第22話 仲良くね、こんな時も…


 ある森の中の開かれた草原。そこに2人の少女が倒れていた。




 一人は長い黒髪の少女ミユウ。彼女は昨晩から立て続けに受けたくすぐり責めによる疲労を癒していた。


 一人は肩ほどの長さの黒髪の少女サヤ。ついさっき兄の許嫁であるアストリアにより1時間にわたるくすぐり責めにより、体を痙攣させていた。


 そんな二人を岩の上で腰かけて眺めているのは、滑らかな金の長髪に赤い瞳の少女アストリアだった。


 彼女はゆっくりと腰を上げると、ミユウの側に近づいて、その場でしゃがむ。


「しかし、お二人ともくすぐりに弱いとは似た者姉妹ですね」


「『姉妹』って言わないで。一応あたし『兄』だから。それに元々あたしはくすぐり弱くなかったから」


「へえ。こんなかわいらしいお兄さんがいらっしゃるなんて、サヤさんはうらやましいですね」


「誰のせいでこんな兄になったと思うの?」


「『誰のせい』って、それはミユウさんの自業自得ではありませんか?」


「むぅ!」


 アストリアはふくれっ面のミユウを人差し指でつつく。




 数分時間が経つと倒れていたサヤがゆっくりと体を起こして、千鳥足でミユウたちに近づく。


 初めてうけた長時間のくすぐりにより、彼女は心身ともに消耗しきっていた。


「あら、お目覚めですか?もう少し横になっていてもよろしいのですよ?」


「だ、大丈夫だから……」


 ミユウはアストリアに支えられながら上半身を起こして、サヤと向き合った。


「ねえサヤ。さすがに兄妹で婚姻はダメだって。もう諦めて。恨むんだったら、あたしの妹に生まれた自分を恨んでよ」


「むむむ……。いーやーだーー!にぃにの嘘つきーーー!絶対ににぃにのお嫁さんになるのーーー!」


 その場で仰向きに倒れ、足をじたばたさせながら泣きわめく。まるで駄々をこねる子どものようだ。体は大きくなっても中身はまだまだ成長していないらしい。


「サヤももう大人でしょ!そんなわがまま言わないの!というか、そんなこと言ったら父さんも母さんも許さないと思うよ!」


「そんなことないもん!お父さんもお母さんも村の人みんな全員許してくれたもん!」


「はあ?そんな嘘までついて…」


「嘘じゃないですぅ~!にぃにに勝ったらお嫁さんになってもいいって約束した~!」


「そんなわけないでしょ!」


「いえ、あながちサヤさんのいうことは嘘でないかもしれませんよ」


 ミユウとサヤの喧嘩を分け入るようにアストリアが口を挟んだ。


「なんなのいきなりアストリアまで……。そんなの許されるわけないでしょ!」


「サヤさんの話を聞いていて思い出しました。不殺族や魔術族のような繁殖能力の弱い種族はその血統を残すためにたとえ兄弟であっても婚姻を結ぶことがあると聞いたことがあります。特にミユウさんとサヤさんは村で1・2を争うほど戦闘能力に恵まれているお二人です。その二人を結ばせようとするのもありえるかと……」


