五人の妻と勇者との対決
「はい、アレスさん。幸せいっぱいですね。」
「ああ……。」
シエル、モカ、アミ、マリアンヌ、クレア。全員と結婚。俺も身を固める覚悟をしないといけないな……。
もちろん覚悟はある。だからプロポーズしたのだ。
「クレアさん。どさくさに紛れてお兄ちゃんにキスして。」
「ふふ。すまない、モカ殿。」
「……というか、シエルさん。アレスさんと何回やったんですか? くんくん、この匂い……。」
「えへへ……。先輩と結婚……。」
「うふふ。うふふふ……。神は重婚を認めて……。認めて……。」
しかし、こうやって見ると……。ここにいる五人の女がみんな俺を愛してくれている。この気持ち、これが幸せなのか。ふっ。案外、悪くないかもな。
俺が五人から少し距離をとった時、カテリナさんが近づいてきて、こっそり俺に耳打ちした。
「アレスさん。」
「あ、カテリナさん。ありがとうございました。」
「いいえ。私は私の目的があるので。」
カテリナさんが俺の腹筋を撫でて言う。目的って、俺?
「いや、でも、カテリナさん。俺は……。」
「エリクサー。それにモカさんたちを連れてきた分。」
「そ、それは……。」
「アレスさん。ダンジョンから帰ったら、体で返してもらいますからね。」
あの時、存分に揉めなかったカテリナさんのバストが再び俺の手に押し当てられた。
ははは……。さっそく浮気のお誘いかよ……。
「約束ですからね。」
「あ、はい。」
仕方がない。カテリナさんとはあくまでビジネスの関係。やったって後腐れは無さそうだし。抱けるなら抱きたいし。
それより、まずはエミリアを助けて無事に地上に帰ることを考えよう。
「みんな! 改めて、エミリアを助けに行くぞ! いいか!?」
「はい!!」
全員が揃った返事をした。いい返事だ。さすが俺の妻たち。
さあ、決戦の時!
◇
エミリアがいるのは裏ダンジョン地下十五階。
近づくほどに、ダンジョンボスの重苦しい空気が漂ってくる。あの女勇者エミリアがダンジョンボスになってしまったという受け入れがたい事実を、嫌というほど実感させられる。
「エミリア!」
ダンジョンボスが鎮座するボスの間、その中心で膝を抱えてうずくまる少女。紛れもなくエミリアだった。
「エミリア、俺だ! アレスだ! 助けに来たんだ!」
「……アレス?」
俺の声にエミリアが反応する。
エミリア一人か? エミリアを操っているという魔王の手下は? 今はまだエミリアの体内に隠れている状態か?
あの勇敢で、俺の目標で、どんな時も誰にだって負けなかったエミリアが、こんな弱々しい姿でいるなんて……。
「エミリア。俺たちはお前を救う手立てを考えてきた。大人しく俺の言う通りにしてくれるか?」
「……アレス……?」
エミリアにキスをして、俺のレベルをエミリアに付与する作戦だ。正直言って発動条件は厳しい。だが、やるしかないんだ。
変わらず反応の薄いエミリアだったが、ダンジョンボスのルールに縛られているのか、俺たちが戦闘の構えを取らなければエミリアからも攻撃はしてこないようだ。
「シエル!」
「はい! アレスさん!」
俺は作戦どおり、シエルを呼び寄せた。
そしてシエルに濃厚なキスをする。舌を絡ませ、唇を吸って、シエルの快楽を高める。
「んんん! ああ!」
シエルをキスだけでいかせられた時、俺にシエルのレベルが付与された。これがキスで付与のスキルを発動する条件……。シエルとの鍛錬の結果、俺はキスだけで女をいかせられる技術を身につけたのだ。エミリアにもこれをやらなければならない。
「アレスさん、良かったです……。うふふ。」
頬を紅潮させたシエルが、ドヤ顔でモカたちを見返している気がするが、見なかったことにして今はエミリアに集中しよう。
俺のレベルは一時的にだが戦士レベル60に上がっている。これでエミリアの攻撃を躱しつつ、エミリアに近づくのだ。俺はフレイムソードを構えた。
「さあ、行くぞ。エミリア!」
「アレス……あんた……。」
「ん?」
「あんた……何なの……?」
「エミリア?」
エミリアがゆらりと立ち上がって、俺の方に一歩踏み出した。
「アレス。あんた、こんなところまでやってきて何なの……? あんたを追放した私にざまぁしに来たの……?」
「え?」
「私、ずっと見てた。このダンジョンのボスになってから……。アレス。あんたがシエルとやりまくってるところをずっと見てた。目を閉じても耳を塞いでも流れ込んでくる……。それだけじゃない、そこの女の子たちとも結婚の約束をしたよね? 重婚? ふざけるな。そんなの世間が許すか。しかも、その後に受付のカテリナさんと浮気の約束まで……。やっとわかった。あんたはろくでなし。クズ男。ただのチャラ男。」
「エミリア、まさか意識が……?」
「あんたの作戦もお見通し。誰がキスされてやるものか。」
エミリアの背後から伸びてきた影がエミリアの口元を覆った。エミリアの体が影に覆われて漆黒のドレスを身に纏ったような姿に変わった。
くそっ! 作戦は失敗だ!
俺がみんなのところに引き返そうとしたところ、一番手前にいたシエルが逆に俺に向かって走ってきて、俺はシエルに止められた。
「シエル!?」
驚いた俺はシエルを見たが、シエルの目は虚ろになっていて焦点が定まっていない。操られているのか!?
「アレス。今の私は魔王の手下のスキルを使えるんだから。あんたの女たち全員操って、あんたから奪ってやったわ。」
「なんだって!?」
俺が振り返ると、モカもアミもマリアンヌもクレアも、シエルと同様に虚ろな目をして立ち尽くしていた。その横に倒れているカテリナさんとユーリ様の姿もある。
「さあ、大切な婚約者たちを奪われてどんな気持ち!? 今度は私があんたに復讐する番! あんたは私の気持ちに気付かないどころか、踏みにじったの! たっぷりおしおきしてやるから!」
「や、やめろ、エミリア!!」
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