言いなり王女とダンジョンのある町
「安心して。クレアさんの大事なところは、お兄ちゃんのために取ってあるからね。」
俺の背中にはアミ。前には裸のクレア。その後ろからモカとマリアンヌが押してくる。俺は女四人に挟まれる形になっていた。
俺を見上げるクレアは頬を赤く紅潮させ瞳を潤ませている。
クレアの体からほんのりと感じる湿度。クレアの息づかいがハァハァと荒くなっていく……。
「お兄ちゃん、我慢しないで。」
「アレスさん、溜まってるのはわかってるんです。」
「先輩、素直になろ?」
「し、しかし……。」
「クレアさんが可愛そうだよ?」
モカたちが動くたびに、クレアと俺の接触面が擦れて刺激される。
クレアから直に感じる体温が俺の理性を奪っていく。何しろ、女と接触すること自体が十日ぶりなのだ。
俺のそれはもうとっくに本性を表して、クレアのその柔らかい腹部に押し当てられていた。
「クレアさん。クレアさんからもお願いしなきゃ。」
「アレス様……。お願いします……。私は……もう。」
クレアが口を開いて舌を伸ばし、俺からのキスをねだった。
こうなってはもう、クレアを抱かないという選択肢は俺には無い。
いつかクレアを抱いてみたいと思っていたのは事実だ。モカたちに仕組まれたとは言え、それが今、現実になっている。
「ア、アレス様……。ダメですか……?」
「……ダメなわけがあるか。最高のプレゼントだ。」
俺はクレアのその唇をふさいで舌を絡ませた。二人の口から溢れた唾液が糸を引き、だらりと落ちてクレアの体を汚す。
「クレア。俺はこれからお前を抱くぞ。」
「はい! よろしくお願いします!」
まったく……。俺はモカたちにクレアと仲良くしろとは言ったが、こんなことは想像もしていなかった。しかし、考えようによっては、クレアにも夜のレベル上げに参加してもらいパーティのバランスを取るのもいいだろう。確かにモカたちのおかげでこれで問題がひとつ解決するのだ。
後々のことはまた考えるとして、今はクレアをじっくり味わうとするか。
「……ああっ! アレス様!!」
クレアが俺の名前を呼ぶ。
モカが言った。
「クレアさんの次は、当然私たちだからね。」
◇
さんざん俺の体を求めた後、満足した三人は服を着て、帰り支度をしていた。
クレアは俺のベッドで裸のまま寝ている。
「これでクレアさんも仲間ですね、アレスさん。」
「また以前のように順番を決めようね、先輩。」
「じゃあ、クレアさんのことはよろしくね。」
「……ああ。」
すやすやと寝息を立てるクレアの寝顔は作られた騎士の顔ではない。純真そのものの素の王女の顔だ。
これでよかったのか? 今になって俺は、クレアに手を出してしまったことに罪悪感を持ち始めていた……。
朝の日の光が俺の部屋に入ってきて、クレアが目を覚ます。
クレアは俺を見るなり顔を赤くした。
「あ、アレス様……。昨日は素敵な夜でした……。」
「クレア……。」
クレアは体を移動してベッドのスペースを俺のために空ける。
「ど、どうぞ。」
「いや……。」
俺は少し迷ったが、俺がクレアの横に座るとシーツにくるまったままのクレアが俺に言った。
「あの……アレス様、ご心配なく。私、わきまえていますので。」
「ん?」
「アミ殿が彼女、モカ殿が妹で、マリアンヌ殿がセフレ……。私は四番目の女です。」
「はぁ? 誰がそんなことを?」
「モカ殿が。」
「なっ……。モカのやつ……。」
そういうことか。モカたちは方針転換したのだ。俺とクレアが関係を持つことを受け入れる代わりに、クレアを自分たちの支配下に置こうとした。
「クレア、すまなかった。」
「いえ、私の望んだことです。アレス様に抱かれる夢を何度見たことか。……でも、もしもアレス様のご迷惑になるなら、私……。」
「いや、それは違うぞクレア。もちろん、そういう関係になった以上、クレアのことも大事にする。」
「アレス様……。」
クレアの目に涙が浮かんだので俺は慌ててクレアの涙を受け止める気持ちで抱きしめた。
「アレス様……ありがとうございます。幸せです。」
「クレア。もう一度抱いてもいいか?」
「はい、アレス様。」
俺はクレアにキスをしてシーツを剥ぎ、もう一度その体を堪能した。
◇
「ア、アレス様……。ごほんっ。冒険者ギルドに行く前に、少し寄りたいところがあるのだが。」
「ああ、構わないぞ。」
騎士の鎧に身を包んだクレアは照れ隠しなのか騎士キャラで俺に話しかける。
冒険者ギルド……。正直寝不足だが、今日からまたモカたちとクエストを受ける約束をしていたからな。
クレアは町の見晴台を指差した。クレアが寄りたいところというのはそこか。見晴台に上ればこの町全体を見渡すことができ、特に夕暮れ時は日の沈む様子が見られるカップルに人気のスポットになっていた。
俺はクレアと一緒に見晴台に上った。
「私はこの町に来たばかりの頃、見るものすべてが新鮮で、見たこともないもの、食べたこともないもの。話したこともない人たち。……正直、不安だった。冒険者としてやっていけるのかと。」
「そうなのか。」
「でも、アレス様とパーティのみんなは私を受け入れてくれた。私は嬉しかった。それから時折ここに来る。ここから見られる景色は私の大好きな風景だ。私の大好きな町……。」
「俺も好きだよ。この町らしさが一望できる。」
この見晴台からはダンジョンの入り口もよく見える。ダンジョンの周りに出来た町。それがこのダンジョン町だ。
「アレス様の隣でこの風景を見たいとずっと願っていました。」
「そうか。」
「アレス様……。私、アレス様のことをずっとお慕いしていました。初めて王宮のパーティでお会いした時よりも前から。」
「前から?」
「はい。勇者一行のことは王宮でもすぐ噂になったものですから……。」
「……なるほど。」
「もうお気づきかと思いますが、私、アレス様に会いたくて冒険者になったんです。」
「……ああ。」
昨晩、純潔を散らした王女は今、その相手に愛を打ち明けていた。
しかし、これはもしかしたらクレアが望んでいた形ではないのかもしれなかった。
クレアが俺に向き直る。周囲にはカップルが数組いるが俺たちのことなんか誰も気にとめていなかった。
「勇気がなかった私が今ここに立てているのはモカ殿たちとアレス様のおかげ。」
「クレア……。」
「私はこれで本当の自由を手に入れたんです。」
「……自由?」
「はい、アレス様。これからどうなろうとも、私はあなたのものです。」
そう言うとクレアは俺の腕の中に飛び込んだ。
クレアが好きだと言ったその景色の前で、クレアは俺の腕の中でただ俺に身を預けていた。
俺はクレアに優しくキスをした。
頬を赤く染めたクレアがそっと俺から離れて、俺の顔を見て微笑む。
「ふふ……アレス様。モカ殿が待っていますから。そろそろ行きましょう。」
その目は今、己の立場も過去も未来も見てはいない。何の迷いもなく、ただ俺だけを見ている。
「私、幸せです。」
クレアはもう一度俺にそう言った。
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