第18話 泣きそう
ギャ! ギャギャギャギャ!
グググ! ギュアガガガガ!
耳障りな音を立てるゴブリン。
そいつらがオルの周りを囲んでるのだ。
「なんだこりゃ?!
なんてこったい!」
騒ぎ立てるのはオヤジさんだ。
オルがぼうっとしてたら、坑道から戻ってきた。
周りを一目見て叫んだのである。
「こりゃ、いくら俺がお前の曲で元気ハツラツだ、つってもよ。
無理だぜ」
「そうですよね。
あはは……ははは……はは」
辺りを無数の魔物に囲まれているのだ。
パッと見でも10体じゃきかない。
100体くらい居るかもしれない。
なのに、なんでオルはノンキに笑ってるのか、とゆーと。
顔は引きつりまくってるのだ。
頬は血の気が引いて、真っ青。
脚はブルブル震えてる。
笑ってゴマカさないと、立ってられないじゃん。
死んじゃうじゃないの。
「オル、逃げるぞ。
…………
と言っても、どの方向も周り中囲まれてんな」
オヤジさんも似たような心境らしい。
眉はしかめているが、口元はぐいっと笑みの形。
オルを安心させるためと言うのもあるだろうが、自分自身を鼓舞するための笑い。
「あは、はははは……ははは……
オヤジさん~どうしよう?」
笑ってゴマかしてたオルだが、ついに恐怖の限界が来たらしい。
オヤジさんに縋りつく。
既に泣きそう。
「お前、アレまた演奏してくれないか。
くじけちまいそうなんだ」
「アレって……
「その……ブレなんとかだ」
「うーん、出来ない事はないけど……
この状況でオヤジさんに突撃されたら困っちゃうよ。
……そうだ!
魔物を寄せ付けないんだ。
それで身を護るのはどう?」
「その……バリバリとやらは、アレにも効くか?」
オヤジさんが指差すのはゴブリン。
足元の小石を拾って、今にもこっちに投げつけそうなポーズ。
飛んでくる小石から身を守ってくれたりはしない。
そこまで便利じゃない。
「……効かない……かな」
「……そうだよな」
「オヤジさん~、どうしよう~~!!!」
「泣くなっての!
オレだって泣きたいくらいなんだから」
二人が見ると、ゴブリンの群れが道を開ける。
遠くからナニカ近付いて来ようとしているのだ。
人間より図体の小さいゴブリンの中でひと際目立つ大きな個体。
ゴブリンが神輿の様に担ぎ上げて運ばれてくる魔物。
「アレ……なに?」
「アレは……もしかして……ゴブリンクイーン!?」
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