転生したら弱いものまね士になったけど結局活躍した。それはいいとして、英雄になったら隣に住んでたエルフとベッドの上でファンタジーが始まった
ぐうのすけ
第1話
英雄、それはたった一人で戦局を覆す力を秘めた存在だ。
「うおおおおおお!!!」
「くおおおおおお!!!」
拳の英雄に拳で打ち合う!
拳と拳で無数に打ち合い、結界同士がぶつかり合うようにお互いの攻撃が通らない、通せない!
「身体強化が切れたか?」
俺は拳の英雄に言った。
「それがどうした?貴様が身体強化を使い、我が使えん。その事如きで我には勝てん!」
倒せる手が無い。
手が見つからなくなった瞬間、戦場の血の匂いと金属が撃ち合う音が無くなり、景色が色を失っていく。
時間がゆっくりと流れる。
激しう命を削り合うが不思議と心は落ち着いていた。
速度強化を使えば逃げ切る事は出来るかもしれない。
だがそれをやればマッチョも、変態仙人も、チョコもプリンもみんなが死ぬ。
逃げる事は出来ない。
走馬灯のように昔の記憶を思いだす。
俺はクラフトの言葉を思い出していた。
『親のマネをやめて自分で考えるようになることで自分の色が出るのだ』
『ものまね士は器用貧乏だがそれでも、今出来るすべてを込めてみるのだ』
『ものまねの向こう側はきっとあるのだ』
ものまねはもう意味がない。
今できるすべてをやる!
ものまねの向こう側!
俺に足りなかった力はこれか!
『固有スキルを取得しました』
「はははははははははは、そうか、そう言う事か!」
「何がおかしい?心が壊れたのであるか?」
「いや、こっちの事だ!」
そうか、俺は転生する前からそうだった。
物覚えが早く、何でもそこそこ出来る。
でも1番出来る事は1つも無い器用貧乏だ。
転生してからも俺は何も変わっていなかった。
単純な事だ。
俺のような性格だからものまね士になった。
すぐ飽きて最後までやり通さない。
1つの事を極めずに抜け道を探して楽をしようとする俺だから固有スキルを覚えられなかった!
でも、今は違う!
絶対に引かない、逃げる事は絶対に出来ない!
すべてをこの力に込める!
俺の体が輝き、自ら前に踏み出した。
転生するあの時は、まさか英雄と闘う事になるとは思ってもいなかった。
【転生前】
「はあ、やっと終わった」
俺は会社を出る。
もう日付が変わり、終電終わりだ。
同じルーティンワークに飽き、やる気が無いままサラリーマンを続ける。
仕事はこなすが成果を上げても給料は増えず、負担だけが増えていく。
いかんいかん、寝不足で気分が滅入っている。
たまには違う道を通って帰ろう。
俺は裏路地を歩く。
ちょっとした行動だがこうする事で気分が変わるのを知っている。
「ふぁ!」
その瞬間黒い空間に飲み込まれ、どこまでも落ちていく。
◇
ここは?
日本とは……空気の質が違う。
まとわりつくような感じで不思議と安心する。
体を動かそうとして目があまり見えない事に気づく。
体をうまく動かせない。
「よしよし、今おっぱいをあげるわね」
口に柔らかい感触が触れる。
おっぱい?
おっぱいっておっぱいだよな?
うん、デリシャス。
……赤ちゃん!
俺は赤ちゃんになったのか!
お母さんと思われる女性の声は明らかに日本語ではない。
でも意味は分かる。
俺は、頑張って手を動かして自分の頬に触れる。
明らかにいつもと感触が違う。
俺は、転生したんだ。
この日から、赤ちゃん生活が始まった。
◇
しばらくすると目が見えるようになり、体をうまく動かせるようになった。
母さんと父さんの3人暮らしで両親はどちらも美形だ。
俺は黒目黒髪でそこは日本にいた時と同じか。
母さんと父さんが話をする。
「なあ、お互い18才になったんだ。そろそろ2人目を作らないか?」
「もう少し待ちましょう。まだこの子の面倒を見たいわ。ねえ、アキ」
俺の名前はアキだ。
そんな事よりも母さんは18才!
若い!
いや、今の現代社会が異常なだけか。
「ファイア」
父さんが暖炉に火をつける。
魔法?魔法だよな!?
異世界転生か!
