第12話 三つ子
「アナタ器用ね」
「うん、なかなかウマイじゃねぇか」
オルのビスケットである。
小麦と蜂蜜、それに鶏の卵を貰ってパパッと焼き上げたのだ。
オヤジさんにも奥さんにも好評。
オルからの泊めてもらうお礼である。
本格的な料理は奥さんにお任せするが、菓子の一つくらいは焼けるのである。
「うっめー」
「うっめー」
「……やっぱり美味しい」
子供たちも大喜びなのだ。
「金属加工の出来る鍛冶師ねぇ。
この街に鉱石が運び込まれるから、近辺の鍛冶師はここに集まってるぜ」
金属弦の話である。
この街以外にどこかで手に入らないかな、とオルが訊いてみたらそんな回答であった。
「この子たち、カワイイわー」
三つ子は奥さんに気に入られたようだ。
ケルとベルが、ビスケットをボロボロこぼしながら食べてるのを見て目を細めた。
「お腹すいてるなら、夕食は腕によりをかけるわよ」
「ゴメンなさい。
子供たちの分まで」
あまり関係無いハズなのに、奥さんは子供の分までご馳走してくれるらしい。
頭を下げてしまうオルなのだ。
「いいのよ。
アナタもタイヘンね。
そんなに若いのに子供を三人も抱えて。
奥さんはどうしたの?」
「そうだよな。
子供がいるのに
食っていけるのかよ。
何処かの貴族にでも召し抱えられるか。
劇場に雇われるアテでも無いんなら。
定住して別の職に就いた方がいいんじゃねぇか」
「ちっ、違います。違います。
僕の子供じゃありません」
「あはははは。
シショー、俺のお父さん」
「シショー、実は俺の父さんだったの」
「ちがーう!
テキトー言わないで、ケルとベル」
「オルさんが……お父さん。
……少し嬉しいかも」
ロスは少し離れたところで一人でナニカ言っている。
「そうだよ、キミたちの事ちゃんと聞いてないや。
キミたち、ご両親はどうしたのさ。
今頃心配してるんじゃないの」
「……リョーシン?」
「……そんなのいないぞ」
「あの……親は僕たちが小さいうちにいなくなりました。
それから三人だけで生きて来たんです」
ケルとベルが何も気にした風でなくアッケラカンと言う。
ロスの方はそれが異常な事と分かっているのか。
静かに目を伏せて話す。
オヤジさんも奥さんもオルも、そんな三人を見て何も言えなくなってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます