第9話 鍛冶師
「こっちの方だよな」
オルは鍛冶屋を探している。
街のハジ、山に近い辺りに鍛冶師たちが集まっているらしい。
「シショー、まだか」
「もう休もうぜ」
「…………」
3人の子供達も何故か着いてきているのだ。
子供達はボロボロの毛皮の様な服を着ていたのだけど。
奥さんが「子供のお古なの」と服を出してきてくれたので、今はお揃いの服を着ている。
「タテゴト、ってヤツ良い音がするんだよね」
「早く聞かせてくれよ~」
「………………聞きたいです……」
「待ってってば。
その竪琴のために弦を買いに来てるの
弦さえ手に入れば、いくらでも弾いてあげる」
「ホント?」
「ウソだったらショーチしねーぞ」
「……嬉しい」
「弦ですって?」
鍛冶屋にいた女の子はオルの顔を見て言った。
鍛冶屋の集まる周辺、その一番近い小屋に入ったら女の子がいたのである。
10代の前半だろう。
三つ子たちよりは年上、だがオルよりは明らかに年下なのだが。
態度はオルより大きい。
「弦て言ったら糸でしょ。
そんなの鍛冶師のウチじゃ知らないよ。
ねぇ、母さん」
「あん、あぁぁあ、えーと。
確か羊の腸から作るとか言うんじゃ無かったか。
作り方は細工師の秘伝だろ」
母さんと呼ばれた女性は奥にいた。
竈を掃除している。
「いえ、僕の竪琴は一般的なハープじゃなくてライアーって言うんですけど。
特徴は
「はーん、見せてみろよ」
煤が顔に着いた女性がオルの竪琴を受け取る。
男性にしては細身のオルより逞しい女性。
弦をマジマジと観察している。
「確かによく見かける
こりゃ結構細かい鍛冶細工だな。
細く糸の様に金属を伸ばさなきゃいけないし。
厚さが不均衡だと、多分音が良くならねーんだろうな」
「やる、それやる。
細かい仕上、アタシやる。
そーゆーの得意」
眼を輝かせて言ってるのは女の子の方。
母親だと言う女性は少しばかり眉をしかめる。
「そりゃ、分かってるけどよ。
ただな……」
「……そっか。
まず材料が無いモンね」
「材料が無いって言うと……
あのゴブリンが出て、鉱山で作業が出来ないって話のコト?」
オルが尋ねると母娘は応えた。
「ホントに無いんだ。
ここのところ鉱石が入ってこないからよ。
他の工房あたってもドコも一緒だぜ」
「アナタ来るのが遅いのよ。
少しは残ってた原石も鉄粒も生活に必要なモノに既に化けちゃったの」
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