第4話 招待状のムキデレラ

 後日、お姉さんの一人であるアナスタシアお姉さんがムキデレラにプレゼントを渡しました。


「……これ、…ロバ耳王様の木の虚ろというものなの…、お願い…歌う時とか口笛吹きたい時はこれを口に付けてからやって…、そうしたら文句言わないから……」


 渡されたものはメガホンを裏返しにしたような形のものでした。ヒモが付いていて、固定できるようになってます。

 アナスタシアお姉さんがプレゼントしてくれるのは初めての事でした。


「ありがとうございます!」

「…うん…、…必ず付けてね…」


 顔色が更に悪いアナスタシアお姉さんはフラフラしながら自室へと戻っていきました。

 最近流行りの瀉血でもやっているのでしょうか。

 そんなことをしなくても筋トレすれば健康になるのに。

 そう思いながらムキデレラはポケットに入れていたハムの塊を取り出してムシャリと頬張りました。



 さて、ある日の事です。


 ルルシファーがムキデレラの鍛えたネズミ達に追い回されているのを救出していると、コンコンと扉がなりました。

 誰でしょうか。


 ムキデレラがウキウキと扉へ向かうと、全力ダッシュのお義母さんがムキデレラを追い抜きました。

 その場でお義母さんはムキデレラに振り向き指差し言います。


「あんたは姿を見せないの!!!!!隠れてなさい!!!!いいわね????」


 いつの頃からお義母さんは来客が来るとムキデレラよりも先に来て対応するようになりました。

 しかも隠れていなさいと言います。

 とても不思議でしたが、とりあえずムキデレラは隠れる事にしました。


 思い切りしゃがみ、そのバネを利用して壁を三段跳びし、玄関上の天井へと張り付きました。

 ゴソゴソと腰の鞄を漁り、アナスタシアお姉さんからのプレゼントである“ロバ耳王様の木の虚ろ”を取り出しました。

 これならどんなに歌っても大丈夫と言われて使ったところ、一回歌っただけで底が爆発したのですが、せっかく貰ったので持ち歩いておりました。

 それをムキデレラは耳に当て、お義母さんと来客者の会話を盗み聞きしました。


 どうやら、この国の王様がブドウカイとやらを開くようです。

 参加者は16歳の女子に限られているようです。


 来客者が帰ったようで、お義母さんが紙を手に機嫌良く階段へと向かっておりました。

 その後ろへムキデレラが音もなく着地して声をかけました。


「お義母さん!!!!」

「ぎょえああああああああ!!!!!」


 お義母さんは変な声を上げながら驚く程飛び上がりました。

 転がるように着地したお義母さんがムキデレラに激昂します。


「音もなく近付くなと言ったでしょう?????あんたは私を殺したいのかい?????」

「はい!なので声を掛けました!」

「ぴっ!?  ととととというか!!あんたは声をかける前に接近を知らせるために何かしなさい!!!!心臓が止まるでしょう????」

「ならば次の食事からガマの油を配合しましょうか?強心の作用があるのでお義母さんにピッタリですよ?では早速ガマを捕まえてまえります」

「やめて!!!!本当にやめて!!!!後でタップダンス用の音のでる靴を渡すからそれを履いて行動してちょうだい!!いいわね???」


 たっぷだんすとは何なのでしょうか?

 どちらにしても初めてお義母さんからプレゼントをされるというのでムキデレラは嬉しくなりました。


 その時、お義母さんの手に手紙が握られているのに気が付きました。

 来客者から受け取った紙は手紙だったようです。


「お義母さん、手のそれは何ですか?」

「こっ、これは!あんたには関係ないものよ!こんなものに意識割いているなら外壁でも磨いていなさいよ!好きでしょ!?ボルダリング!!」


 そう言うやお義母さんは二階へと上がっていきました。

 ムキデレラは「外壁を磨くというのは盲点でした」とお義母さんの機転に感激し、早速磨くためにタワシとバケツとロープを持って壁を登り始めました。

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