第7話 三つの声

オルは納屋で寝っ転がった。

なんだか雑多なものや、隣の鶏のエサなんかが置いてある。

お世辞にもキレイとは言えなかったが。


「ホレ、毛布だ。

 そこの藁束に寝れば結構いい寝床になるぜ」

「ゴメンなさいね。

 こんな場所で」


「いえいえ。

 野宿に比べれば天国です。

 感謝しますよ」


タダで夕食おごってもらって、寝床まで用意してくれたのだ。

夫婦に文句を言ったらバチが当たる。


えいっと藁に寝っ転がる。

ちょっぴりチクチクするものの、体を柔らかく受け止めてくれる弾力。


「なかなかオツなベッドじゃない」


奥さんは明日、お湯とタオルを貸してくれると言っていた。

それで体を洗おう。

今日はまー、しょうがない。


身体を横にすると、一気に体に疲れが溜まってるのを自覚した。

考えてみれば。

昨日は一日山歩きをして。

野宿をして。

そのまま朝から山を下ってきたのだ。

そりゃ、疲れてるに決まってる。


そういえば昨日は仔犬と寝たんだっけ。

可愛かったな。

お腹にくっついてきた温かい感触と、フルフル揺れるシッポを思い出す。

現在は一人で、あの温かさが無いのが少し淋しい。

連れて来れば良かったかな。

でもあの仔は多分親犬の元へ帰ったハズ。

子供を親から引き離すのは可哀そうだ。

無事に親犬のトコロに帰れただろうか。


そんな事を考えていたら、すぐ近くであのつぶらな瞳が見ている気がして。

淋しいような嬉しいような。

不思議な気持ちでオルは眠りに着いた。



なんだかゴソゴソと音がする。

朝だろうか。

そう言えば鶏小屋の隣なんだよな。

鶏が起き出したのか。

にしてはあの凄まじい鬨の声が聞こえないな。

聞こえてるのは人の話し声のような…………


「この人で間違いないの、ロス?」

「…………うん、間違いない」


「にしてはロスが言ってた良い音ってのを出してないじゃん」

「ベル、寝てるんだよ。

 寝ながら楽器を弾いてたら、それこそ変な人だよ」


「詰まんねぇな。

 ケル、一緒にこの人起こそうぜ」

「ベル、そうしちゃおっか」


「ケル、ベル、止めてよ!

 寝てるんだってば。

 迷惑だよ」


「ちぇー」

「ちぇー」


良く分からないけど……三人位居る気がする。

声は少し高くて変声期前の子供の声。

悪戯そうな声が二人。

それに比べると少し大人しそうな声が一人。


オルは少し寝ぼけながらも、無理やり上半身を起こしてみる。


「キミたちは……誰だい?」


「あっ、起きた!」

「ネボスケ」

「五月蝿くするから、起こしちゃったんだよ」


「あの、ゴメンなさい」


大人しそうと思った声の持ち主が頭を下げる。

それを押しのけるように、悪戯っぽい声がオルの前に二人して進み出る。


「俺達、アナタの弟子になりに来たんだ!」

「だから、シショー、よろしくな!」


「えっ?!

 えええええええええ?

 えええええええええええええええええええええええ!!!」

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