第15話 welcome to another world

「痛っ、て……」

 直哉はびくりと体を震わせて気が付いた。

 まるで十年分の静電気を一度に浴びたみたいな衝撃だった。

 だがそれに勝るとも劣らない衝撃が、背後から直哉をとらえた。


「直哉、さん?」

「い、入葉!?」


 彼女が、いた。

 もう二度と会えないと、会えないと分かっていたら絶対に離さなかったのにと後悔した、あの彼女が。

 照明が消えているのか、周囲が暗くて表情まではよく見えないが、おどおどした態度も遠慮がちな声も、間違いなく直哉が知っている入葉だった。


「お前、今までどこに――」

「シッ! 静かに!」

 入葉との再会に震える直哉の言葉を、短く鋭い声が静止した。


 白い服。すらりと伸びた足。

 凛々しい片膝立ち姿に、小さな顔。

 手には弓が握られていて、耳が少しとがった少女だった。


 直哉と入葉、そしてその少女は、暗い小屋の中にいて、外には月明かりに照らされた木々が立ち並んでいる。そこは直哉の家ではなかった。


 弓を持った少女は、呼吸を整えてゆっくりと弓を引いた。


 その少女が誰かはわからない。

 それでも直哉は理解した。

 何らかの危険が迫っていることを。

 今ここにいる三人に敵対する、何かが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る