「え~」


 アストリアの言葉を未だ信じられないミユウに対し、サヤは腰に両手を当てて胸を張る。


「ほ~ら、言ったでしょ?」




「けど、あたしは認めないからね!妹を女として見ることはできないし……」


「女として見ていない?」


「当たり前でしょ!そんな目で見てたら変態じゃん!」


「それじゃあ~~、本当かどうか確かめてみようかな~~」


「一体何を?キャっ!」


 サヤはミユウの肩を両手で押す。力のないミユウはあっさりと後ろに倒れてしまった。


 嫌な予感がしたミユウは体を返して逃げようとした。しかし、サヤはそれを逃さないように彼女の背中に腰を下ろす。


 ミユウは手足をジタバタさせて抵抗するが、サヤは一切動じない。


「にぃに~。あたしを女として見ていないのなら、こんなことをしても平気だよね~。えい!」


 サヤはニヤッと笑うと、上半身をゆっくり倒して兄の背中に自分の胸を押し当てる。


「きゃーーーーー!や、やめてーーーーー!」


 アストリアほどではないが、サヤの控えめな胸の柔らかい感覚がミユウの中の男としての本性を攻め立てる。


「大会の時に対戦相手のローラさんに抱きつかれて悲鳴を上げていたんだって?ということはにぃには女の子の体に弱いということだよね~」


「お願いだから、離れてーーー!」


「あれ~?おかしいな~?あたしのことを女として見ていなければ、大丈夫なはずなのにな~?」


 兄の反応に思いの外面白くなったサヤは何度も体をバウンドさせたり、左右に上半身をこする。


 背中に妹の体を感じるたびにミユウから悲鳴が飛び出す。


「や、やめてーーーー!」


「だめ~!にぃにが『あたしのことを一人の女の子として見ている』と認めたら、やめてあげる~」


「く、く~!」


 このまま認めたら兄としての威厳が危うい。


 ミユウは何度も深く吸ったり吐いたりして、自分の理性を維持する。


「なかなか認めないな。自分に正直になった方がいいよ~」


「す~は~す~は~。い、いやだ~~」




 なかなか認めないミユウに対し、第二の攻撃を仕掛ける。


 サヤはゆっくりと這いずり上がらせ、ミユウの右耳に顔を近づける。


「わぁ~!にぃにの耳赤くなってる!おいしそうだな~」


「え……?」


 サヤは舌なめずりをすると、ミユウの右耳を甘噛みする。


「はむはむ……」


「ひにゃ~~~。しょこは~~~」


 間抜けな声と一緒に全身の力が確実に抜けていく。右耳から脳に直接くすぐったさが襲い、全身がビクビクと痙攣する。


「どう?これでも認めない?ペロッ」


「ひゃん!」


 サヤはミユウの右耳から口を離すと、彼女の耳周りを舐めまわしたり耳の中に息を吹きかける。その度にミユウの全身が反応する。




「強情だな~。よし、最終手段だ」


「え?」


 サヤはミユウを羽交い絞めにして、天地をひっくり返す。


「にゃ、にゃにを~」


「強情なにぃにには、素直になるおまじないをしてあ・げ・る」


 サヤはミユウの服の裾から両手を潜り込ませる。


「ちょ、ま、あはははは。く、くすぐった、あははははは」


 ミユウはくすぐったさから逃れようとするも、後ろからサヤの両足で腰を固定されて体を起こすことができない。


「ふふふ。これで終わりじゃないよ」


「いひひひ。どういう、こと?」


 服の中に潜り込ませたサヤの両手はミユウの胸部にたどりつく。そして、下着の中に手を差し入れると彼女の乳房の頂点をつまむ。


「ひにゃ~~~~~~!」


 人間の最も敏感な部分のひとつを刺激されたミユウは全身をピーンと硬直させて、断末魔を上げる。魔術印の影響で通常時よりも敏感になっている彼女には想像以上の刺激だ。


「ほれほれほれ~。にぃに、妹にこんなことされるなんて屈辱でしょ~。もう我慢しなくてもいいんだよ~。素直になればいいんだよ~」


「あ、あ、あ……」


 サヤの指がミユウの胸の先端をコリコリとねじる。


 尋常でない刺激にミユウは、言葉にならない声を上げる。




 限界を越えていたミユウが悶えていた瞬間、いつの間にか二人から遠ざかっていたアストリアがある言葉を口にする。


「ビリビリ」


「「え?ぎゃあーーーーーーーー!」」


 首につけられた赤い首輪から高圧電流が放出され、ミユウと抱きついているサヤの二人を襲う。




 10秒間電流が流れた後、丸焦げになった二人が並行して倒れていた。


「あああ……」


「に、にぃに。なにこれ……」


 不殺族のミユウたちの黒く焼かれた肌が急速に修復されていく。


 そして、もとに戻った二人の間にアストリアが座る。


「もう二人ともいい加減にしなさい!」


 そういうとアストリアは指を鳴らす。同時に二人の上下から鎖が飛び出し、彼女らの手足を拘束してIの字にする。


「うふふ。これから姉妹仲良くお仕置きです」


 アストリアはニコニコ笑いながら、手をワキワキさせる。


「アスねえ!許して!」


「いや、あたしは一方的にやられただけなんだけど!」


「いいえ。喧嘩両成敗。お二人平等です!」


「「そ、そんな~」」


 右側に拘束されているミユウの右横腹を、左側に拘束されているサヤの左横腹をそれぞれくすぐる。


「そ~れ、こちょこちょこちょ~」


「「あーーーははははははは!ご、ごめんなさーーーーい!いやあはははははははは!」」


 そして、ミユウとサヤは10分間アストリアによるくすぐり責めを受け続けるのであった。




 10分後、ミユウたちの拘束する鎖は消え、髪と服を乱しながら倒れていた。


「えへへ。に、にぃに。ごめん、ね。まがまま、いって……」


「あへ、あへへへ。いいよ。これから、仲良く、しようね……」


 口角を痙攣させる二人の目から一筋の涙が流れていた。


「やはり姉妹は仲良くしないといけませんよね」


 座っているアストリアは仲直りした二人の姿を微笑ましく眺めていた。

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