第15話 北の山

「タイヘンだっ!!!」


オルは大慌て。

慌てながら家を飛び出そうとするが、オヤジさんが止める。


「待てよ、何処行く気だ?」

「鉱山ですよ。

 決まってるでしょ」


「アナタ、鉱山の場所知ってるの?」

「……そういや……知りませんでした」


オヤジさんと奥さんがズッコケて、笑ってゴマかすオルなのである。



「俺が案内する」


オヤジさんは何処からか鎧を取り出して着込んだ。


「こう見えてもな、昔は冒険者の端くれだったんだ」

「オヤジさんが!?」


「夕方までに戻らなかったら、街の警備隊に連絡してくれ」


奥さんに言い残して出発する二人。


門には警備らしき人がいたが、オヤジさんが上手い事言って通った。


「コイツ、最近街に来たばかりでな。

 少しその辺を案内するだけだ」



門を出ると上へ登って行く坂道。

岩の多い殺風景な場所だった。

オルが越えて来た山の風景とは大違い。


「東の山を越えて来たのか?

 あっちは森の多い良い処だけどな。

 北側の山はこんな感じだよ。

 にしても、一人で歩いていて良くゴブリンに襲われなかったな。

 東の山だって北ほどじゃ無いが、ゴブリンは出るって聞いてるぜ」


「ええっ?!

 そうなの。

 じゃぁ、僕は運が良かったんだ。

 ………………

 一人じゃ無かったな。

 仔犬もいたんだっけ。

 ……あの仔犬が守ってくれたんだったりして……」


「ん、何だって?」

「いえ、何でもないです。

 ヒトリゴト。

 ジョーダンですよ」


そのジョーダンが的を射てるとは、考えもしないオルである。



ゴツゴツした岩場を登って行くオヤジさんとオル。

息が切れて来る。

オルは旅の吟遊詩人ミンストレル

細身の見た目より体力があるオルなのだが、登り道はキツい。


オヤジさん、よく平気だな。

鉄の胸当てまで着てるってのに。

あんなの着けたら、僕ならすぐヘバりそう。


「……っ!」


オヤジさんが立ち止まって、その背中にぶつかりそうになったオル。


急に立ち止まらないでよ。

と、文句を言う事は出来なかった。


グキャキャキャキャ!

キュキキキッ、ギャギャギャ!


人の神経を逆なでするようなイヤな笑い声。

ゴブリンが二体、オルの視界に立っていたのだ。

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