いや、決めつけるのはまだ早い。
見間違いかもしれない。
でも、試してみよう。
「あいあ!」
駄目か。
「ファイアって言おうとしたの?アキに魔法はまだ早いわよ」
「子供の事はしばらくしたら考えておいてくれ。畑に行って来る」
「行ってらっしゃい。ほら、アキも行ってらっしゃいは?」
「いってあっあい」
うむ、うまく発音できない。
母さんが僕の手を持って振る。
母さんは一度見送ったのに一緒に外に出て父さんを見つめる。
仲が良いな。
「アキ、お父さんは頑張ってるわね。アキは魔法よりお父さんの仕事を覚えましょう」
母さんはひたすら俺に話しかけながら畑仕事をする父さんを見つめる。
辺りを見渡すと、隣は大きな塀がある。
俺の家は、小さいな。
小屋のようだ。
でも、父さんも母さんもおおらかで暮らしやすいから不満は無い。
建物や母さんの服装を見ると城や魔法があるファンタジー世界のようだ。
空を見上げると太陽?の他に赤い月と青い月が見える。
極めつけは大地が空に浮かんでいる。
間違いない。
ここは異世界だ。
剣や魔法が使えるのか!
胸が高鳴る!
「あいあー!」
「もう、落ちちゃうわよ」
まずは言葉を話せるようになろう。
◇
俺は3才になり、言葉も文字も覚えた。
この世界にはスキルがあり、スキルを覚える事で魔法すら使用可能となる。
「父さん、魔法を見せて」
「またか、まあいいが、ファイア」
父さんの指先に炎が灯る。
この世界では数人に一人は魔法を使えるようだ。
練習すればだれでも使えるようになるらしい。
「見ても意味がないぞ。魔法を覚えるには体を巡る魔力を感じて動かせるようにならないとな」
「魔力を感じる?」
「座って目を閉じて、体を巡る魔力を感じる所からだな」
「瞑想、みたいな感じかな?」
「そうだ」
俺は目を閉じて魔力を感じる。
「感じた」
「はっはっは!まだ子供には無理だ」
でも感じる。
前の世界にいた時とこの世界では空気の質が違う。
多分この違いが魔力だ。
俺の体にも空気中にも魔力は流れている。
次は魔力を動かせるようになればいいのか。
自分の中にある魔力を指先に集める。
属性の無い魔力が指先に集まり、薄い光を放った。
「本当に出来ている!メーナ!アキが魔法操作をしている!」
母さんが走って来る。
「アキ、お母さんにも見せて」
俺は指先に魔力を集めた。
「凄いわ!アキには才能があるのよ!」
母さんが僕に抱きつく。
母さんの感触が気持ちいい。
俺は、才能があるわけではない。
ただ、転生前の記憶があるだけ……いや、それが才能なのか?
みんなが出来ない事が出来る。
才能ともいえるか。
「スキルを覚えるには数か月はかかるのよ。アキは凄いのね」
「そうだぞ。アキ、家の中で炎魔法を使わないと約束できるか?」
「うん」
「外で炎魔法を教えよう。何度も言うが家の中で使うのは駄目だ。それに森に火をつけるのも駄目だ」
「分かったよ」
「私の水魔法も教えるわ!水魔法の方がいいわよ!」
「分かった分かった。まずは水魔法だ。いや、その前にステータスを開いてみろ。開けるはずだ」
「ステータス?」
ステータスを開きたいと念じながら唱えると目の前にステータスが現れた。
「わ!」
アキ 人族 男
レベル 1
HP 10
MP 10
攻撃 10
防御 10
魔法攻撃 10
魔法防御 10
敏捷 10
ジョブ????
スキル『瞑想レベル1』
これは、高いのか低いのか分からない。
ジョブは何で????なんだろう?
瞑想レベル1の効果は?
意識を集中させると瞑想の効果が浮かび上がって来る。
本来MPを0から完全回復させる為には10時間の休息が必要で、瞑想レベル1を使い続ける事で完全回復の時間を短縮できる。
ずっと瞑想し続けて10時間かかる回復を9時間に短縮するのか。
効果が薄い、ずっと瞑想を続けられるわけじゃないし、ほとんど変わらないんじゃ?
いや、レベル1だし、こんなもんか。
「ジョブがはてなになってるのは何で?」
「ぼーっとしていると思ったらステータスを開けていたのね。10才にならないとジョブを授かる事は出来ないのよ」
「レベルとスキルレベルはどうすれば上げられるの?」
「レベルは魔物を倒す事で上がるわ。トレーニングで能力値をある程度増やす事も出来るわよ。スキルレベルは教えられながら何度も練習すれば上がるわね」
「スキルレベルの上限は10だが、5まで上げられればたいしたものだぞ」
「母さん、早く外に行こう。水魔法を教えて!」
「もう、そんなに引っ張らなくても大丈夫よ」
俺は母さんを引っ張って外に連れ出した。
あとがき
54話までストックしてあります!
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