第2話

 母さんは笑いながらついてくる。

 よく考えたら子供と同じ行動だな。

 体は子供なんだけど心は子供じゃないんだよなあ。


「アキ、難しい顔してどうしたの?」

「な、何でもないよ。水魔法を教えて」

「魔法はイメージが大事よ。川に行きましょう。流れる水を見ながら使った方が成功しやすいわ」


 俺と母さんは川に向かった。




 川に着くと母さんが真剣な表情に変わった。


「ウォーター!」

「指先に水が出現してふよふよと浮かぶ」

「おおお!」


「少しずつ水を出すイメージで使うのがいいわ。手加減をしないと倒れちゃうわよ」

「ウォーター!」


 バシャン!


 水が出現して破裂し、母さんが水浸しになった。


「ごめん!次は離れてやるよ」

「待って待って!」

「ウォーター!」


 バシャン!

 失敗、あれ、具合が悪い。

 俺は地面に倒れこんだ。


「MPが0になると具合が悪くなるのよ。しばらく休みましょう」


 母さんが僕を抱っこして地面に座る。

 車酔いして動けなくなった時のような気持ち悪さだ。

 吐き気がする。

 




 ステータスを開く。


 アキ 人族 男

 レベル  1

 HP 10/10

 MP   0/11【+1】

 攻撃 10    

 防御   10   

 魔法攻撃 10  

 魔法防御 10   

 敏捷   10

 ジョブ????    

 スキル『瞑想レベル1』



 MPが0になっている。

 ん?MPの最大値が1増えてる?

 MP 0/11 の左が今のMP量で、右が最大値か。

 水は出せたけど、水魔法のスキルを覚えられていない。

 制御できないと駄目なのか。

 俺は、母さんに抱かれながらいつの間にか眠っていた。



 起きると、母さんが僕の頭を撫でている。


「おはよう」

「おはよう。母さん。水浸しにしちゃったね」

「いいのよ。でもMPが無くなると動けなくなるわ。指の先で少しずつ水を出した方がレベルは上がりやすいわ」

「次からそうするよ」


「魔物を倒してないのにMPが増えたよ?」

「訓練でも上げられるのよ。100ポイント分まで上げられるわ。スキルレベルは10が上限ね」

「そっかー」


「訓練をするなら10才になってジョブの授与を受けてからの方がいいと思うわ」

「どんなジョブがあるのかな?」

「剣士・魔導士・錬金術師・斥候が多いわね」


「俺、魔導士になるのかな?」

「ふふふふふふ、魔導士じゃなくても魔法を覚えられるのよ。でも、ジョブを授ればそのジョブのスキルを一緒に授かる事が出来るわ。それに魔法使いなら魔法、剣士なら剣術のレベルアップが早くなるわ」


 そうか、でも、10才まで待ちきれない。

 魔法が使えるなら使いたい。

 他のスキルも覚えたい。


「でも、修行はかっこいい」

「はいはい、今日は眠りなさい」

「うん」




【次の日】


 俺は家の前で寝ころびながら水魔法の練習をする。

 これでいつ倒れても大丈夫だ。

 人差し指を立てて、指の先から水を出して浮かせようとするがうまくいかない。

 水鉄砲のように数十センチ水が飛んで地面に落ちていく。


 MPが無くなり地面に寝ころびながらステータスを開いた。




 アキ 人族 男

 レベル  1

 HP 10/10

 MP   0/11

 攻撃 10    

 防御   10   

 魔法攻撃 10  

 魔法防御 10   

 敏捷   10

 ジョブ????    

 スキル『瞑想レベル1』




 水は出せている。

 もっと制御できるようにならないとスキルは発現しないのか。

 ……瞑想をしよう。



 ガチャ!


 母さんが家から出てくる。


「あら、まだ飽きないのね。アキは飽きっぽいのに」

「今修行してるから」

「ふふふ、そうなのね。スキルを覚えるまで数か月はかかるのよ」


「うーん、でも瞑想のレベル1は覚えていたから覚えられるかもしれない」

「きっと最初から覚えてたのよ」

「そうなのかな」


「頭の中に瞑想を覚えたって聞こえなかったでしょ?新しくスキルを覚えると天の声が聞こえるのよ」

「そうなのかー」


 でも、今は続けよう。


 母さんは少し笑いながら家に入っていった。


 俺は飽きっぽい所がある。

 でも、魔法は楽しい。

 日本にいた時と違って成果が実感できる!


【一か月後】


 この世界は12カ月。

 365日で1年。

 季節も春夏秋冬で日本と同じだ。


 俺は今日も水魔法を練習する。

 瞑想のレベルは上がるけど水魔法を中々覚えられない。


 指先から出していた水が球体にまとまり宙に浮く。


『水魔法を取得しました』


 俺はすぐにステータスを開いた。




 アキ 人族 男

 レベル    1

 HP 10/10

 MP   4/17【+6】

 攻撃 10    

 防御   10   

 魔法攻撃 11【+1】

 魔法防御 11【+1】  

 敏捷   10

 ジョブ????    

 スキル『瞑想レベル2』『水魔法レベル1』



「覚えた!」


 僕は家の中に急いで入る。


「水魔法を覚えたよ!」

「もう覚えたのね、凄いわ!」

「よくやったな」


「これで魔物を倒せるようになるかな?」


 この世界には魔物がいる。

 だから村から出てはいけないと何度も言われている。


 父さんと母さんが笑う。


「はははは、レベル1は畑に水を撒いたり飲み水を作る程度だ」

「ふふふふ、アキにはまだ無理よ」


「え!レベルをどのくらい上げれば強くなれるかな?」

「一人前がレベル2でレベル5になればかなり強い」

「アキ、レベル2になっても5になっても村の外に出ちゃ駄目よ。まだ子供なんだから」


「うん、分かってるよ」


 実は魔物を倒してレベルを上げたいと思っていた。

 今はまだ難しいか。

 まだまだ魔法は上がる。


 今は魔法の訓練を続けよう。

 修行が楽しい!

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