第12話
【プリン視点】
アキは跳ねうさぎから少し距離を取ってストレージからやぐらを出現させた。
高さは10メートルほど。
アキはやぐらに登って上から弓を連射する。
跳ねうさぎはやぐらを目指して走るが、その間に跳ねうさぎを矢で倒していく。
「チョコ、あれずるくない?」
「いえ、射程範囲外からの攻撃は戦いの定石です。これが駄目なら防壁の上から矢を放つのも駄目になりますよ。それに戦闘力が高くてストレージを使える人はあまりいませんからアキ君ならではの攻撃ですね」
確かに。
言われてみればストレージの発動には時間がかかる。
それにレベル5のストレージ持ちはあまりいない。
あの絶妙な距離でやぐらを出現させる勘の良さ。
弓レベルの高さ。
すべてが揃って初めて使える方法。
「アキの弓が強くなってる!」
「ええ、アキ君のレベルは今まで1でした。ものまね士はレベルアップに必要な経験値が2倍になりますが、あれほど大量に、効率よく跳ねうさぎを倒せるなら……」
チョコは汗を掻いていた。
「すぐにレベルアップする!」
「そうです。まったく、末恐ろしい子ですね」
「跳ねうさぎが5体やぐらを登ってる!」
「問題無いでしょう」
アキは登って来る跳ねうさぎをナイフで倒した。
跳ねうさぎが全滅するとアキは私に目を向けた。
私達はアキのいるやぐらに向かって歩いていった。
「凄いですね。これなら他の群れも簡単に倒せますよ」
「もう少し改良が必要だ。中で休んでいてくれ」
やぐらを登って建物の中に入るとベッドなどの家具が揃っていた。
「住めるわね」
「そうだな。やぐらを改造してくる」
アキは屋根の上に足場を作っていた。
一番上から打ちたいようだ。
その後、また跳ねうさぎの群れを全滅させるとストレージから食べ物を取り出す。
「皆で食べよう」
「便利ですね。今日の食事は固いパンと燻製肉かと思っていましたがおいしい食事を食べられます」
村の外で食事を摂る際は腐りにくくて持ち運びしやすい硬いパン・燻製肉・水となる。
他の村ではどうか分からないけどこの村ではそれが普通だ。
「ねえ、もう試し終わったでしょ?一緒に魔物狩りをしましょう」
「いや、まだ試し終わっていない」
「「え?」」
アキは弓と手裏剣を装備して跳ねうさぎの群れに近づく。
弱い跳ねうさぎでも、繁殖期で100を超える群れになっている。
「あ、危ないわよ!」
「さすがに無茶ですよ!もう少しやぐらでレベルを上げましょう!」
アキは集中して弓を構える。
あれ?矢じりが異様に大きい。
そう言えば錬金術で矢じりに何かを書き込んでいたような……
でも、あんなに矢じりが大きいと矢が遠くまで飛ばないんじゃない?
アキが矢を放ち、跳ねうさぎの群れに飛んでいくけど当たらない?
そう思った瞬間爆発音が聞こえた。
「え!」
地面ごと跳ねうさぎが吹き飛び、地面がえぐれる。
アキは更に矢を放って行く。
「え?何々?なんなの?」
「錬金術であらかじめ矢じりに爆発効果を付与しているんです!ですが起動にも錬金術のスキルが必要です。錬金術+弓スキルを併せ持つアキ君ならではの攻撃です」
あらかじめ爆発の効果を矢じりに付与しても錬金術を使える者が使わないと効果を発動させることは出来ない。
錬金術を使いこなせたとしても弓の技量が無いと狙った位置に矢を落とす事は出来ない。
高レベルの錬金術と弓スキルがあって初めて成立する戦い方。
矢じりが大きかったのは錬金術の付与をする為。
ただの鉄に効果を付与する為にはある程度の大きさが必要なのだ。
爆発を生き延びた跳ねうさぎがアキに向かって迫る。
アキは大きめの手裏剣を取り出した。
大きい手裏剣、ああ、またなのね。
アキが投げた手裏剣が爆発し、跳ねうさぎを倒していく。
地面がえぐれ、そこには倒れて絶命した跳ねうさぎが転がっていた。
「難しいな」
「十分よ!」
「矢じりを大きくしすぎると飛距離が落ちて小さくしすぎると威力が弱くなりすぎる。バランスを取ると威力はいまいちなんだ。手裏剣も同じで大きくすると投げにくくて素早く取り出せなくなってくる」
そう言いながら跳ねうさぎをストレージに回収していく。
「やりたいことは終わったの?」
「いや、まだあるんだ」
「次は何を試すんですか?」
「ナイフと拳」
「拳?」
アキは胸と腰に何本もナイフを装備して跳ねうさぎの群れに走って行く。
まるで刃物人間ね。
そして胸からナイフを引き出して群れの中心に投げる。
今までより大きな爆発で大量の跳ねうさぎが倒れる。
胸に装備したナイフをすべて投げる。
爆風で私のスカートがめくれ、必死で抑えた。
残った跳ねうさぎがアキに襲い掛かるとアキは後ろに逃げる。
腰のナイフを持たず、何故か素手で逃げていた。
そう言えば、アルケミストと同じ紋章が手の甲に見える。
アキは反転して両手を構える。
そして両手の甲が輝いた。
アキが右の拳で殴ると、拳の前方に最大威力の爆発が巻き起こった。
さらに左手も突き出す。
跳ねうさぎが爆発で全滅し、アキの両手からは血が流れていた。
「メインはナイフ爆弾で、拳は切り札か」
体術のスキルを覚えれば手から血が流れる事は無くなるだろう。
固有スキルのような威力を持つ攻撃をアキは簡単に使いこなしていた。
「アキ君!手は大丈夫ですか!」
「大丈夫だけど、両手が、いや、腕まで痺れる」
チョコがポーションを飲ませてアキの両手が回復する。
「お嬢様、気づいていますか?」
「何?」
「アキ君がナイフでまともに戦ったのはやぐらを登って来た跳ねうさぎ5体だけです。それ以外は一方的に、範囲攻撃で一気に仕留めています。レベル1の状態からあそこまで一方的な戦いが出来るのはアキ君だけかもしれません」
「そう言えば!」
「アキ君は天才ですよ」
凄い!
アキのレベルがもっと上がってもっとスキルが伸びれば、アキは更に強くなる!
ものまね士が弱いは絶対に嘘だ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。