第16話 ゴブリン
グキャキャキャキャ!
キュキキキッ、ギャギャギャ!
ゴブリン。
身体は成人した男性の半分くらい
二本足で立つ姿は人間を思わせるけど、その顔には知性が無い。
何処を見ているか分からない瞳、舌を出して笑う姿はあさましく醜い。
全身に薄汚れた緑色の体毛を生やした不気味な姿。
ゴブリンはかなり嫌われている魔物だ。
集団で人を、村を襲う。
石を拾って投げつけて来るのも厄介だし。
個体によってはこん棒を振りまわす小賢しいのもいる。
オルの目の前にいるのは、その小賢しい個体らしかった。
何故ならこん棒を、脅すように振り上げている。
後ろにいるもう一体は手に投げるのにピッタリそうな石を持っている。
軽い金属音がして、オヤジさんが腰から鉄の剣を抜いている。
オルとしては、戦いの場面を見るのはあまり好きじゃ無いのだが。
そんな事を言ってられない場合なのはさすがに分かってる。
「二体いる。
気を付けろよ」
オヤジさんが言うのは……
こん棒を持ってる一体とオヤジさんが戦う。
その間に、もう一体がオルを襲うかも、と言う意味。
止めてヤメテ。
僕、平和主義の音楽家なんだよ。
魔物に襲われるの、シュミじゃないの。
襲われるのがシュミな人間はいないと思うが。
つい口の中でつぶやいてしまうオルである。
自分の身を守らなきゃ。
と言いたい処だけど、そうはいかない。
オヤジさんは、オルにも三つ子にも関係無いのに戦ってくれてるのだ。
「オヤジさん、頑張って」
ヒトコト言って、タテゴトに両手を伸ばす。
弦が強い音を立てて、流れ出す勇壮なメロディ。
「……これは……
こりゃ、なんだ!?
身体に、精神に、力が溢れて来るぜっ!」
オヤジさんは吼えた。
「うりゃーー!!
ゴブリンがなんぼのモンじゃーいっ!!!」
剣を片手に突進していく。
あれっ?
弦が足りなくてアレンジしちゃったからかしら。
勢いよく演奏し過ぎたかな。
オヤジさんはあっと言う間にゴブリンを叩きのめした。
1対1で剣を持つ戦士なら、苦労はしない魔物と言われてはいるが。
相手は2体いたのだ。
でもオヤジさんは躊躇せず、突っ込んで剣を振り回して小柄なゴブリンを圧倒した。
その後もたまにゴブリンは現れたが、オヤジさんが瞬く間にぶっ飛ばした。
そしてオル達は坑道の前まで来ているのである。
「三つ子たちいませんね」
「やっぱり……
この穴の中まで入っちまったのか……」
暗い坑道の中を眺めるオヤジさんとオルなのである。
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