帰還した戦士とプレゼント

 結局、Bランクダンジョンの探索は地下十四階で終了となった。

 予定よりも早いのは別に俺とカテリナさんのことが原因ではない。地下十五階に下りる階段が見つからなかったからだ。

 それどころか、地下十四階のボスモンスターも見つけることができなかった。


「変ですね。すべての道をマッピングできたのに。」


 カテリナさんが俺の作ったダンジョンマップを覗き込んで言う。


「ああ。何かいつもと違うようだね。あとは道が無い箇所を探索するしかないが……。今回は準備が足りないな。」


 道がない箇所……つまりは森の奥地。モンスターたちの巣に飛び込むようなものだ。さすがにギルドマスターとカテリナさんでもこの階のレベルのモンスターに囲まれたら、怪我無しでは済まないだろう。しかも今回は足手まといの俺がいる。


「今回はここまでだ。ありがとう、アレス君。」

「いえ、俺が何か役に立てていたかどうか……。」

「アレスさん、すごい観察眼ですよ。これだけ丁寧なマップはなかなか作れないですよ。」

「あ、ありがとうございます。でも、それはギルドマスターとカテリナさんが、俺をマッピングに集中させてくれていたからですよ。」

「はっはっは。アレス君、いっそギルドに就職するかね?」

「いいですね! アレスさん、私たち同僚になっちゃいましょう!」


 カテリナさんが俺の腕を組み、俺に体をくっつけてそう言った。


「ははは……、考えさせていただきます。」

 

 社交辞令でも、そう言ってもらえるのはありがたいとは思う。

 本気で冒険者ギルド職員という身の振り方もいいかもしれないな。

 しかし、俺にはこの化け物たちと肩を並べられる自信が無いのだが……。

 

     ◇


 十日ぶりか。ギルドマスターはエミリアたちには無理に攻略しようとせず次回のマップ変更を待つように伝えると言う。

 Bランクダンジョンの探索を終えて家に帰ると、俺の部屋の前でモカたち三人が待っていた。


「どうしたんだ? お前たち。」

「お兄ちゃんがもう帰ってくるって聞いてたから。」


 モカがそう答えると同時に、アミが俺に抱きついてきた。

 

「アレスさん!」

「おいおい、アミ。予定よりも早かっただろ?」


 俺はアミの丸い頭を撫でた。アミは本当に寂しがり屋だな。アミはなかなか俺から離れようとはしない。

 そんなアミにマリアンヌが聞く。


「どう? アミ。」

「うん、大丈夫そう。」

「あ? 何が大丈夫なんだ?」

「アミは先輩が他の女を抱いたかどうか、匂いでわかるんだって。」

「はぁ?」


 なんだそれ。アミのやつ、いつの間にそんなスキルを……。いや、スキルなのか?

 っていうか、それを確かめるために俺の家の前で待っていたのかよ。どんだけ俺の信用が無いんだよ。確かに、今回はカテリナさんとは危なかったけれど……。


「ハァ……。それよりも、モカ。俺がいなくても問題なかったか?」

「うん。ダンジョンもクエストも問題なかったよ。」

「クレアともうまくやれてたよな?」

「あ、やっぱりクレアさんのこと気にするんだ?」

「まだ言ってるのか。パーティの一員なんだから気にして当然だろ。」

「はいはい。もちろんクレアさんとも問題ないよ。この間は飲みに行ったりしたし。」

「私たち、クレアさんの部屋に泊めてもらいました。」

「また遊びたいよなー。」


 三人が楽しげにそう答えた。

 ほぅ。どうやらクレアと想像以上に打ち解けたみたいだな。俺が不在の期間が出来たのは結果的には良かったのかもしれない。その成果は後日見せてもらうとして……。

 ダンジョン探索に十日。モカたちとはもっと前からだ。

 俺は三人の体を眺める。俺の腕に押しつけられて潰れた弾力のあるアミの胸。ひらりとした魔法使いの装備から伸びるモカの脚。露出高めの剣士の装備では隠す気もない健康的なマリアンヌの肌。

 まあ、カテリナさんに襲われて俺も興奮してなかったわけではないからな。ここで発散しておきたい気持ちが抑えられない。


「ねえ、お兄ちゃん。今日は……いいよね?」

「ああ、三人とも、俺の部屋に入れ。」

「はーい!」


 待ってましたとばかりに元気よく返事をするモカ、アミ、マリアンヌ。

 その後に俺も続く。ふっ。今日は寝られないかもしれないな。


「あ、そういえば、お兄ちゃんにプレゼントがあるんだよ。」

「プレゼント?」

「そう、部屋の中に用意してあるからね。」

 

     ◇


「……クレア?」


 何だって? これがプレゼント……?

 部屋に入り俺の目に飛び込んできたのは、一糸まとわぬ姿のクレアだった。

 クレアの鎧の下、想像したことはあるが、その答えが目の前に立っている。攻撃的なサイズのバストに桜色のトップ。細い腰のラインからの魅惑的な曲線を作るヒップはメリハリがあって、両脚の間には……。いや眩しくてとても直視できない。


「アレス様……。」


 俺の前に立つ裸のクレアは、耳まで顔を赤くして、俺に触れられる瞬間を待つかのようにじっと体を強ばらせていた。


「クレア? もしかして酔ってるのか?」

「いえ、お酒は飲んでおりません……。ああ、やっぱり恥ずかしい……。」


 引き下がって隠れようとするクレアの背中をモカが押す。


「クレアさん、大丈夫だから。」

「でも、モカ殿……。」

「私たちに任せて。」


 モカがニヤニヤとしながら俺に言った。

 

「驚いた? お兄ちゃん? クレアさんもお兄ちゃんのこと好きなんだって。」


 モカがクレアに耳打ちする。


「ほら、クレアさん。お兄ちゃんに教えてあげて……。」


 耳元にモカの息がかかったせいか、クレアの肩がビクリと反応する。


「クレアさん。夜……、一人で何をしてるんだっけ……?」

「モ、モカ殿、それは……あの……。」

「どこを触るんだっけ?」

「……あっ。」


 モカがクレアの脚から腰、腹へと順番に手を滑らせる。


「お兄ちゃん、見てて。」


 モカがクレアのバストのトップを撫でた。クレアが「んっ」と反応し、切なそうな上目遣いで俺を見た。


「クレアさんはおっぱいが弱いんだよ。お兄ちゃん知ってた?」


 いつの間にかアミが俺の横に立つ。

 

「クレアさんの感じるところを一緒に探してあげたんです。」


 マリアンヌがクレアの横に立つ。

 

「あの日は楽しかったね。本当に。クレアさんってば、何度もいっちゃって。」


 三人が目を細めて笑う。


「私たち、クレアさんに相談されたの。」

「先輩に抱いてもらうにはどうしたらいいのかって。」

「さぁ、アレスさん。受け取ってください。」

 

 アミが俺の背中を押して、モカとマリアンヌがクレアの背中を押したので、俺とクレアの体はかつてないほど密着した。


「安心して。クレアさんの大事なところは、お兄ちゃんのために取ってあるからね。」

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