第19話 reconnecting
「痛っ、て……」
人間を受け止めた衝撃と壁に挟まれたせいで、胸と背中が痛む。
視界が閉ざされている中、手探りで相手を確かめようとした直哉の手に、妙に柔らかい感触が伝わる。
(あ、れ?)
「ん、んん」
その吐息は、思いのほか自分の顔の近くで聞こえた。
感触が女のものだったことに驚いて、手を跳ね上げる。すると相手が勢いよく立ち上がった。その素早い動きに直哉はたじろぐ。
少しずつ目が暗さに慣れてくると、彼女の姿が見え始めた。
白い服。すらりと伸びた足。凛々しい立ち姿に、小さな顔。手には弓が握られていて、耳が少し尖っている。
「だ、誰なんだ?」
「静かに!」
彼女は直哉の方に振り向くことなく、小さく、だが鋭い一声で直哉の言葉を遮った。
彼女の視線の先には開け放たれた扉。
外には月明かりに照らされた木々が立ち並び、異様な静けさに包まれている。
見覚えのない景色に戸惑い、直哉は周囲を見渡した。
家の中。
だが直哉の家ではない。
手に触れた床は畳ではなく、木の板のようだった。
湿った空気と植物の匂い。
遠くから水の流れる音が聞こえる。
弓を持った少女は直哉を黙らせたきり、一向に動く気配がなかった。
一刻も早く状況を把握したい直哉がしびれを切らして声をかけようとしたとき、聞き覚えのある声が背後から聞こえた。
「だ、め、直哉さん」
懐かしい声だった。
それが誰かを理解するのに振り向く必要がないほど。
失くした物が見つかったときのような開放感に包まれ、モノクロだった思考が色を帯び始める。
「入葉?」
「は、はい」
直哉は全身に電流が走るような気がした。
彼女の声をこれほど心地よく感じたことはない。
「お前、今までどこに?」
「えっと、気づいたらここに……。そしたら、な、直哉さんと彼女が飛び込んできて――」
入葉と会話している。
たったそれだけのことが、こうも嬉しいとは。
だが同時に、入葉に対して申し訳ない気持ちを感じる。その理由を思い出せないが、彼女が直哉に対して必要以上に遠慮がちなことも無関係ではない気がする。
入葉の瞳に映り込んでいる直哉の顔は、蜃気楼のようにかすかに揺れている。いつの間にか二人が同じタイミングで呼吸していたことに気づくと、それが妙に甘く溶け合うような感覚に変わった。
そんな自分の気持ちの変化が恥ずかしくて入葉から目を離そうとしたとき、ギリギリと木がしなるような音が聞こえてきた。
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