそこへ駆け寄ってきた。
「大丈夫か?」
「え、ええ、でもリンリーが」
「えっ!?」
「ねえ、あなたどうしましょう」
すると警察官が怒鳴るように言った。
「ああ、お父さん! 早く家族を連れてここから逃げてください危険ですから! この先に行ってしまわれたお子さんはわれわれが見つけ出して確保しますから!」
ラボルは落ち着いてローサに言って聞かせた。
「いまは警察の方たちに任せよう、大丈夫、大丈夫」
息を上げているローサの背中を優しくなでながら「ではお願いします」と言い残してラボルたちはその場を去った。
オウガたちはククジェルの足もときた。何十倍もの大きさの体がいまにもすべてを踏みつぶさんとするように前進していた。
「ククジェル! 聞こえるか、いますぐやめるんだ!」
オウガはククジェルの進む方向にいき叫んだ。
「ねえ、ククジェル聞こえる? わたしたちを収容所から出してくれたわ、本当に感謝しているのよ」
ライラは気持ちを伝えた。
「わ、わたし、臆病だけど、ククジェルのおかげで強くならなくちゃって思ったの、だから目を覚まして!」
ポランが強い意思を伝えた。
「ククジェル! あんたがあんたじゃなくなるとあたしにおいしい食い……じゃなかった、みんなダメなんだよ、あんたがいないと。情けないけどさ」
ニャミィはやれやれと思いながら伝えた。
ガルマはそれを聞いてククジェルに言った。
「おい、ククジェル。下を見てみろ、みんないるぞ。お前が助けたみんなが」
ククジェルはゆらりと下を向いた。そこへポニーがやってきた。
「ククジェル、おいら幸せだよ! 人間に飼われて、ククジェルの思っているほど人間は悪くないんだよ!」
……ぽにー。……みんな。
「ポニー!」
リンリーが飛び出してきてポニーを抱きかかえた。「よかったー」そう言ったあとククジェルを見上げながら後退した。
「見つけた!」
警察官はリンリーを抱きかかえがらその場から離れた。
「ここは危険になる、だから絶対に手を離さないで、いいね」
リンリーはこくりとうなずいた。
それから警察官は無線で連絡を取った。「お子さんを確保したから、家族に伝えてくれ」とほかの警察官に伝えた。
そのとき、ヘリからミサイルが発射された。
ククジェルの体にそれが当たり爆風を巻き起こした。
「ああああああー!」
ククジェルはのけぞるように体をくねらせながら牙をのぞかせる。
「な、なにが起こったんだ!?」
そう言ってオウガは爆風と轟音に対して身を低くした。ほかの動物たちも身を低くしている。
「ああっ! ククジェルが痛がっているわ!」
ポランが悲しそうな声を出した。
「人間たちね。まったく」
ライラが怒りを込めながら言う。
「はぁーどうして、こうおバカなんでしょ、人間て」
ニャミィは呆れたと言ったようにため息をついた。
その爆音に反応してポニーが顔を向けた。煙の向こうにククジェルの巨体が見える。
『ああ!? ククジェルが』
その場にいれらえずにポニーはまたリンリーの腕のなかで暴れ出した。
「ポニー、ダメよ。もう絶対離さないから!」
ヘリがククジェルを囲った。
『撃て』という合図とともに一斉にミサイルが発射される。ククジェルの体を破壊しようと容赦なく痛めさせる。
「あああああー!!」
ガルマはミサイルがククジェルに当たるたびに、体と心の痛みを同時に受け取っていた。
「……もういい、もうもとに戻れ。このままだと死んでしまうぞ」
それを無視してククジェルは歩き出した。
「おい、どこへいく? 魔法は使えるんだろ。それで小さくなれ!」
でも歩き出す。1歩1歩前に。
『撃て』という合図にミサイルが発射される。
そのたびにククジェルの体は傷だらけになり血が流れ始めた。その痛みをこらえながら進んで行った。
オウガたちはククジェルのあとについていった。爆風にのまれながらも身を低くしながらあとを追っていく。
「いったいどこへ向かってるんだい、あいつは?」
ニャミィはしかたなしに言い放った。ライラはその先にある物を感じ取った。その先にある嫌なにおいもう嗅ぎたくない場所。
「収容所さ。ククジェルは収容所に向かってるんだよ」
「どうしてだい?」
「……きっと、破壊するためさ」
爆風が収まりふたたびヘリがミサイルを発射しようとククジェルに狙いを定める。
ククジェルは空気圧を放った。
ヘリが不安定になり吹き飛ばされる。操縦者はパラシュートを使いそこから落下した。ヘリは遠くのほうに落ちて爆発した。
そして、ククジェルは収容所の前にきた。
鬼のような形相を収容所に向けて、踏みつぶしたり前足て破壊をしていった。粉々になるまで踏みつぶす。
そこへポーメット博士と研究員たちがやってきてククジェルを見上げた。
ガスマスクをつけて手には掃除機のような睡眠ガスを発生させる装置を持っている。
「よーし、これであいつを眠らせてわれわれのものにするんだ」
ポーメットはそう言って装置を構えた。
それを見たククジェルは研究員たちを踏みつぶそうと足を上げた。
「おい! ククジェル! やめろ、やめるんだ!」
ガルマのかけ声にククジェルは踏みとどまった。それから聞いた。
「どうして?」
「やめるんだ」
「どうして? あいつらは悪いやつだよ、そうでしょ?」
「それでもやめろ」
「どうして?」
ククジェルは怒気を忍ばせた声を出した。ガルマは冷静に落ち着かせるように話した。
「俺たちは……気高い生き物だろ。あんな下等な生き物と一緒になるな、頼む、お願いだ。やめてくれ」
「ガルマ……ううっ」
ククジェルは力が抜けたように縮んでいきその場に倒れた。
「ククジェル! ククジェル! しっかりしろ!」
ガルマの呼びかけにククジェルは反応を示さなかった。
そこへポーメットたちがやってきてククジェルを捕まえようとした。
その瞬間。ガルル……と同時にオウガたちが飛び出してきてポーメットたちを威嚇した。
「な、なんだこいつらは?」
ガルル……と低いうなり声で威嚇する。
「ええい、睡眠ガスだ、やれ!」
シューっとガスがまかれる。その一帯をガスがおおっていく。
しばらくするとそのガスが消えて、そして辺りが色を取りもどしたように浮き出てくる。
「ん? シマリスがいない」
ポーメットは目を丸くした。そこにいた動物たちはみんな姿を消していた。
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