第11話 時間が問題
「シショー、すごい!」
「シショー、よかった!」
「……素敵でした」
三つ子が集まってくる。
ケルとベルなんか、ウルウルと尊敬するようなマナザシだったりして。
「ホントに良い音なんか出せんの、と疑って悪かった」
「見た目がショボイから、大したこと無いんじゃないの、と思っちまった」
「……ケル、ベル。
信じてなかったの」
「あはははは。
でも凄くよかった。
最初はキレイだけど淋しい音でさ」
「俺泣きそうになっちまった。
けど、途中から音が変わって……なんかポカポカしてた」
「でしょ、でしょ。
オル師匠、すごいでしょ」
「うん、すごい」
「うん、すごい」
手放しで褒めてくれるのは嬉しいけど。
少し照れくさいよ。
そして何故か三男のロスはドヤ顔。
良く分からないけど、自分は正しかっただろと勝ち誇った顔。
「ああ、ロスの言った通り。
この人に逢いに来てよかった」
「うん、まぁな。
今回はロスの言う通りだったな」
ロス君が……何か二人に言った?
屋台のオヤジさんは上機嫌だった。
「あはははは、久々にメッチャ売れたぜ。
お前、良かったらしばらく泊まっていけよ。
鉱山が再度動き出すまで、待つしかないだろ」
現在、国の兵士たちがこの街に向かってるらしい。
さらには冒険者にも、この街でゴブリンを狩れば報奨金が出ると告知された。
いずれはゴブリンが倒され、鉱山も元通りになるだろうが。
オルにとっては、いつになるかが問題なのだ。
とゆーのは。
「ああああああ!
また弦が切れちゃった。
それも二本。
残り16弦。
厳しいよう。
これじゃ複雑な曲はムリだ」
ここのところ弦にダメージが無いように、慎重に演奏していたオルなのだが。
今日はつい夢中になってしまった。
「すっげぇ、シショー」
「すっげぇ、シショー」
「……オルさんは凄いんです」
ワチャワチャと着いてくる三つ子たちに心慰められながらも。
トボトボと暗く落ち込むオルなのである。
とりあえずオヤジさんに甘える事にして、しばらく泊めてもらおうかな。
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