しとしとと、雨

 突然だが、私は雨の日がとても好きだ。とくに、雨の日の休日などはこの上なく好きだ。


 雨で濡れたアスファルトを車のタイヤがこする音。

 屋根からしずくが一滴、二滴と落ちる音。

 大粒の雨がベランダに打ち付ける音。


 雨の日は、晴れの日には聞こえることのないたくさんの音が顔を出す。これらの特別な音がリズムに乗って私の耳に流れ込んでくるのが、なんとも心地いい。


 晴れの日にはあまり聴かない、雨を題材にした音楽をかけるのも雨の日の醍醐味だ。晴れた日に雨の歌を聴くのもよいけれど、雨の日に聴くと、晴れの日よりも音楽がすーっと、まるで水紋のように、心に染み込んでゆくような気がする。


 音に関連して言うならば、雨を表現する音というのも好きだ。


 しとしと、ざあざあ、ぽたぽた、ぴちゃぴちゃ。


 しとしと。教室の窓側の席で、ポニーテールの少女が退屈な数学の授業そっちのけで外を眺めている。

 ざあざあ。「結構降ってるなあ…。」と一言呟いたあと、サラリーマンは傘を広げて帰路につく。

 ぽたぽた。部活終わりに急な雨に降られ、ずぶぬれになった少年の髪の毛から水滴がしたたる。

 ぴちゃぴちゃ。雨が上がり、黄色いかっぱを着た小さな女の子が水たまりに入り、道路に自分の足跡をつけている。

 

 それぞれの音にそれぞれのイメージが思い浮かぶ。いろいろな雨、いろいろな音、いろいろな人。


 なんだかわくわくしてくるのは、きっと私だけではないはず。



 

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