第20話 死に物狂い

「やだー!

 食われる~、死ぬ~

 けど、それ以上に……

 アレにナニかされんのもっといやー!!!」

「チクショウ、この年まで生きて来て。

 ゴブリンと戦って死ぬのはまだしも……

 あんなんとナニかするのだけはゴメンだぜ」


オルもオヤジさんも暴れた。

The死に物狂い。

オヤジさんは剣を振り回したし、オルはナイフで暴れた。


だけど数が違い過ぎるのである。

一体のゴブリンを切り裂く間に、後ろから来たゴブリンにオヤジさんは縛り上げられた。

オルがナイフをアワアワと振り回す、その横からゴブリンのこん棒が頭を叩いた。

気を失いそうになるオル。

だが、無理やり堪える。


いや、ホントに。

マジでここで気を失うわけにはいかないのだ。

少し先で担ぎ上げられてるクイーン。

太っちょのゴブリンがいやらしそうに笑ってるのが見えるのだ。


ここで気絶したらどうなるの?

チラっと映像が頭に思い浮かんでしまう。

オルは男にしては白くて柔らかいキレイな肌なのだ。

旅をしているから薄くであるが筋肉も着いて、ぜい肉なんて無い。

それが服がはぎとられて。

あのデッカイ体がのしかかってきて。

抵抗しようにも抵抗出来なくて。

長いまつ毛の下、涙を流しても許してくれなくて。

ゴブリン集団に美しい裸体を見られながら…………

いやーー!!!

男の子だけど、悲鳴をあげちゃう時はあげちゃうよね。

我慢できない事が世の中にはあるのだ。


だけど、オルの手からはすでにナイフが取り上げられ。

命の次に大事な竪琴も奪われて。

クイーンが傷をつけるな、と言ったせいか。

腕が折れるほど乱暴では無いものの後ろ手に押さえつけられる。


「ぐふふふふふっ。

 ソッチの細い方の着物を剝ぎ取レ。

 こっちのゴツイ方は丸焼きにするンダ。

 ゴツイ男を食いながら、ソッチの細いのと子孫繁栄しよう」


………………

オルは目の前が暗くなって、周りの景色が遠くなったように感じる。

顔の表面から温度が下がっていくのが分かる。

なんてサイアクな台詞。


そしてその台詞は現実の物とされようとしているのだ。

オルの服に複数のゴブリンが手をかけ。

オヤジさんからも衣服がはぎとられている。

その体が連れていかれる先には焚火らしき物も見える。


オヤジさんっ!!!

他人の心配をしてる場合では無くて、オルの身も危険なのだけど。

周りの薄汚い手を振り切って、オヤジさんの方へ駆け寄ろうとする。

だけれども、オルは非力だ。

自分より背が低い魔物でも、腕力はある。

ゴブリンどもに抑えつけられ、身動きが取れない。


やめて、やめて、やめて!!!

ヤメテ! やめろーーーっ!!!!!


オルが珍しく叫んでも、周りの魔物は見向きもしない。

その視界の先では。

オヤジさんが燃え盛る炎へと運ばれていく。

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